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5‐⓪ ひな鳥ちゃん

 一家に必ず十種の花が置かれる街で、茶色のローブを着た青髪の女性は叫んでいた。



「おーい! ツーミーキーっ! どこ行ったぁ!?」



 ユーレリオンから飛び出し、アンドロマリウス完成を目的とするツミキ一行は花の街“ランフレスト”を訪れていた。


 訪れていた、と言っても街に入ったのはお使い係のプールとツミキだけだ。他の三人は街の外で待機している。この街に寄ったのは必要最低限の生活必需品を補充するためである。ツミキとプールは二人で一緒に街に入ったが、今はなぜか(はな)(ばな)れになっていた。


「くそっ! あのポンコツ! ちょっと私が飲み物買ってる間に迷子になりやがって!! しかも通信機持ち歩いてないし!!!」


 プールが居る中央広場から距離を取って、多くの店とはぐれ者が集う下町。そこに彼は居た。



「もー! プールさん! あの人は勝手に動いて勝手に迷子になるんだから……」



 トイレットペーパーなどが入った紙袋をもって、ツミキは下町を歩く。

 賑わいを見せる下町の表通りをツミキは物色しながら歩を進める。


(それにしても良い町だな~、一軒一軒花が飾ってあって綺麗だ。花粉症の人とかにとっては厳しい環境だろうけど……)


 美しい表通り。だが、美しさだけで成り立っている街は無い。



「おいゴラじじいっ! とっとと金出せや!」



 古風な文句と共に、外れの道では荒くれ者三人が白髪の老人相手にかつあげをしていた。

 ツミキはその現場を目撃し、足を止める。


(酷い……あんなおじいさんからお金を巻き上げるなんて……!)


 ツミキは老人を助けようと路地裏に向けて歩き出すが、ツミキがそこにたどり着く前に状況は一変する。


「――恐らく、こうして恫喝すれば、60%の人間は金を出すのだろう」


「あぁ? なに言ってんだじじい!!」


 白老の男の目が鋭く光る。


「そして10%の人間は逃げ出し、20%の人間は助けを呼ぶ。9.9999%の人間はお前さんたちをボコボコにするだろうなぁ。だが覚えておけ、若者よ――」


 白老の男は懐から黒く輝く物体を取り出す。


――同時に、ツミキの左目に青い×印が宿った。


 ツミキは手に持った紙袋を捨て、走り出した。


カツアゲ(その行動)が原因で、たった0.0001%の確率で死ぬことすらあるということを……」


「え?」


「危ないっ!!」


 ツミキがチンピラに飛び込み、地面に倒れこむ。


 バンッ!!


――と、チンピラの残影を銃弾が貫いた。


「ひっ――ひぃいいいいいいっ!!!?」


 チンピラたちは何の躊躇も無く人を殺そうとした老人に怯え、走り去っていった。

 地面に膝をつくツミキと、その老人のみが路地裏に残り視線を交錯させる。


(なんだ、この人……異常な空気を感じる)


「今の、まぐれじゃねぇな。何者だ、お前」


(関わるべきじゃないな……)


 ツミキは立ちあがり、無言で走り出して逃げようとするが、その腕を掴み止められた。


「待て待て! そりゃねぇだろうよ!」


「す、すみません! 急いでいるもので!」


「せっかくだから近くの喫茶店で茶でも飲もうぜ!」


「喫茶店!? あ、いや……でも」


「俺が奢るって。遠慮すんなよ」


(なんだかこんな会話、前にもしたような!?)



 と、いうわけで。

 ツミキは見知らぬ老人と共に喫茶店に行くこととなった。


「えーっと、なんだっけ? たぴ何とかってのが流行なんだろ? 存分に飲め」


「――いや、アイスコーヒーでお願いします……」


 ツミキは運ばれて来たアイスコーヒーをストローで吸い込みながら、『なんでこうなった……』と汗を垂らす。


(なんか、一人で街を歩くと変な人に絡まれるなぁ、昔から)


「さてと、自己紹介が遅れたな。俺はケンジ、ケンジ・ルーパー。お前は?」


「えっと、ツミキです」


「そっか。なぁツミキよ、お前……チェイス持ってるだろ?」


「え?」


 ケンジは自分の右ポケットの所を叩き。


「右ポケットに起動ツールが入ってんだろ? わかってるぜ」


 ツミキはストローで氷をかき回しながら必死に思考を回していた。


(や、やっぱり変だこの人! どうして僕がチェイスを持っていることを――)


 ツミキがケンジに敵意を向けると、ケンジは強張った空気を笑い飛ばした。


「いやいや、勘違いするな。別に俺は駆け引きがしたいわけじゃない。ただ確認したいことがあるんだ、凄く大切なことだ」


 ケンジは机を指で叩きながら、目つきを尖らせる。


「チェイスを持ってるってことはお前は十中八九軍人だろ? そんで、チェイスが持ってることをバレて焦ってるってことは義竜軍じゃねぇよな?」


「……。」


「――嘘を付けねぇタイプか。それもまた良し。いいねぇ、楽しみが増えた。ウチの大将が近くに居るってんで暇つぶしがてらここに来たんだが、無駄足じゃ無かったようだ」


 ケンジは伝票を持ってレジへ向かう。

 そして最後にこう言い放った。



「次は戦場で会おう。()()()()()()



 ツミキはその背中を見ながら首を傾げる。


「な、なんだったんだ……あの人――」


 ゴツンッ! とツミキの頭に衝撃が走る。

 拳から火を吹きながら彼女、プール・サー・サルンは現れた。


「なに優雅にお茶してんのよアンタは……!」


「ち、違いますよ! これは――」


「アンタ、夕食抜きね」


「えぇ!? そりゃないですよプールさん!!」


 ツミキ・クライムとケンジ・ルーパー、両者が真に向かい合うのはまだ後の話である。

第五幕開幕!

ここまで書けるとは……嬉しい限りです(´;ω;`)


何卒よろしくお願いします。

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