1━2.騎士の国へ向けて
「お前まだ最初の町なの?」
「おう」
昨日着いたばかりだからな
「んで、まだ冒険者ギルドランクFランク……と」
「おう」
昨日登録したばかりだからな。
ちなみに、冒険者ギルドランクは、F→E→D→C→B→A→Sの順で上がっていく。昇格条件は基本的に、同ランクの依頼の一定数達成だが、途中から特定モンスターの討伐とか、書類を届けるとかあるらしい。
まぁ、積極的に上げる予定はないのでいいだろう。
「千さぁ、何やってんの? 俺もう所属国選択クエストもやったし、クランにだって入ったんだぜ?」
所属国選択クエストとは、ゲーム内にある五つの大国。
騎士王国 ファルノート
機械帝国 ガルガンシア
商業同盟 リアノル
海運国家 バラキア
兵之戦地 羅刹
以上の五つの国だ。ちなみに、霧羽はファルノートに所属したらしい。
んでんで、クランというのはプレイヤーの集まりというか組織というかで、国に所属しているのクラン、無所属のクラン、PKクラン等々……
霧羽は、ファルノートに所属している《黄昏の灰》に入ったらしい。ちなみに、かなり有名なクランだそうだ。流石は霧羽、いいとこ入ったな。
あ、プレイヤーの初期地点のある場所は、自由区画と呼ばれていて、“風皇”ヴァーレルクの住まう不可侵の地とされ、どの国も戦争を仕掛けないらしい。
「それで、最初のボスは倒したのか?」
「あぁ、あの熊だろ? 倒した」
このゲームで明確なボスは、イベントで出てくるもの、迷宮に出てくるもの、そして最初の熊ぐらいである。後は、ユニーク個体と呼ばれるものだ。
ユニーク個体とは、そこら辺を徘徊してたりする強力なモンスターで、倒すと希少なアイテムや、強力な装備を落とすらしい。その分、強力な能力や特性を持っていることがあるらしいが………
あ、最初の熊は瞬殺しました。
殴ったら、上半身が消し飛びましたよアハハハハハハ
「それじゃあ、ファルノート来いよ。所属のためのクエストは結構簡単だぞ?」
「んー。行くには行くけど、所属はもうちょっと他の国見てからにする」
「帝国は止めとけよ。ちなみに、羅刹のほうがましだからな。あそこは国って感じじゃないけど」
「あぁ、戦国時代の日本と中国を合わせたような感じだっけ?」
「そう。個人で強い、化け物とか呼ばれるやつもいるし、基本的に殺伐としてるからな。俺のオススメは断然ファルノートだ」
まぁ、リアノルは裏がかなりヤバめらしいし、バラキアかファルノートがオススメ! って、インターネットでも言われてたしな。
しかし、国に積極的に所属するつもりはない。とりあえず、アルハガルナとの約束があるので、唯一の遭遇地である、黒と白の荒野を探すつもりだ。オリハルコンもあるし………
「ま、千の好きにすればいいさ」
「おう、創も頑張れよ」
講義も終わって、急いで帰る。頑張れば、今日中にファルノートに行けるだろう。なんせ、自由区画から一番近い大国は、ファルノートなのだから
といっても、冒険者ギルドランクを上げておけば、好きな大国まで転移で行けるらしいけども……
「ただいま」
「お兄ちゃんお帰り~。今日もゲーム?」
「まぁな」
「お兄ちゃんがそんなにハマるなんて相当だね。私もやってみようかな?」
あ、実は妹がいます。名前は、京極 茗だ。
二次元大好きで絵の上手な茗は、友達(茗は盟友と呼んでいる)と作った同人誌を、コミケで売ったりしているらしい。
しかも、そのテの世界ではかなりの有名人だとか………
「あぁ、友達誘ってやってみれば?」
「盟友だよお兄ちゃん! というか、もしかして創さんもやってるの?」
「ん? やってるけど?」
「じゃあ、澪ちゃんも誘ってみようかな~」
あぁ、あの娘か……妹の友達にはスペックの高い娘が多いのだが、澪ちゃんは、旧家のお嬢様で大和撫子な美少女だ。物腰柔らかで丁寧で、芯のしっかりした女の子。めちゃくちゃモテるらしい。
そして、創に惚れてるらしい。何故かは分からん
茗は、聞いてみる~と言って去っていった。さて、そろそろ行きますか
いざログイン
「よし、無事みたいだな」
前回は、ファルノートに行く途中の森の中……木の上でログアウトしたのだが、無事だったらしい。頑張って、カモフラージュしたかいがあったのかな?
木の上から降りて、先に進んで行く。
道中の敵は鑑定だけして、無視して行く。だって、レベル7とかなんだよ? 戦っても対して経験値が入らなさそうなので、それに、今は急いでいるので
「お、抜けたな。そして、あれが……」
森を抜けると、草原が広がっており、草原の先に白色の城壁が見える。おそらく、あれがファルノートの王都だろう。
草原を駆けて、ファルノートに向かう。
ん?
霧羽にもうすぐ着くとメールを送ろうとしたら、フレンドトークのできるようになっている。確か、半径一キロ以内じゃないと駄目だった気がするんだが……
どう見ても王都までは一キロ以上かかる。
「ってことは、この辺りにいるのかな?」
といっても、広すぎて目印になるのは巨大な王都の城壁ぐらいだ。
「とりあえず、フレンドトークしますかね」
霧羽を選択して、フレンドトーク
『なんだよ!』
「なんだ? 慌ててる……というか焦ってるみたいだな」
『そうだよ! うおっ!?』
「どうした?」
『話しかけんな! 今PKに襲われてるんだよ!』
「成る程。悪かったな、直ぐに向かう」
『は? バカ、足手まといにな━━』
なんか言いかけてたみたいだが、状況は急を有するようなので、フレンドトークをこちらから切る。
とにもかくにも、探そう
………………
半径五キロ以内なら、フレンドの居場所は【地図】で分かるみたいです。