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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第五幕 一対一の鬼ごっこ

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5‐② vs追跡チーム その1

 日が変わり、太陽が顔を出した。


 朝食前。プールは一人、トラックの荷台でノートパソコンを用いてポールが残したデータを解析していた。

 隣ではサンタがボーっとビンの牛乳を飲んでいる。


「どうじゃ、なにか見つかったか?」


「――このセキュリティ作った奴、何者だ? 私がここまで解析に時間かけるとかありえないぞ」


「確か、ポールと言う名前の子供じゃ。性別は男」


「ポール……そういや機犬(バーゲスト)退治の時、そんな名前聞いたような――ちょっと待て、ポール!? まさか、ポール・ジュナイか!?」


「む? 確かそんな名前じゃったな。知っておるのか?」


()()()()だったか……! しくったな、わかってれば前線に出さなかったのに」


「その反応からすると、()()()()の方か」


 サンタの問いにプールは頷く。


「味方にできれば――と言っても仕方ないか」


「まぁでもポール・ジュナイが残したデータってんなら、俄然やる気がでてきた!」


 一方、トラック近くの丘の上ではツミキとネットが二人で見張りを(おこな)っていた。


「ところでお前さん、好きな子とかおるの?」


 早速、無骨な話題を切り出すネット。

 ツミキは呆れ気味に反応する。


「……前にまったく同じ質問されたことあります。居ませんよ」


「テンちゃんは彼女ちゃうんか?」


「テンオウはただの友達です」


「なんやつまらんなぁ。好きな子おらん人生とか楽しいか?」


「――言いたいことはわかります。前に、誰かを好きになって凄く幸せそうだった人を知っていますから」


 ツミキは鼻水垂らしの少年を思い出し、小さく微笑んだ。

 寂しそうなツミキの背中をネットが叩く。


「心配すんな。お前さんにもすぐ見つかるで、好きな子」


「本当ですか?」


「ワイの勘は良く当たる」


 丘の上に、一人のベレー帽を被った少女がのぼってきた。


「二人共、そろそろご飯だよ」


「お! ちょうど腹減ってたとこや」


「すぐ行くよ!」


 ツミキは丘をくだり、朝食のインスタントラーメン(テンオウ作)を食べ、その一時間後にトラックに乗って出発した。



―――――――――――




「ねぇツミキ!」


 トラックの荷台、涼風を浴びながらツミキとテンオウは隣り合わせで座っていた。


「なんだかドキドキするね、こうやって旅するの!」


 テンオウは冒険記やファンタジーが好きだからか、旅というものにあこがれを抱いている様子だ。


「ずっと変わらない景色を見て来たからね。目的がなんであれ、知らない景色は美しく映るよ」


 二人の会話に、腕を組んでサンタが参加する。


「楽しむと言うのはどんな状況であれ必要なこと。苦楽のない努力に栄光は訪れない、苦しみも楽しさも大義を果たすためには必要じゃ」


 サンタに対し、テンオウが問う。


「サンタさんは“ヘルケロ”や“アート・キングダム”に行ったことはあるんですか?」


「うーむ、難しい質問じゃな。あると言えばあるし、無いと言えばない」


「えーっと?」


「まぁ、無いであってるかのう。お(ぬし)らと同じで、ワシも()()()が美しく見える。――ほれ、見えて来たぞ」


 森林地帯を出てコンクリートの道路に出る。その先に見えるは巨大な薄汚れた都市。背の高いビルや電波塔がある、その土地の名は――


「うわぁ! あれがヘルケロですか……!」


「うむ。思ってたよりでかい都市じゃ」


「あの中に人がほとんど居ないなんて……」


 運転席の方ではプールとネットがヘルケロの入り口を探っていた。


「うおー! こりゃたまげた、めちゃ広いですねぇ!」


「ラッキー、検問はしてないみたいね」


「姐さん。正面から突入するんですか?」


「いいや、迂回して外れの方から行く」


 プールはコンクリートの道を外れ、整備されてない場所を走る。


 プールが壊れた柵の所から突入しようとした瞬間、プールとサンタは近くの建物に刺さった()の付いた巨大な矢を見て呼吸を止めた。


(アレは!?)


「(探知鈴(センサーベル)ッ!) ――ツミキッ!!!」


「え?」


 鈴から発せられる音波を頼りに、トラックを確認した真っ赤な髪の女性義竜軍隊士は仲間の二人に通信を繋ぐ。



『侵入者確認、映像出します』



 紅蓮の騎士は送られて来た音波カメラによる映像を見て、確信する。



『フハハハハハハハハッ!!! 間違いないっ!! ()()()見たトラックだ!』



 紅蓮の騎士“アーノルド・ミラージ”、その愛機であるウィリディスが街角を曲がって軽トラが走る道へ出てきた。


 ツミキ達は正面切って向かい合う。


『この日を! どれだけ待ち望んだことか……!!』


 プールはブレーキを踏み、車体を傾けながら速度を落とす。

 ギギィッ! とトラックが悲鳴を上げると同時にプールは叫ぶ。



「今だ! 行け!!」



 ツミキが勢いよく荷台から飛び出し、駒を握って叫ぶ。


「力を貸してくれ! “アズゥ”ッ!!」


 白光が走る。


 展開されたアズゥ、装着される銀腕(ぎんわん)


 ツミキは勢いそのままに突撃し、同じく突撃してきたウィリディスの紅蓮剣(ソルグラディウス)に銀腕をぶつける。

 火花を散らばせながら二機は静止、互いに歯を食いしばる。


 両者はすぐに相手があの真っ赤な夜の相手だということを理解した。


「この機体――アナタは……!」


『会いたかったぞ! 銀腕ッ!!!』

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