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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
幕間 激闘! “チェイス相撲”!?
124/166

4.5‐② 美人三姉妹現る

 ツミキ達がいる“ユーレリオン”。そこと山を挟んで反対側に存在する村“リベルトコル”。


 “リベルトコル”は“ユーレリオン”に比べ栄えており、自然に囲まれた土地としては歪な近代的建物が立ち並んでいた。


 その中でも一際(ひときわ)不気味な場所、おかまバー“ラヴ・ラバーズ”。そこにリベルトコル最高責任者の“エイヴィス・リベルト”はいた。


 宝石を身に着けた身長の低い爺さんだ。黄金造りの杖を持ってバーのソファーに腰をかけている。


「それじゃあ、明日のチェイス相撲も頼んだぞ! ファファファ三兄弟!」


 軽快な音と共にバーに設置されたステージで踊る影が三つ。


 全員女性ものの衣装を着ているが中身はマッチョの男だ。その内の一人、三人の中でリーダー格のオカマがエイヴィスに物申す。


「違うわエイヴィス様。私達は三兄弟ではなく三姉妹!」


 三人のオカマの内、右側のおかっぱのオカマにスポットライトが当たる。スポットライトの動きに合わせおかっぱのオカマは己の名前を叫ぶ。



「三女ファルシア!」



 そして次に左側の化粧の濃い三つ編みのオカマにライトが当たる。



「次女ファム―ル!」



 最後に真ん中、坊主頭のオカマにライトが当たった。



「そして私、長女ファルコン!」



『三人そろってファファファ三姉妹!!』



 ドォオンッ!! と音楽の終わりと共に決めポーズをとる三人のオカマ。


 彼ら……いや、彼女たちこそこの町の傭兵である。エイヴィスは目の前のオカマたちに気圧されていた。


「お、おう。それはすまなかった。ファファファ()()()、明日も頼んだぞ」


「任せてエイヴィス様。その代わり、今度可愛い男の子紹介してね♡」


「まぁ! 抜け駆けなんて卑怯だわファルコンお兄様!」


「お兄様じゃねぇ! お姉さまって呼べっつてんだろファムールゴラァ!!!」


「落ち着いてファルコンお兄様、お客様の前よ♡」


「あらやだ、失敬失敬」


 エイヴィスは汗をかきながら笑みを浮かべた。


(ふっふっふ、この三人にチェイスの操縦で勝てる者はいない。今度の採掘場も我々が貰った!)






 ――――――――――――――――― 






「なるほど。鉱山を巡って試合をねぇ……」


「はい。私達が採掘場……つまりは採掘できる環境を整えると決まってエイヴィスは採掘場を賭けて試合を申し込んでくるのです」


 採掘区域争奪チェイス相撲。


 この村“ユーレリオン”と山を挟んで反対側にある村“リベルトコル”の間には二つの鉱山があり、初めは一つずつ鉱山を担当し、争うことなく平和に暮らしていた。


 だが“リベルトコル”が所有する鉱山が出がらしになるとエイヴィスは“ユーレリオン”の鉱山に目を付けたのだ。


「嫌だったら勝負を受けなければいいんじゃないですか?」


「そうすればエイヴィスは実力行使で奪いに来ると思います。私達は鉱山や畑仕事の環境を整えるために財をつぎ込んでいて、兵器など持っていません。チェイス一機に手も足も出ずに滅ぼされるでしょう」


「でもなんだって奴らは試合を申し込んでくるの? アンタの言う通り実力で鉱山ごと奪っていけばいいじゃない」


「簡単じゃ。先ほどの話を聞く限り鉱山の開拓はこの村の方が一つも二つも上をいっているのだろう。だから奴らはこの村の人間にある程度採掘環境を整えてもらい、それから奪いたいのじゃ」


「はい。それがわかっていても私達は採掘しなければ生きていけません。だから、エイヴィスの思い通りに動くしかないのです」


「かーっ、やらしい奴らやなぁ」


 五人は事情を理解し、身を乗り出し頭を合わせて内緒話を始めた。


「協力しましょう」


「わたしも賛成です」


「こんな可愛い子のいる村を放ってはおけん!」


「嫌よ、めんどくさい」


「まぁ待て。ここで恩を売っておけばチェイスのエネルギー原料である“輝光石”を譲ってもらえるかもしれんぞ。すでに輝光石の予備は底を尽きている。補充せねばならん」


 “輝光石”。特別珍しいモノでは無く、ミソロジアの機械のほとんどにこの石が使われている。チェイスのコアはこの“輝光石”を加工して出来たモノだ。“輝光石”で出来たコアを稼働させるのもまた“輝光石”から抽出する液体であるため、人類はこの石無くては生きていけないほどである。


「そんなの次の街で補充すればいいじゃない」


「金銭面で危うい。それに“アート・キングダム”への道のりで“輝光石”を売ってるような場所はない。いちいち遠回りするのも面倒じゃ」


「っち! しゃあないか」


「決まりやな」


 五人は再び席につき、サンタが店員に話を切りだす。


「いいじゃろう。ただし、報酬として多量の“輝光石”と食料を頂きたい」


 サンタの提案に対し店員の女性はパーッと笑顔を浮かべ、頷いた。


「はい! 採掘場を取り戻せれば安いものです! きっと村長も同意してくれるはずです!」





――翌日。





 ツミキ、サンタ、プール、テンオウは早朝五時に起こされ、二つの村のちょうど中間点にある山に囲まれた巨大な土俵の前に集合させられていた。なぜかネットの姿はない。


 全員髪はボサボサで眠そうだ。中でもサンタは鼻ちょうちんを膨らませながらまだ夢の中である。


「なんでこんな朝早くに、こんなみすぼらしい土俵の前に来なくちゃいけないのよ」


 文句を言うプールの前に背の低い老人、村長が歩み寄る。


「皆さま試合開始はあと十分後でございます。どうか我らの村をお救いください!」


 プールがガンッ! とサンタの頭を叩くとサンタは欠伸をしながら目をパッチリと開いた。


「わかっておる。じゃが、ワシやツミキやテンオウまで来る必要があったのかぁ? プール一人で十分じゃろう」


「アンタねぇ、応援ぐらいしろっての」


「いえいえ! チェイス相撲は三対三の総当たり戦で行うので御三方参加していただかなければなりませぬ」


『え?』


 三対三、総当たり戦。先に二勝した方の勝利である。


「私が説明します。ルールは簡単、支給される量産型チェイス(武装無し)を使って土俵の上で取っ組みあいます。通常の相撲と違って足の裏以外が地面についても負けにはなりません、敗北条件は土俵より外に出ることだけです」


「いや、それはいいですけど……三対三、ってことは二勝しなくちゃいけないんですよね?」


「もちろんですとも」


「どうします? まともにチェイスに乗ったことあるのって僕とプールさんぐらいですよ」


「一応、サンタもチェイスの搭乗経験あるけど……」



 サンタは頭を掻いてテンオウの肩を叩く。



「任せた」


「えぇ!?」


「あ! テンオウも前の戦いでチェイス乗ってたね」


「い、いや、でもわたしまだまともに……」


「大丈夫じゃ。なんとなる」


「ってことはチビっ子で一敗、私で一勝はほとんど確定として、勝負のカギを握るのはアンタね」


「は、はい……そうなりますよね」


 ツミキ達がルールを理解すると、山の上からある三人の影がツミキ達にかぶさった。


『あらあら! こんな坊やたちが私たちの相手なのぉ!?』


『んもうっ! 失礼しちゃうわ!』


『今回はファルコンお姉さまの出番は無さそうね!』


 シュッ! と三人の影は山から土俵へと飛び降り、アニメキャラさながらのポーズを取って自己紹介を始めた。


 プールは呆れながら「なに、コイツら」とドンびいていた。


「チャーミングな見た目と裏腹に、たまに腹黒い小悪魔系ガール! 歌と踊りの申し子、ファルシア!!」


「恋もバトルも百戦錬磨! でも心はガラス造り! センチメンタルガール、ファム―ル!!」


「そして! 男女問わず全ての人類を虜にする生まれついての罪女! 破天荒ガール、ファルコン!!」


 三人のオカマは口を揃えて言う。



『三人そろって、ファファファ三姉妹ッ!!!』



 シーン。と敵味方問わず静まる中、ツミキの拍手だけが鳴り響いていた。


 テンオウは顔を青くして突っ込む。


(やばいの来た!?)


 司会兼審判を任されている宿屋の少女は「ゴホン」、と咳払いし、右手を挙げた。


「えーと、それではこれより“採掘区域争奪チェイス相撲”を始めます」

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