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弱小ラグビー部にて  作者: 柏
5/5

練習試合と、

更新めっちゃおくれてすんませんっっっっした!

「……難しい」

 俺はルールをネットで調べながら、悶々としていた。

 律儀に覚える必要もなく、部活内で教えられるが、周りより少し優秀でいたい俺は、この貴重な休日を使ってまで勉強をしていた。

 ……くそ、なんで俺はこんなことを。

 わからなかった。なぜこうも勉強をしているのか。こんなにこだわる理由なんてどこにもないはずだ。

 先輩に負けず嫌いと言われたことを思い出す。

 ……ああ、そんなこと、とっくのとうに理解している。理解しているからこそ、嫌っているんだ。

 いくら努力しても縮まらない周りとの差。それを嫌った。いや、逃げていたのだ。

 中学生までは自分も努力していれば、そんなことを考えていた。

 現実は非情だ。いや、自分の努力が努力と呼べるレベルに到達していないだけか?

 そんなことはどうでもよかった。逃げであることに変わりはない。

 それでも、新しい環境で、新しいジャンルで。これならばきっと、と。縋りたいだけなのかもしれない。ラグビーは中学生からみんながやってるようなスポーツじゃない。自分に才能があれば、そんなことをふと思う。

 才能の問題ではないのかもしれない。けれど、認めたくはなかった。休日もボールを弄りながら過ごしたあの日々を。自分は努力していると信じていたあの日々を、否定したくはなかった。

「……くそ」

 ペンをとる。ノックオン、ノットロールアウェイ、昨日学んだことを復習する。そして新しいことを。

 結局その日は勉強に費やしてしまった。もちろん、学校のものも、しっかりと。

 

 学校の日。もちろん部活がある。俺は授業を終えると、すぐに部活へ向かった。

「あ、おい!」

 涼介の声も届かない。

「あいつ、部活は文化部以外ありえないとか言ってたくせに……」

 そんな声が聞こえた。

「今週は試合だ、各自気合入れろよ!」

 山本先輩の声が響く。

「一年は今回は見学だが、少しでも学べるように!」

 そういえば、ラグビーの試合は15人のはず。一年抜きじゃ足りないんじゃ……。ああ、そうだ、人数は15だけじゃない。7や10人でもできる。

「10人制でやるんだよ」

 隣から響く声。この前に経験者ということが分かった堀田雄馬だ。

「ふうん、人数にもいっぱいあるんだな」

 気づいていないふりをして言う。わざわざここで思い出したと言っても災難の元、考えたのも事実だしな。表情を読みとったこいつの洞察力はなかなかのものだ。

 

 なんて、過ごしているうちに。

 試合当日の日は、すぐにやってきた。


「……うっげぇ」

 声が漏れる。周りの一年も同様だ。

「……ふむ」

 一人だけ達観したような男。堀田だ。

 こんなにも厳しかったのかと改めて実感する。そういえば、動画は見なかったな——なんてことも思う。

 激しくぶつかり合うタックル、持ち上げて競り合うラインアウト、みてるだけで暑くなるスクラム。どれをとっても俺の理解の範疇は越えていた。

 ——これを、これからするのか……。

 入って何度目かわからないため息が漏れる。

 ちなみに10人制。必然一人説明役が俺たちに加わる。

「ははは、慣れる慣れる」

 笑い事ではない。

「笑い事じゃないんじゃが!!」

 ほら。そう言ったのは長村だった。

 実際、俺たちが今まで見てきたスポーツと全く違うのだ。下調べもせず入ったコイツが悪い。(人のことは言えない)

 試合は俺たちの勝利。俺たちってなかなか強いのかな? そんなことを思っていると、

「この相手に10-26かぁ、調子悪いな」

 残っている先輩が言う。参加していない人間のセリフではないが、相手が弱いようだ。

 汗にまみれた先輩が戻ってくる。

「うわ、ちょ、汗まみれ!先輩!」

 そう、汗でとんでもないことになっていた。

「ラグビーの試合なんてこんなもんだぞ、慣れだ慣れ」

 慣れ。その言葉は今日二回目だ。楽観的に解釈するならば、経験がものをいうスポーツとも言えるのかもしれないな。まぁ、汗云々観戦云々、参考になるはずもないが。


 そうして一日は終わる。早いものだと感じる。もう、五月に入った。

 大会は九月。残り四か月。それまでに、ある程度の実力をつけなければいけない。今の自分ではただの足手まといだ。

 足手まとい。小学校の頃を思い出す。中学では人数が足りていたから特にそんなことはなかったが、小学校はそんなこともなく。

「ディフェンダーなんだからちっとはとめろよ!」

「そんなところにいても意味ないぞ!」

 そんな言葉を投げかけられた。

 今のラグビー部は、15人ギリギリなわけではない。俺がダメでも、他の人が、マイナス思考に加速がかかる。

 いや、俺は変わるんだ。せっかくラグビー部に入ったのだから。

 などと、入学当初の俺では考えないようなことを思う。

 原因はわからない。試合で触発されたから? 先輩に悪い感情を抱いていないから?

 詭弁だ。理由はわかっている。

 どこまでいっても、俺は負けず嫌いなんだ。サッカーでだって負けたくなかった。勝負の場から、自分なんかじゃと逃げた。嫌だった。けれど、拘って敗北感をさらに味わうことを畏れたのだ。

 けれど。

 けれど、環境が切り替わった今なら。新しい自分を。

 そうやって自分を鼓舞していく。

 俺は変わる。そう決めた。今。たった今。

 バカにしてもかまわない。遅すぎると罵られるかもしれない。けれど、俺は今まで生きてきて、一番生を味わえる。そんな気がした。気がするだけか? いや、そうするんだ。このスポーツで、俺は負けず嫌いな自分を、証明して見せる!

 そう、強い決心を胸に眠る。

 忘れないように。今思ったことは、現実にして見せるんだ。きっと。三年間の目標が、決まった。




 ……忘れないように、机の端にでもメモしておこう。


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