4‐㊲ 最硬の檻と最強の右腕
アズゥの全身に黒いエネルギーが走る。
足元に力を込め、アズゥはまっすぐアテナに向けて走り出した。盾翼は完全に置いてけぼりになっている。
(エネルギー残量的にこれが最後のチャンスだ! 絶対に決める!!)
(普通に戻してたんじゃ防御が間に合わないっ!)
四つの盾翼に光が満ちる。
『禁呪解放ッ!!』
盾翼は通常の十倍以上の速度で動き出す。
アズゥは銀腕を振りかぶり、アテナを突き刺そうとするが――
「なに!?」
ガキンッ! と盾翼四つに阻まれた。
四つの盾翼はくっつき、十字を作り、巨大な光の膜を展開していた。
(アテナの禁呪解放、“剛力の囚人”……! 盾翼のパワーを底上げして、何者にも突破されない檻を作る!!!)
シールド硬度は通常の三倍、速度は十倍、展開領域は二十倍。まさしくアテナの切り札にして、数ある禁呪解放の中でもトップクラスの性能を誇る。
『このままアンドロマリウスの右腕ごと盾の中に閉じ込めてやるっ!!!!!』
光の壁がアズゥを包み込もうと広がった瞬間……
ズシ。
と、大気が揺れた。
『なんだ? ――ぐっ!?』
再び大気が揺れる。同時に、光の壁が後退した。
「一撃で足りないのなら――」
『まさか――』
アズゥは銀腕と強化された左腕を交互に前に出し、光の壁を殴り出す。
「積み重ねるだけだ!!!」
(これは、やばい――!!!)
連続して轟音が鳴る。
禁呪解放したアズゥの拳の連撃が、アテナの全身全霊の盾に炸裂する。
(ままままままずいっ!! シールドのエネルギー残量があっという間に――!)
ラッシュが高速化し、腕の振りが見えないほど加速すると光の壁は一気に押し戻され始めた。
攻撃を受けながら光の壁は下がり続け、背後に居たアテナをも巻き込みながら尚後退を続ける。
『ちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!! なんとしても持ちこたえるんだっ! 盾翼ッ!!!!!!!』
「(――こっちもガス欠間近なんだ! 速く……)崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろ崩れろっっっ!!!!!!!!!!!!!」
あまりのラッシュの速さと攻撃力に光の壁とアテナは宙に押し上げられる。
空中に浮いたアテナと盾翼に、足を止めた全力の拳が下から繰り出される。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっーーーーーーーーーー!!!!」
(くそっ!!)
盾翼のエネルギーがゼロとなる。
(割れる――!)
パリンッ! とガラスが割れるように光の壁は砕き破られた。同時に全ての盾翼が砕け散る。
「終わりだ!」
『まだだ!!』
壁が割れると同時に、アテナは槍を上空から下に位置するアズゥ目掛けて構えていた。
「危険信号ッ!」
『突き弾ッ!!』
上空から伸びる槍先をツミキは完全に躱す。だが、
(足元に危険信号ッ!? 駄目だ、躱せないッ!!)
地面に刺さった光の刃は地面の中で折り返し、アズゥの右ひざを下から貫いた。
アズゥのすぐ目の前で着地するアテナ。アズゥは右脚を引きずりながら前進し、左拳でアテナの顔面を、銀腕で左腕を打ち壊すが、致命傷を与えられず距離を取られた。
『距離50……!』
――エネルギー残量、残り3%。
足が潰され、且つエネルギー不足で追撃できずアズゥはその場で膝を付いた。
(この距離でアテナを撃てる攻撃は、さっきの渦か剣による斬撃飛ばし――だがどちらも、もう間に合わないだろっ!!!)
トートは勝利を確信し、片手で突き弾の構えをする。
ツミキは禁呪解放を解き、アズゥの左腕で銀腕を掴む。
「アルセルトッ!」
『遅い! 突き――』
ツミキは居合抜きの如く、左手で銀腕を引っこ抜くと同時に銀腕をアテナに投げ空中で剣に変化させた。
回転し斬撃をまき散らす銀剣がアテナに迫る。
(投剣!? この土壇場で……!)
アテナは構えを止め、回避に集中する。
トートは銀剣の軌道を見て、目を細める。
『けど、酷いコントールだね』
アテナは地面に手を付き、屈んで剣を躱した。
『はは――面白い悪あがきだったよ。ツミキ君!』
「――――ッ!!!」
ツミキは残った全ての力でアズゥを発進させ、轟音を鳴らし片膝を付いたまま砂を巻き上げながらアテナに接近する。
『無駄だ!』
アテナは槍を構え、無慈悲に残ったアズゥの左脚を切り裂く。そしてそのまま槍を、アズゥのコックピットへ向かわせる。
『これでわかっただろう!? 僕の監獄からは、誰一人逃げられはしないっ!』
しかし、槍がアズゥのコックピットに届くことはなかった。
『おい、引きこもりの王様』
ザッ。と綺麗な刺突音と共に、アテナのコックピットは背後から銀の剣によって貫かれた。
アテナの背後には、アルセルトを持ったトリゴの姿があった。トリゴのパイロット、プール・サー・サルンは見下すように言う。
「久しぶりの外の空気はどうだい? ――格別だろう」
なにも言う暇なく、トート・ゲフェングニスは絶命した。
ツミキはトートに当てるために銀剣を投げたのではなかった。アテナの背後に接近する機影を確認し、銀剣をその影にパスしたのだ。
プールは銀剣を引き抜き、ツミキに聞く。
「よかったの? 特に因縁もない私が倒しちゃって」
「はい。むしろ、その方がいい」
ツミキは冷たく言い放つ。
「この人には、何の意味もない死がお似合いだ」
王は討たれ、決着はついた。
多くの人間を閉じ込めていた檻は今、完全に破壊された……
プールさんの働き
・義竜軍のデータバンクにハッキングし、監獄のデータを入手。アルタイル直属の義竜兵を闇討ちし、その装備を奪ってサンタと共にヘビヨラズ潜入。
・なんかドンパチやってるから、とりあえず流れに混ざる。そこでツミキを発見、周囲の機動隊を殲滅し、チェイスを奪う
・ツミキと共にアズゥ一機撃破。その後、ツミキと連携してトートを翻弄→機犬討伐隊の方へ向かう。
・機犬十八機撃破後、討伐隊を追ってきたエイセンと交戦。ハリスと連携してエイセンを倒す。
・マリスとポールと連携して核機犬を抑える。死にぞこないのエイセンを殺す。核機犬を持ってツミキとトートの戦場へ向かう。
・核機犬に不可視機構を使わせ、盾にしながらトートの背後に接近。突然投げられた銀剣をキャッチし、トートを後ろから強襲。殺害。
間違いなく第四幕MVP……(;^ω^)




