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“銀”の英雄  ~Revival of Andromalius~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第四幕 “ゲフェングニス”の罠
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4‐㉚ ゴールデンコンビ

 城内、外壁付近。

 外壁をなぞるように、二機のチェイスが追いかけっこをしていた。


「だ、誰か助けて~~!!」


「逃がさん。テンオウ・オルコット……」


 黄色の特化型(ルーク級)チェイス“アマレロ”。パイロット:テンオウ・オルコット。

 黒色の発展型(ナイト級)チェイス“プレート”。パイロット:エイセン・グリッド。


 アマレロは右腕が巨大な砲台になっているため、右腕が重くて機動力は低い。武装も右腕の砲台を除けば何もない。


 対してプレートは細身で、輝光剣を腰に備えたサムライタイプ。根っからのインファイターで軽くて速い。二機の距離が詰まるのは時間の問題だった。


「ここで決める」


 エイセンは機体の足を止め、居合抜きの形で輝光剣を抜く。


「“突き蛇(スネック)”ッ!!」


 柄型端末から光の刃が生え、伸びてアマレロの背後を追跡する。だが、その伸びた刃の腹を光の銃弾が貫いた。


「――!?」


『ヒットや、ハリス』


 城壁の上に彼は居た。

 ゴーグルを付けた茶髪の男性、彼の名は〈ネット・フィーリス〉。戦場を俯瞰するのに徹し、狙撃手のサポートをする観測手(スポッター)である。


 スポッターの役割は狙撃手のサポート。現在で言うとハリスの狙撃の援護が彼の役目だ。彼は生身のまま、城壁の上からエイセンを眺めていた。


「エイセンの旦那、動き止めたで」


『わかっている。すぐ次の指示出しやがれ』


 ハリスは現在、中央エリアから離れ建物の影に隠れながら拳銃型レーザー銃〈輝光銃〉を構えていた。

 この拳銃は“セット”によって輝光弾の性質を変え、臨機応変に事態に対応できる。今は“狙撃(スナイプ)”セット、その名の通り連射性・弾丸の大きさを絞り、射程と威力に割り振っている。


 ピストル狙撃、それが現在の空色の発展型チェイス“ブルシエル”のスタイルだ。


「ジブン、ほんま口悪いなぁ……まったく、なんでワイが男なんかと手組まなあかんのか」


『うるせえ。自分の仕事に集中しやがれ』


「――あ! そっち行ったで。射線読まれとる」


『もっと早く言いやがれ!』


 エイセンはアマレロ及びテンオウを放置し、銃弾の射角から狙撃手の位置を捕捉・追跡を始めた。


「あの特化型を潰すのは容易い。だが、この狙撃手は放置できんな……!」


 刹那、プレートの左腕が背後より撃ち抜かれた。


「これは……」


「ちょっと外れた。けど左腕は死んだな」


『っち! 撃ち損じたか』


 エイセンは中央エリアへの繋ぎの道で、輝光剣を構えたまま考える。


(足の速い狙撃主か。今のは間違いなく()()外から撃たれた……それにこちらの位置が完全に筒抜けになっている、でなければどれだけ足が速かろうとこうも簡単に背後は取られない。優秀な観測手+優秀な狙撃手のコンビだ。ならまずは、眼を奪う)


 エイセンは柄型端末を頭上に掲げ、輝光の噴出を薄く全域化させる。


「“閃光刃(ホタル)”――!」


 ピカッ! と眩しい光が辺りを支配する。輝光剣の性能を活かした目潰し攻撃、しかしそれはハリスとネットのコンビには通用しなかった。


(発芽型心能“眼光炯炯(がんこうけいけい)”)


 ハリスの心能“眼光炯炯”は実体ではなく精神体を覗く心能。


 この世の裏側を覗く能力。人の魂や建物の魂、精神を形として捉えることができる。精神体の色や形で相手の感情をある程度読むことも出来る。この能力でハリスはトートからのスパイを見つけ、ネギソンと共に利用した。


 今この時の使い方は透視のようなものだ。実体を透かし、精神体の世界になれば障害物はかなり少なくなる。それに加え――


(発芽型心能“一視同仁(いっしどうじん)”)


 ネットの心能“一視同仁”は己と同じ血液型の人間と視覚を共有することができる能力。


 ネットがハリスと視覚を共有し、ハリスが“眼光炯炯”を発動することで一時的にネットは“眼光炯炯”の能力を借りることができる。本来、心能のリンクなどできるはずもないが、二人共瞳に関する心能ゆえにできた奇跡のようなものだ。


 ゆえに、現実に干渉する閃光は心能をリンクさせ精神世界を見る今のネットには通用しない。眼に対する閃光のダメージはゴーグルが遮断している。



「第一連絡通路.ポイントE‐36」



 銃声が鳴り、遠方からの壁抜き射撃がプレートの左肩を完全に破壊した。


「ぬっ――!?」


「しっかりしろや! また急所外されてるで!」


『うっせ! テメェの心能にまだ慣れねぇんだよ!』





―――――――――――――― 





 特化型(アマレロ)によってあいた大穴の前に、総勢11機のチェイスが集まっていた。


 アズゥ十機とトリゴ一機。トリゴが前に出て指揮を執る。


「私らの目標は核機犬(マザー・バーゲスト)! (マザー)機犬(バーゲスト)の防御が一番堅い所にいるはずだ、機犬の集まる所を見つけ次第叩く!」


『おうっ!』


『やってやるぜ!』


『俺に任せろや!』


「アンタらは全員チェイスの初心者、できることだけをしろ。無茶はするな! ――一気に突っ切るぞ!」


『おおおおおおおおおっ!!!!』


 チェイス十一機がヘビヨラズより外へ出て、何もない荒地に突入する。


 地平線で待ち構えるは機犬の波、先頭を走るプールが手に持った斧で襲い掛かって来た犬たちを薙ぎ払う。


「す、すごいわあの人……」


「マリスちゃん! 右から来てるよ!!」


「え? ――きゃ!!」


 マリスは咄嗟に振動剣を抜いて、機犬を叩き斬った。

 マリスの横にトリゴがスライドしてくる。


「へぇー、(すじ)いいよアンタ」


「ど、どうも……」


「さっすがマリスちゃん!」


 城内中央エリア ツミキVSトート。

 城内第一連絡路 ハリス&ネットVSエイセン。

 城内南部外壁付近 テンオウ、

 監獄外 プール&マリス&ポール&他多数VS機犬多数&核機犬。

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