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『Freedom Frontier』  作者: 雪沢 泉
2章.“battle of the Imperial City ”
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2━17.閃光と無刀






■宿場町■











王都に現れた“対城塞兵器No.04 MCTメカニック・カノン・タートル”を気にする暇すらなく、目の前の相手だけを見据えて戦う二人。



「【剛】、『刃脚』」


「『柳流し』」



刀と足の打ち合いで、キーンという音が鳴る。



「痛ってぇ………『龍射(ロンシゥー)』」


「『猪突』」



トンファーによる突くような攻撃と、刀による突きがぶつかる。


両者ともに本気の攻撃


周囲の空気が震え、足が着いている地面は砕けている。


同次元の強者同士の戦い。一進一退ではなく、正しく同等の戦い。お互い油断なく、一挙手一投足に気を配り、常に隙を探していた。



「あー。やっぱリーチ足んないな」


「何言ってやがる。機動力でカバーできるくせに」


「あらら、やっぱバレちゃう? でもさ、いくら速くても見切られちゃ意味ないじゃん」


「それならいくらリーチがあっても届かせなれないんじゃ駄目だろ」



話している間も、それぞれジリジリと距離を詰めていく。



(はぁ、やっぱこんな依頼受けるんじゃなかったよ。強敵と戦う理由が燃えない)


(コイツ………本当にやる気あるのか?)



殆どやる気の出ないウルと、それを微妙に察知する華天。


やる気は無いが、とりあえず依頼はやるウルは、そこでハッと気づいた。



(足止めするだけなら、無理に攻撃しなくてよくね!?)



なんで思い付かなかったのかと疑問に思いながら、足止めの方法を考え始めるウル。華天のほうは、さっさとウルを何とかして、巨大兵器の所に向かいたいと思っていた。



(こりゃ、出し惜しみは無しだな)



巨大兵器の強さが未知数なので、出来るだけ早く向かわなければと思った華天は、刀を鞘に仕舞うと、無いハズの刀を構えたような格好をした。


それを見た者は、何をしてるんだ? と思うだろうが、ウルはさらに警戒を強める。



「火之刀、『焔』」


「それが噂の“無刀”か」


「その通りだ」



華天の手に現れたのは、赤い炎で出来た刀。これこそ、“八無刀”と呼ばれる由縁。無いハズの刀は、火と炎を刀の形に固めたモノ。


非実体系、物理無効系等の敵にさえ、その刃は届く。



「『岩断』!」


「うおっ!?」



ウルが来るのを待っていたさっきとは違い、怒涛の連撃を浴びせていく華天。その踏み込みは地面を割り、刀が迫った地面はあまりの高温に『ジュウ』という音を立てる。


ウルは、刀がかなりの熱を放っているのが分かり、受けることはせずに回避していく。



(不味いな。このままじゃ詰められる)



足に力を込めたウルは、閃光となってかなり後方に一瞬で移動した。



(こりゃ、足止めだとか言ってる暇は無いな。向こうが本気で来たら面倒だ)



「『白雷脚』」



ウルの両足が、白色の雷を纏う。



「本気になったのか?」


「いや、まだかくし球はある」


「そうか」



華天は『焔』を消すと、両手に一本づつ新たな刀を産み出した。



「雷之刀、『轟』 光之刀、『耀』」



右手に出現させたのは、バチバチと放電する雷の刀。左手に出現させたのは、白く輝く光の刀。


それを見たウルは、苦笑いした後、その場から消える。



一瞬の時間の後、両手の刀をクロスさせてウルの蹴りを受け止めた華天。そんな図が出来ていた。



「驚いた。この速度に着いて来れるのか」


「俺の刀は自己強化もしてくれる。雷と光は一番速い組み合わせだ」


「成る程な。それじゃ、もう少し速くいくぜ」



一定以下の者から見れば、何が起こっているのか分からない戦い。閃光と白雷が、地上を、空中を、自在に駆け回り、時折金属同士がぶつかり合う音が聞こえるだけ。


実際に起こっているのは、ウルが音速を超える速度で周囲を駆け回りつつ、時折華天に攻撃を仕掛け、それを見切った華天が刀で弾き、受け流すというのを延々と行っているのだ。



(さてさて、このままじゃじり貧だな。本気で倒しにいかないとな)



閃光と白雷が消え、周囲の地面がズタズタになりつつも、無事な場所、先ほどの場所から一本松も動いていない華天は、周囲を警戒しつつ見渡していた。



「何処に行った?」



逃げたのかと思った華天は、嫌な予感とともに真上を見た。



「『流星(リュウシン)』」



ウルのその言葉が聞こえた人物は恐らくいない、音を置き去りにしたウルの一撃が、華天のいる場所に突き刺さり、轟音とともに周囲一帯を吹き飛ばす。


土煙が周囲に立ち込めるなか、二人の人物がゆっくりとと立ち上がった。



「痛てぇ………避けた上に左腕持ってくとか可笑しいだろ」


「何言ってんだよ、こちとらかすっただけでこの様だぞ」



左腕が無くなったウルと、服がぼろぼろになり身体中に傷が出来た華天。


直撃する寸前で横に回避した華天は、そのままウルの左腕を斬り飛ばしたのだが、完全には避けきれておらず、かなりのダメージをおったのだった。



「アンタなら、真正面から……それこそ俺を倒せると思うんだけど?」


「バカ言え、お前こそ途中で止めること出来ただろ、それに、あのデカブツように余力を残さないと━━━」



『ドガァァァァァァァァァァンンンン!!!!』


『なっ!? アナタ………なんでそこに━━━』



巨大兵器から爆発音と、焦りの混じった声が聞こえ、さらに巨大兵器が爆発を起こしていく。



(あ、こりゃ失敗だな)



なんとなくそう思ったウルは、足に纏っていた白雷を解除すると、華天に笑いかける。



「それじゃ、俺帰るから」


「は? 何言って━━」


「アディオス!」



一瞬でその場から消えたウル。華天が振り向くと、閃光が王都の外に向かって飛んでいくのが見えた。


華天はふっと息を吐くと、両手の刀を消し、ポーションで傷を癒した。



「さて、可愛い女の子が沢山いる王都を守るために、あの無粋な機械を破壊するか」



そう呟いた華天は、爆発を続ける巨大兵器に向かって駆け出した。





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