2━18.私は■■■■
桂月視点です
■王城■
キィィン、キィィンと、弾丸とクナイがぶつかって音を立てる。
向こうが連射してくるのを走って避けながら、クナイを投げつけるけれど、弾丸で撃ち落とされてしまう。
「『水遁:鉄砲水』」
私のすぐ横から水が溢れ出して、シャクナゲに向かって鉄砲水となって向かっていく。
シャクナゲは避けたけど、それは予想通り、クナイを投げつけていくが、やはり撃ち落とされてしまう。
「『風遁:鎌鼬之陣』」
着地地点を狙って、風遁を発動させる。これは、多分避けきれないハズ。
「やだわ。服が切れたらどうするの? 『ストーンウォール』」
魔法を使われて、土の壁で防御された。
むぅ。もっと威力が高いのを使うべきだった。まぁ、向こうの視界が遮られてるのをいいことに、ちょっと準備しておこう。
「さ、そろそろ行くわよ」
そんな声とともに、手榴弾のようなものが土壁の奥から飛んで来た。とりあえず距離を取っておく。
手榴弾ではなく、煙幕だった。まぁ、『極翔龍・空鏡天眼』があるから、そんなもの使われても何の問題も無いけど
「ふふふ。これで見えないでしょ? まぁ、私は問題なく見えるけどね」
この人たいしたことないのかな? もう少し疑ってもいいと思うけど……
まぁ、とにもかくにもさっさと終わらせるために、一気に仕掛けに行こう。
シャクナゲに向かって一直線に突撃していき、忍者刀を突き出す。
「っ! 見えてるの!?」
「………」
短剣でガードされた……まぁ、見えてるみたいだし当然だとは思うけど……驚き方がわざとらしい気がする。
ここは少し警戒しよう。名前と姿は知ってるけど、この人戦い方までは知らない。けど、銃での暗殺だろうから、近接戦はそこまででも━━━
「っ!?」
「あら? どうしたの?」
騙された。
奥歯に仕込んでいる薬を飲み込み、シャクナゲから………煙幕の外に出る。
これは煙幕じゃない、毒煙だ。それにしても、毒には忍関係で慣れているけど、何の毒か分からないからさっさと終わらせないと……
「ふふ。もしかして気づいた? さぁて、何の毒でしょう?」
「『火遁:火龍線』」
口から放たれた火の龍が、私が仕掛けた糸を伝って進んでいく。
「? 何をしてるの?」
「【影潜り】」
問いには答えず、スキルを発動させて安全な場所に逃げ込む。
『影分身』を使って周囲に被害が出ないような仕掛けをしておいた。倒せればいいけど、駄目だったら別の手使わなきゃ
「どうかな?」
「酷いことするわねぇ」
服が破けているけど、ダメージは受けていないみたいだ。火薬を仕掛けて、次々と爆発させたんだけど、どうやって耐えたんだろう?
仕方ない。なんとか隙を見つけて一撃入れよう。
「毒が効かないなんて、面倒な子ね」
「そうでもない」
ふむ。毒は無効化出来なかったのかな? でも、もしかしたら嘘の可能性があるから、油断せずにさっさと終わらせよう。
とりあえず、バレないように分身を生み出す。
「また何かするつもりね。でも、こっちもさっさと終わらせることにするわ」
「出来るの?」
「出来るわよ。毒での暗殺は得意なの。『ヘブンズ・スノウ』」
室内なのに、雪が降り始めた。なんか嫌な予感がする。とりあえず、火遁を使って溶かしておく。まぁ、どんどん降ってくるから、当たらないようにどんどん溶かさないとだけど
「ふふふ。正解よ、この雪は肌を溶かして対象の身体に神経や、血液、骨、とにかく人体を破壊する毒を流し込むの」
「ふーん」
「ふふふ。それとね、超強力毒爆弾をこの銃から撃たせてもらうわね。これで詰みよ」
うーん。もうちょっとかな?
「それじゃあ、始めるわよ」
「『火遁:分身大爆発』」
シャクナゲの後ろに移動させておいた分身を爆発させる。まぁ、簡単に避けられるけど、注意をそらすことは出来る。
とりあえず、銃を撃たせないようにしよう。
「『火遁:炎雷爆符』、解放」
部屋に仕掛けておいた符が、次々と爆発する。とりあえず、これで雪は殆ど吹き飛んだ。
「いい加減にしなさい!」
「忍法『空蝉』」
飛んで来た毒爆弾を利用して、カウンター技の『空蝉』を発動させる。
一瞬でシャクナゲの後方に移動した私は、首もと目掛けて『暗殺兎の死狩刀』を振るう。
「残念」
「っ!?」
脇腹に痛みを感じると思ったら、短剣で刺されていた。
ぐっ。なんだか目眩がする。これは、毒? かなり強力みたい。
「うーん。保険を幾つも用意しておいて良かったわ」
「ぐ……ぅ」
「ふふ。無駄よ、色々ブレンドさせた強力な毒だから。あ、そんな所で踞ってたら、雪が当たるわよ」
雪が肌に当たって、肌を、肉を、骨を溶かしていく。かなり痛いし、酷い姿になっている。二度と食らいたくない技。
まだかな? 後もう少し
「うふふ。これで私の勝ちね、黒薔薇さん」
「二つ訂正」
「? 何かしら?」
間違ったことを二つ言ったシャクナゲに、私は正しいことを言う。
「私は、黒薔薇じゃない。私は■■■■」
「?」
もう必要のない名前だけど、それでも私は■■■■だ。黒薔薇じゃない。
「それと、勝つのは私」
「往生際が悪いわねぇ、第一、そこからどうやっ━━━っ!?」
シャクナゲが喉を抑えて崩れ落ちる。
ふぅ。やっと酸素が無くなってきたかな?
「“風遁:絶空域”、指定空間から、空気を時間をかけて無くす技。貴女は、十分もせずに死ぬ」
「それは貴女もよっ!」
「これは分身」
「!? なんですって!?」
「影に潜った時に交代した、さっき仕留められなかったから、この方法を使わせてもらったの」
「く……こんなハズじゃ……」
隣の部屋から、シャクナゲが気絶したのを確認した私は、分身を出してシャクナゲの側に行かせる。無酸素状態にしたから、そのうち死ぬと思うけど、念には念をいれて
「『火遁:分身大爆発』」
よし、これで終わり。後は、部屋を元通りにしよう。巨大兵器のほうは、千夜が上手くやってくれるみたいだし。
巨大兵器のことは千夜に任せることにした私は、王族を守ることに専念することにした。
次回は久し振りの千夜です




