1━4.事情説明と、後ろ楯
目の前で最後のPKが光の粒子になって消えた。
お、レベルが5つ上がった。そういえば、レベル差がありすぎると相手が格上でも、得られる経験値が少なくなるらしい。
一番入るのは、適性レベルより10上のやつからだ。
と、ステータスポイントは、全て〔MND〕に振る。なんというか、魔法攻撃が怖いです。見えたら対処できるんだけど、見えずに食らったら死ぬ可能性があるからな。ステータスポイント以外での上げ方が分からないので、暫くは全て〔MND〕に振る予定。
「おい、色々聞きたいことがあるんだが?」
金髪緑目で人族の霧羽が、いい笑顔で肩を掴んでくる。俺のステータスについてはメールで教えるつもりだったのだが、一々文章を打ち込んで送るのが面倒だったので、口頭で教える所存
「あぁ、でも、ここでは……な。何処か誰にも聞かれない場所ないか?」
「そうか、んじゃ、うちのクランハウスの一室を借りるから、そこで話せ」
「了解。っと、それより……」
霧羽と一緒にいた、おそらくパーティーメンバーの人達に挨拶せねば
「どうも、霧羽のリアル友人で、千夜だ」
お辞儀をして挨拶。敬語じゃないのは、霧羽の知り合いだからです。本当に初対面の相手、及び、年上には敬語だけどな。
「……あ、自分はロンターです。先ほどは、助けてもらってありがとうございます」
ロンターは、長剣と盾に青銀の鎧を着た、青髪青目の人族の青年
「蒼百合です~。お強いんですね~」
蒼百合は、耳が長いのが特徴のエルフで、腰まであるロングストレートの金髪に薄緑の目をしている
「キリカよ。レベルと強さがあってないのはどういうこと?」
キリカは、背中にかかる程度の白髪に濃い青目の猫の獣人
「レイカです。助けていただき、ありがとうございます」
レイカは、肩にかからない程度の白髪に桃色の瞳の猫の獣人。キリカとよく似ているけど、双子かな?
「という事で、こいつが話してた千夜。目付きは悪いけど、いい奴だから仲良くしてやってくれ」
おい、失礼なことを言うんじゃない。確かに目付きは悪いが、これは生まれつきだ。不良に間違われることもあるけれど、真っ当に生きてきたつもりなんだぞ。
それよりも、霧羽のパーティーメンバーはなかなかいい人達が揃ってるようだ。俺のステータスについて深く聞いてこないのには好感が持てる。キリカは別だが、あれは素なんだろう。
まぁ、霧羽のパーティーメンバーだから信用できるってのが一番だけども……
「とにかく、詳しい話はクランハウスでするぞ!」
霧羽達について、ファルノートの王都に入る。
「おぉ~。まんま、中世ヨーロッパ風の異世界って感じだな」
「だろ? 雰囲気もよくて、やっぱりファルノートが一番だよな~」
霧羽のファルノート推しが凄いな。
そして、ファルノートの町並みは白や青、金や銀が主体で明るい感じだ。一際大きく、存在感を主張している城も、中世ヨーロッパ風でなかなか言い感じだ。
町行く人は、金髪や茶髪が多く、黒髪はプレイヤーぐらいしかいない。
「さてと、簡単にファルノートの現状を説明するぞ。戦争を仕掛ける気は毛ほどもなく、他の大国との同盟をなそうと頑張ってる。が、ガルガンシアに狙われてて、ちょっとピリピリしてるな」
「成る程」
戦争か………もしそうなったら、参戦することにしよう。
「んで、プレイヤーだけど、1000レベル超えは一人もいないらしいが、800超えが三人いるから、防衛ならトップクラスだ」
「1000レベル超え?」
「あぁ、とりあえず有名な四人だけ教えとくな。先ずはプレイヤー最強と言われてる、羅刹の“戦神”。
バラキアの“龍釣”。
無所属の“軍姫”。
全世界指名手配犯“奈落”。
の、四人」
「へぇ~」
羅刹の“戦神”さんが気になる。プレイヤー最強っていうぐらいだから、相当強いんだろうな。
おっと、それよりもファルノートの800超え三人のことだ。続きを霧羽に促すと
「一人は、俺の所属している《黄昏の灰》のクランマスターで、“黒轟”のグレイマンさん。二人目は、クラン《虹薔薇の騎士団》のクランマスターで、“氷麗の騎士”ネル。最後は、“八無刀”の華天さん」
「“八無刀”ってなんだよ」
「いや、俺もよく分からないんだよ。だいたいは、二つ名に関する能力とか、戦い方をするもんなんだけど、華天さんはなかなか表に出てこないからな」
もしかしたら、1000レベルにいっている可能性もある。霧羽はそんなことを言った。
うーん。気になることはいっぱいだな。
暫く歩くと、《黄昏の灰》のクランハウスに着いた。見た目は、潰れた工場跡地、煤けた焦げ茶のレンガの建物に、傾いた看板があるだけ
「中は結構普通だから」
あってんのかここで? と、思ったが霧羽の言葉を聞いてとりあえず入ってみると、中はシックな雰囲気のなかなかいい所だった。
「談話室一つ借りまーす」
「おう、三番空いてるからそこにしろ」
「了解」
「霧羽、僕らはクランマスターに今回の件の報告してくる」
「オーケー。宜しくなロンター」
霧羽の他のパーティーメンバーとは別れ、二人で談話室という部屋に入る。
とりあえず、隠蔽機能をオフにして見せて、今までの事を洗いざらい吐く。
「………お前まじで何やってんの? 現実っぽさが混ざっただけで、ステータストンでもないことになってんぞ!」
「……まぁ、計算だとレベル上げだけして俺の能力値を再現するには、1000レベルは軽く必要なのは分かる」
これぐらいのステータスなら、二、三人はいるかと思ってたんだが、現状のプレイヤー最高レベルが1000ちょっとぐらいかもしれないので、ちょっと戦慄
「でも、普通ここまであがらないよな?」
「あぁ、一定行動で上がるといっても、500以上も上昇するなんてあり得ない………多分だが、ソロだったこととか、場所とか、使ってたものが関係してるんじゃないか?」
「あ、その可能性あるな」
なんせ、脱出したらアルハガルナみたいなトンでもないのがいたからな。
しかし、それにしてはゴブリン達が弱すぎた気もする………まぁ、強いは強かったけども
「よし、全部話したしそろそろ王都の散策でもするわ」
「ちょいまち。クランマスターに話してもいいか? いざというときの後ろ楯になってくれるだろうし、話の分かる人だから」
「霧羽がそういうなら、別に構わないぞ」
さんきゅーと言って、部屋から出ていった霧羽を待つこと暫し
「待たせた」
「おう、お前が千夜か?」
霧羽と一緒に入ってきたのは、無精髭の似合う筋骨隆々の男性だ。
この人がここのクランマスターか、なんか納得できる。
「霧羽から話は聞いた。俺がここのクランマスターの、グレイマンだ。本音を言うと、うちに入ってほしいんだが、無理強いはよくねぇよな。ま、困った時はうちを頼ってくれ。全力で後ろ楯になる」
「ありがとうございます」
「はははは! 気にすんなって。その代わり、たまに力をかしてくれよ?」
成る程。ギブアンドテイクってやつか。まぁ、すれぐらいならお安いご用だな。
クランマスターのグレイマンさんと握手をして、《黄昏の灰》のクランハウスを後にした。