last episode “起点”
チェイス相撲は今度こそ正真正銘終わりを迎えたのだった。ナルミのおかげでハンベルメンは村から手を引くことになり、代わりにナルミが二つの村を仲介する段取りになった。
ナルミは二つの村にルールを設けた。全部で三十あるルールを要約すると“仲良くしてください。喧嘩したら義竜軍が間に入ります”というものだ。ナルミのおかげで両者はわだかまりを無くし、互いに手を取り合い、平穏を取り戻していくこととなる。
一方、そんな中。サンタとプールは食堂で三人のオカマに土下座されていた。
『どうか我々に仕事をくださいっ!!!』
「アンタらにプライドってないの?」
ハンベルメンが居なくなったことで無職となったファファファ三姉妹。
ユーレリオンから特に疎まれている彼らは今の協同鉱業を営もうとしている二つの村に居場所が無かった。
サンタは溜息をつき、前に出る。
「ここに連絡せい」
サンタは通信番号が書かれた紙きれをファルコンに渡す。
その番号は凰燭軍幹部、ネギソンに繋がるモノだった。
「これは?」
「傭兵を欲している者の通信番号じゃ。雇ってくれるかもしれん。サンタ・クラ・スーデンの名前を出せば応じてくれるじゃろう」
「サンタ……いや、サンタ様ぁ♡」
三姉妹はサンタに煌めいた眼差しを送る。
「辞めんか、そのキラキラした瞳を……」
大男三人の媚びた瞳に対し、サンタは顔色を青くした。
ツミキとテンオウはパンをかじりながらその光景を見て微笑む。
「一件落着だね」
「うん。これで、この村ともさよならだ」
一行はチェイスの整備を終え、食料と輝光石を軽トラックに積んだ。ツミキとサンタ、テンオウは相変わらず荷台に、プールは運転席、ネットは助手席に入る。
「さ、ぱぱっと行きましょか!」
「アンタ、今回の件で全く役に立たなかったわね……」
「ちょいと野暮用があったんです。姐さんの勇姿はちゃんと、この眼に焼き付けましたよ」
「はいはい」
一行が出発する時にはユーレリオンの村人とリベルトコルの村人が仲良さげに見送りにきていた。
ファファファ三姉妹も民衆に混ざっている。
「ありがとうございました! ツミキ君! サンタ君! プールちゃん! テンオウちゃん! またご飯食べに来てね~~!!」
「お嬢さん、ワイを忘れてるで?」
「アナタ方には本当にお世話になりました。村を代表して礼を言いまする」
続いてファファファ三姉妹がサンタに熱烈なラブコールを送る。
「じゃあねダーリン!」
「ダーリンサンタ~!」
「また遊びましょう~!!」
「人気者ですね、サンタさん」
「いい迷惑じゃ……」
村人の言葉に手を振って応えながら一行は去っていく。
「ってなわけで新入り、助手席にいるんだからナビ頼むわよ」
「任せてくだされ! 道案内とかちょー得意ですよ、ワイは」
夕暮れがバックに浮かび、涼風が前髪をかきあげる。
荷台にいるツミキは、笑顔を浮かべてサンタに言う。
「また来たいですね」
「そうじゃな。全てが終わったら、また来よう」
こうしてユーレリオン村での物語は終わった。
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ユーレリオン近くの森にて。
『やっと見つけたぜ。ナルミ』
車を運転して彼女は現れた。
ナルミ小隊、特攻エース“カミラ・ユリハ”。
「お疲れカミラちゃん! お迎えご苦労♪」
「早く乗れ。王都へ行くんだろ?」
「そうそれ、それなんだけどさ……」
ナルミはある一団を頭に浮かべ、目を細める。
「ちょっと予定変更しようか……」