博士の娘
「キミが、マリ・トールマン?」
「ええ。あなたが、パパが言っていた使いの人でしょうか?」
降りて姿を見せた彼女はパッと見、父方の日系の血が濃いらしく流麗な黒い髪にしっかりとした顔立ちは、本人よりも日本人らしさは外国人だと見えない。
それは何もかも途切れてしまった日本人よりも日本を感じさせるほどだ。
そして、話に聞いたよりも写真よりも実物の彼女はずっと小さく見えた。
「失礼しました。私は旭日昇。トールマン博士からマリさんの迎えをするように頼まれてね。貴女を施設までの手引きを致しましょう」
「エスコートしてくださるのならそれに甘えようかしら」
「博士からEDを受け取っていると伺っています。EDで移動してくれませんか?」
「分かりましたわ」
彼女は持っていたトランクを取り出すとそれは、一瞬で分解され彼女の身へまとっていく。この間わずか0.01s、現れたのは顔と関節部が露出しているように見えるアーマー。空を思わせる蒼さに大きな6枚羽は思わず見とれてしまう美しさがあった。
「さて、行きましょう」
「……他の荷物はございません?」
「輸送の職員の方に預けたに決まっているでしょう?…エスコートしてくださるのでなかったのですか?」
本当に見とれてしまうとは。恩人の娘さんの前で無様なマネをさらすわけにはいかない。
「っええ、空中散歩と行こう…良くもまあ、見れた物ではないけれど」
鈍色の機体が空色の機体を導くように飛んでいる。両手両足の飛行専用ではない噴射口4つに対し、向こうは6枚羽の立派なスラスターを備えているのである。こちらの速度に合わせてくれているのがひしひしと感じる。