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『Freedom Frontier』  作者: 雪沢 泉
1章.“死狩兎の踊る森”
8/45

1━3.千夜の実力


今回は、千夜の友人の霧羽視点です






「くそっ!」


「どうかしたのかぁ?」


「うるせぇ!」



ニヤニヤ笑う目の前のPKに切りかかるが、避けられた。くそっ! よりによってこんな時にアイツが近くに来てるとか……



「霧羽!」


「ち!」


「ロンターさんきゅー」



大鎌で斬られそうになったところを、俺と同期のロンターが、割って入って防いでくれた。そしてどうやら、連中はいったん距離をとったようだ。


状況は最悪だ。


PKクラン《血濡れの狩人》が七人


対して、こっちは五人。


上位剣士の霧羽(オレ)、聖騎士のロンター、魔導師のキリカ、僧侶の蒼百合、弓士のレイカだ。


今回は、キリカの双子で新しいパーティーメンバーのレイカのレベル上げの手伝いをしていたのだが、初心者狙いのPKに襲われてしまった。しかも、よりによって……



「ケケケケ。そろそろ諦めて、デスペナになっちまえよ」



相手は、《血濡れの狩人》の三番目に強いプレイヤー、レベル200超えの大鎌使い、ギャクサツ王までいるPKパーティーだ。それに、戦った感じ全員平均レベルが100近いだろう。


パーティーの中でも一番レベルの高い俺で、まだ60だ。


つまり、相手は本気を出さずに遊んでいる。


くそっ! 救援を呼ぶ暇もない。



「はぁ、なんか面倒くさくなってきたな。“黒轟”が来たら不味いから、そろそろ決めるかぁ~」



ギャクサツ王が笑いながら、大鎌を俺達に向ける。


最悪だ。最悪も最悪。PKによるデスペナなんて、俺は大丈夫だし、ロンターも気にする性格ではない、蒼百合も神経図太いし、キリカは怒るだけだし………


でも、レイカは………


ちらりと、今もキリカの後ろで震えているレイカを見る。


トラウマにさせたくはない。


しかし、この人数差では逃がすことも出来ない。



《プレイヤー千夜との、フレンドトークを繋ぎました》



先ほども流れたアナウンスが聞こえる。またアイツか! とりあえず、目の前のPK達から目を離さないようにする。



『霧羽、見えた。お前の前方500メートルぐらいだ』


「は!?」



思わず声を出して注目されてしまったが、そんなことよりも千夜のことだ。


確かに、PK達の後方に人影が見える。



「よ、良かった……」



レイカが安堵の声をもらす。おそらく、【鷹の目】のスキルで千夜を見つけ、助けに来てくれたのだろうと思ったのだろう。それはあっているが………



「ははははは! こいつは笑えるぜ! レベル15の雑魚が助けに来てくれたぞ~」



ギャクサツ王が、俺達に笑いながらそういう。レベル15って、このゲーム内時間3ヶ月以上の間、アイツ何してたんだよ!


安堵の表情を浮かべていたレイカは、自分より10以上もレベルが下のプレイヤーだったことを知り、恐怖のうえに絶望の表情を浮かべている。



『千夜逃げろ!』


『無理』



そう言うと、千夜はフレンドトークを切った。アイツ!



「おい、適当に潰せ」


「じゃ、俺がいきますよ、『クリムゾン・フレアブラスト』」



魔導師の男が、千夜に向けて上級の火魔法を放った。


千夜では耐えられない。何とも言えない感情を感じつつ、諦めそうになったその時……



「「「「「「「なっ!?」」」」」」」



巨大な火球を抜けて、千夜が駆けてきた。



「ちっ! 魔法を無効化するスキルか称号だろ、暫く使えないハズだが、念のために物理で仕留めろ!」


「任せろ!」



PK達に迫る千夜。その千夜に、大剣使いの男が持っていた大剣を降り下ろした。



「千夜!」


「死ねぇぇぇぇ!」



俺の叫びもむなしく、降り下ろされた大剣は千夜の頭に直撃し━━━



「なっ!?」


「次は、もっといい素材使うんだな」



━━━跡形もなく壊れた。



俺達や、PK達が状況を理解出来ないのを気にもとめずに、大剣使いの男に鋭いアッパーカットを食らわせる千夜。


能力値の差など関係無いとばかりに、吹き飛ばされた大剣使いが、光の粒子になって消えた。


訳が分からない。


俺達も、PK達も、千夜が起こしたことを信じられなかった。


黒鋼で出来た大剣を破壊し、一撃で50以上レベル差のあるプレイヤーを倒した。



「てめぇ! 何もんだぁ!」


「ん? ただのプレイヤーだけど?」


「んな訳あるか! 50以上レベル差のある大剣使いを、格闘家が一撃で倒せるわけないだろ!」


「何言って………あぁ、今はそうなってる(・・・・・・・・)んだったか」



千夜が意味深なことを言った直後、姿がかき消え



「がっ!?」



千夜と相対していたギャクサツ王の後ろにいた魔導師の男が、千夜の蹴りを食らって光の粒子になって消えた。


嘘だろおい


俺の認識できない………いや、レベル200超えのギャクサツ王の認識できない速度だと?



「なっ!? てめぇ、今のはなんだ!」


「何って……なんでもいいだろ。というか、今は戦闘中なんだから、油断するなよ。【螺旋】、『氣弾』!」



千夜の左拳から放たれた『氣弾』が、また一人のPKを仕留めた。



「くそ! お前らかかれ!」


「「「おう!」」」



ギャクサツ王が、自分以外の残りの三人のPKを千夜にけしかける。


三人のPKが、同時に斧を、槍を、メイスを、千夜に降り下ろした。



「【剛】、『氣刃』!」



千夜が左腕を振るうと、三人のPKの身体が二つに別れ、次の瞬間には光の粒子となった。


本当に、アイツは何してたんだよ………



「くそが! まぁいい、てめぇじゃ俺には勝てない」


「………実はな、随分前から居場所を特定してたんだが……」



ギャクサツ王から大鎌を突き付けられた千夜は、じみにびっくりする事実を言ってきた。


それならば、さっさと来れば良かったんじゃ?



「強いプレイヤーが一人いたから、準備してたんだよ」


「準備だぁ?」



強いプレイヤーとは、ギャクサツ王のことだろう。しかし、準備ってなんだ?



「俺が右手を使わない(・・・・・・・)の気づいてたか?」


「はぁ? それがどうだってん━━」


「『竜の爪撃(ドラゴン・クロー)』」



千夜が右手を振りながらそう呟いた。そして……



「「「「「え?」」」」」



次の瞬間、ギャクサツ王は三つに斬り裂かれ、光の粒子になって消えたのだった。





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