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a D.<<アニマ・ドライブ>>  作者: 時田和治
日本が荒廃してから3年後
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反撃開始

「派手に粉塵が立っちまったか…これで終わりだと思うか?ミラコー」

煙幕から離れた所で様子を見ていた彼は自身のAIを愛称で呼び、持ち主によく似たフランクな口調で答える。

「いや?シールド量それほど減らしてねぇし、ふっ飛ばした運動量に対して壁の破壊が強すぎ。赤外線での索敵を出力するぜ」

太郎の視界に煙が晴れた状態が映し出される。叩き付けた壁のポイントに二つ、真っ赤に染まった亀裂が壁全体をクモの巣状に広がっていた。肝心の熱源は両手を握りしめ、両腕を大きく後ろに回し、上半身を倒れてしまいそうなほど前へ傾けている。まるで――何かを投げるように。


「石ころごときでダメージなんて…」

「…ダメージは受けないねぇな」

思い切り放たれた物体は細かい粒子となって、もう半分のスタジアムを煙で埋め尽くそうとする。チリチリとシールドが粒子を焼くだけの煙に直接的な害がある訳でもなく、具体的な対処をしようとは思わない。

「何がしたかったのか?」

「さぁて、ね?」

彼のAIは白々しくもったいぶって答えた。

彼が煙に包まれて数秒後、放ってから硬直していた昇のベヒーモスは突然消失した。

いや、正しくはベヒーモスが急接近し、加速をのせた拳が画面いっぱいの“赤”として映されたものだった。


「え?」

呆気にとられた顔面への一撃はクリーンヒットし太郎も大きく吹き飛ばされる。先ほどと異なり、すぐに旋回し体制を立て直して距離を取るが大振りの第二第三と攻撃の手から逃れられない。

「ぁっれー?電磁波ステルスは効いているはずだろ?」

「ちゃんと効いているけど?」

昇は親切にも太郎の通信に少量の(あお)りを込めて返してやるが、返事よりも先にこの難を逃れようよする。

彼は空気を縫うように高速移動し逃れようと試みるも、残念ながらベヒーモスは彼を追いかけ追いつき攻撃する。まるで見えているかのように。


しばらく移動していたのだが、逃げきるのは不可能と感じた彼は打撃を受けていく。お互いにまだ余裕があるようで、楽しそうに口と拳の語り合いが始まった。

「ならよぅ!俺はどうしてサンドバッグに!?」

「AIさんに聞いてみたらどう?」


近接戦闘に優れているベヒーモス相手に、光学機装のステルスと射撃メインのミラーコートでは殴り合いで分が悪すぎる。ミラーコートのシールドは激しい攻撃で溶けるように削られていくが、むこうはシールド補強に集中し削り切る所か回復速度の方が上回ってしまった。

「ダメだ。驚きの感情で旨いからネタ晴らしはもう少し先な」

「ふざけんな!まじめに解析内容を報告しろ!」

「おっ、怒りもなかなか質も良いな」

AIらしくないふざけた態度に焦る装着者(アクター)であったが、実際の状況は硬直どころかミラーコートの優勢である。

「楽しめているようでなにより」

(太郎のシールドは削れず、この状況が作り出した感情の余剰分でスコアが溜まっていく。…こっちはスコアを伸ばすどころか省エネで消耗していく一方か…)

状況の不利にも関わらず昇の顔は到って冷静である。

少しずつ相手が慣れてきたせいで時々繰り出されるカウンターにひやひやしつつも連打をまだ途絶えさせない。水平から傾きつつある天秤のような状況に彼が取るべきアプローチは一つ。

「答え合わせしようか」


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