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『Freedom Frontier』  作者: 雪沢 泉
2章.“battle of the Imperial City ”
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2━16.“氷麗の騎士”後編






“氷麗の騎士”ネル。


騎士王国ファルノートのクランの一つ、《虹薔薇の騎士団》のクランマスターにして、ファルノートプレイヤー三強の一角。


騎士系統の職、氷系統の能力持ちと推測されている。



また、ファルノートの王族からの信頼も厚く、ファルノートを支える柱の一つといえる。



しかし、彼女の素を知っている者は少ないのだった。











■貴族街■











「遅い」


「まったく! 何をぐずぐずしていたんですの!」


「ネルちゃん! なんでもっと早く来れなかったの!」



アスル、パシオン、リリーの、リアル友人で、古株三人に非難の声を浴びせられたネルは、一瞬涙目になりかけたのを頭を振るってリセットし、キリッとした表情で三人に向き合う。



「皆、私が来るまでよく持ちこたえたな。後は、任せろ!」


「何をカッコつけてるんだか。ま、後はよろしくね」


「遅れて来たくせに偉そうですわね。謝罪の一言もなくって?」


「もぉー! 私の気も知らないで好き勝手言っちゃってー!」



やっぱり非難の言葉を浴びせる三人を、他のメンバー達は苦笑いで見つめ………いや、一人だけ割って入った。



「皆さん! ネルさんに対して失礼ですよ! ネルさんだってきっと用事が「あーはいはい。沙紗、団長が周辺警戒お願いってさ、沙紗にしか出来ないから」……え? ほ、本当ですか!?」



期待に満ちたキラキラした目で見つめる沙紗と、分かってるよな? という目で見つめる、アスル、パシオン、リリーの三人。


暫くそんな四人からの視線に晒されていたネルは、ごほんと咳をしてから



「た、頼んだぞ、黄薔薇」


「はい!」



沙紗が周辺警戒のために走って行ったのを見届けた三人は、再びネルに非難という名の説教をこんこんとし始めた。



数十分後、しょぼんとしたネルと、言い終わって満足した三人がいた。



「面目しだいもありません。ごめんなさい」


「分ければよろしい」


「今日の所はこれぐらいにしてあげますわ」


「今度からは気を付けてね」



三人のお小言が終わったので、ネルは気を取り直して、自分の雰囲気わ普段の団長らしい感じにし、メンバーに現在の状況を聞く。


メンバーも慣れたもので、淡々と現在の状況を報告した。



「成る程。では、現在敵が何処にいるか分からないのだな」


「そう。まぁ、大方ここの上空だとは思うけど、今の所行く手段がねぇ……」


「そうだな。向こうから来てくれればありがたいのだが………ん?」



ネルの視線の先、上空から地上に向かって大きな物体が真っ直ぐ向かってくるのが見えた。


他のメンバーも気づいたようで、アスルに至っては、望遠鏡のようなもので姿をよりはっきり確認していた。



「あぁ、向こうから来てくれたみたいだよ。乗ってるのは、ガルガンシア所属の織姫、モンスターのほうは、速さに定評のある彗星竜だね」


「ふむ。向こうから来てくれたのは好都合だな、私が相手をする。アスルとパシオンは奴が逃げた時の足止め、もしくは撃破を頼む。他の皆は、あの機械の所に先に行ってくれ」


『了解!』



ネルからの指令を受けて、各自散開していくメンバー達。ネルのほうは、近くの建物の屋根の上に飛び乗って、腰の細剣(レイピア)を抜き放った。


大きく口を開いて飛んで来た彗星竜の突進と噛みつきをかわしたネルは、背中に向かって細剣を振るう。が、細剣は何かのバリアのようなものに弾かれた。



(この感じ、空気を圧縮して自身を守る、エア・フェレットか)



瞬時にバリアの正体と、相手が調教師(テイマー)系統の職業からバリアを張ったものを特定したネルは、少し離れた竜の背中に向けて左手を翳す。



「『アイス・コフィン』!」



短い悲鳴が竜の背中から聞こえてきた。



「私の可愛いフェレットちゃんになにするのよ!」


「向かってきたのだからそれ相応の覚悟はあるのだろう?」


「っ。ムカつく女ね………まぁいいわ。直ぐにその余裕そうな表情を崩してあげる! やりなさい!」



竜の背中に乗ったプレイヤー織姫右手を振るうと、何も無い空間から様々なモンスターが現れた。



「どう? 帝国のプレイヤーが開発した転送アイテムのおかげで、私は無尽蔵にモンスターが出せるのよ。貴女に勝ち目なんかないわ!」



小さな四角い物体を見せびらかしながら、織姫は勝ち誇った笑みを浮かべる。本来彼女が出せるのは、せいぜいが二十体ほど。しかし、別の場所からモンスターを転送することで、無尽蔵の使役が可能になっているのだ。


その物量は普通のプレイヤーや都市ならば、ものの一時間ほどて制圧出来るほど。



普通ならば(・・・・・)




「ふっ。なんだ、その程度か」



ネルは少しの動揺も見せずに、笑ってみせる。



「っ! その余裕がどこまで続くかしら!」



織姫の側にいるのは、平均が300レベルほどのモンスター達が数十体。いくらネルが強いとはいえ、流石にこれには耐えられないだろうと思っていた。


しかし、それは大きな間違いである。



「『シルバー・コート』そして、『サークル・スラッシュ』!」



ネルの周りがキラキラと淡く白銀に煌めき、それに比例するかのように、周囲の温度が下がり始めた。そして、そのまま身体を回転させて、剣を振るって全体攻撃を発動させる。


本来ならば、ただダメージを与えるだけの技。しかし、当たったモンスターは身体の殆どが一瞬で凍りつき、動けなくなる。



「この程度のレベルのモンスターをいくら集めようが、私を倒すことは出来ない」


「な、な!」


「これで終わりだ」



ゆっくりと織姫に近づいて行くネル。



(う、嘘よ。こんなに強いなんて聞いてない! こうなったら、あの手で━━━)



“あの手”がなんなのかは分からないが、使っていれば(・・・・・・)戦況は変わっていたかもしれない。しかし、それを使う暇も与えられず、織姫は敗れた。



白銀の煌めきが周囲に散り、息が白くなるほどの冷気が周囲に満ちる。


“氷麗の騎士”とは、正に彼女のことを指すのだ。



「『フリーズ・クロス』」



凍れる十字の剣線が、残っていたモンスターと織姫を凍らせながら斬り、一瞬の後には消え去った。


残ったのは、キラキラと煌めく白銀の粒だけ



織姫を倒したことを確認したネルは、直ぐ様巨大兵器に向けて駆け出した。





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