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5‐③ vs追跡チーム その2

 銀色の影と赤色の影が交錯する。


『覚えているか! この私を!!』


「アーノルド・ミラージ……!」


『覚えているのなら忘れろ! 今の私は過去の私とは違う! いうならばニュー・アーノルド・ミラージ! アップグレードしたのだよ、私はな!』


 熾烈な剣戟と、正確無比な防御。数にして二十連撃、息つく間もなく火花を散らし続ける。


(隙が無い……! 前は攻撃を(はじ)く度に動揺が見れたのに、今はまるで美術館に数十年飾られた石像のようなズッシリとした威圧を感じる。崩せる気がしないっ!!!)


 ウィリディスはアズゥの銀腕を顔の側で紅蓮の剣によって受け止める。


『む? 足元か!』


 続く足払い、左手によるフックを躱し、ウィリディスもといアーノルドは息をつく。


(以前の戦いでは初心者らしい粗さと才能に頼った傲慢な拙さが見えたが、それらの弱み全てを長所に変えた思い切った戦い方をするようになったなぁ!!)


 ほとんど離れず足を止めた連続の攻防をしながら両者ともに同じ感想を抱いていた。


(この人――)


(この下民は――)


……『成長している!!』


 ツミキは一歩引き、銀腕を引っこ抜く。


「“アルセルト”!!」


 銀腕から銀剣へ、その姿を変えさせる。

 ツミキは銀剣をウィリディスに向かって薙ぐ。ウィリディスは紅蓮の剣を振りかぶっている。


 両者の刃の軌道が重なろうとしていた。


(よし、あの赤い剣さえ潰せれば――)


 しかしツミキの考えとは裏腹に、ザッ、とウィリディスは紅蓮の剣から手を放し、身を屈めた。


「なに!?」


『以前とは違うと――言ったはずだ!』


 銀剣が空を切り、側の建物を斬撃波で切り裂いた。

 硬直状態にあるアズゥに蹴り上げを繰り出すウィリディスの足裏からは輝く刃が伸びていた。


(足から輝光刃!?)


『私も! そして! 我が愛機ウィリディスもなぁ!!!』


 ツミキは危険信号を頼りに顔面に放られた刃を躱し、開いた道へ出る。――すると、


(危険信号!?)


『やっと射線が通った……!』


 バンッ!!!

 遠方から放たれた銃弾がアズゥの顔面を撃ち抜こうと迫る。だがアズゥは体を捻って銃弾を肩に軽くぶつける程度で済ませた。


『(掠っただけかよ!) ――エルフッ!』


『了解』


 トン、とアズゥの側に矢が落ちる。

 その矢にはスモークグレネードが付いており、矢が激突した衝撃でピンが抜け、大量の煙が散布される。煙は瞬く間にそこら一帯、ツミキとアーノルドごと包み込んだ。


「煙幕? でもこれじゃ、敵味方関係なく見えないんじゃ……」


 否、この煙はただの煙ではなく電子塗装のされた特別製の物。


『“識別煙(リード・スモーク)”起動』


『『視覚支援、起動ッ!!!』』


 “識別煙(リード・スモーク)”。


 味方にスモークの解析データを送れば、その味方のチェイスのカメラにのみ、煙を見えなくすることができる。


 アーノルドとピスケスは解析データをインプットし、煙の中に居るアズゥをしっかりと認識する。


「危険信号……!」


 迷いなき太刀と正確な射撃がツミキを襲う。弾丸を躱し、ウィリディスの斬撃を躱そうとした時、アズゥは左腕を切り落とされた。同時に左手に持った銀剣も宙を舞う。


「(なんでこの人達は僕が見えてるんだ!?) ――戻れ、アンドロマリウス!!!」


 地面に刺さった銀剣をバラバラに分解、欠片は宙を舞い、右肩に吸い込まれるように装着され、銀腕(右腕)となる。

 隙を見せたアズゥに紅蓮の刃が迫る。


『貰ったぞ、銀腕ッ!!』


「くそっ!」


 なんとか剣は銀腕で防いだものの、無防備な脇腹に狙撃手の狙いが定められる。


『これで、ジ・エンド――』


 だが、詰めの部分で全てを散らす光がピスケスの視界の端で輝いた。



――瞬間、ピスケスの足場が光線によって崩された。



『あぁん!!?』



 凄まじい威力の砲撃。ピスケスの発展型チェイス“ゲルプ”が落下するのを確認して、観測手は笑う。


「お見事やテンちゃん」

「大丈夫ツミキ!?」


「テンオウか……ありがとう、助かったよ!」


 ピスケスは突然の事態を必死に解析する。


(この火力……! 建物の中腹が塵残さず崩された、間違いなく高性能型クラス。いや、高性能型と見てもおかしい規模の破壊だ! こんな機体、データに無かったぜクソが!)


 瓦礫に呑まれながらピスケスはエルフとアーノルドに指示を出す。


『撤退だ!! 早く退()け!!!』


『なにを言っているのです! あと少しでコイツを――』


『状況見ろやボケゴラァ!! 相手にバカみたいな火力を持つ奴がいる! 銀腕(ぎんわん)にトリゴ使いに高性能型以上の未確認チェイス、コイツらを相手に発展型三機じゃ無理だ!』


 動揺する追跡チームに追い打ちをかけるように、アズゥの体に黒い光が走る。


『むっ!?』


禁呪(ゲッシュ)解放――!!」


 ツミキはアズゥを禁呪解放させ、増幅したパワーでウィリディスを押し返す。


『下民がっ!!』


 ウィリディスの足元の輝光刃が地面を通ってアズゥに迫る。ツミキはアズゥを全速で後退させ躱し、そのまま姿を消した。


『待て! 逃げる気か貴様――』


 ツミキに押し返されたアーノルドが居たのは戦いの余波で周囲の建物が崩れた場所。つまり、見晴らしのいい場所だ。


(心能、“一視同仁(いっしどうじん)”)


 ゴーグル型望遠鏡を通して、ネットはウィリディスを捕捉、テンオウと右目の視界を繋ぐ。

 テンオウはネットの誘導に従い、砲撃を(おこな)う。



――轟音と共に、廃棄された建物達が粉々になった。



 光の波がウィリディスの右脚を丸飲みにする。


『砲撃!? なんだこの破壊力は!!!』


「(反動で狙いが定まらない、出力の調整が難しいな……) ネットさん、どうなりましたか?」


「まぁ上出来や。これで、奴らの機動力(あし)は死んだ。後は――」


 アーノルドが居る位置から離れること250m。

 錆びれた遊具が並ぶ公園でトリゴと敵の弓兵は向かい合っていた。


「覗き魔発見♪」


『噂のトリゴ使いか……』

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