表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Freedom Frontier』  作者: 雪沢 泉
2章.“battle of the Imperial City ”
40/45

2━15.“氷麗の騎士”前編






■貴族街■











時は王都に、“対城塞兵器No.04 MCTメカニック・カノン・タートル”が出現した頃に遡る。


ここ、貴族街での戦いは泥沼に陥りかけていた。



「ふぅ。いくらなんでも多すぎじゃないかな?」


「むぅ。厄介ですわ、いくらワタクシの炎が強いとはいえ、流石に多すぎますわ」



多種多様なモンスター達に囲まれて、赤薔薇のパシオンと、青薔薇のアスルは背中合わせで武器を構えていた。


他のメンバーも、どんどん増えていくモンスターに、四苦八苦していた。



「多すぎる! 橙薔薇! 麻痺と睡眠中心でお願い!」


「うん! まっかせてー」



倒すより、麻痺や睡眠の状態異常で行動を阻害することに決めた、橙薔薇ことペノは、走りながらすれ違い様に状態異常をかけていく。


緑薔薇こと翠火は、それを見ながら、状態異常にかかってないモンスターを倒していく。



「ふぇぇぇぇ。ノーレちゃんどうしよ……」


「弱気になっちゃ駄目だよリリーお姉ちゃん。私が頑張って守るから………あ、やっぱ無理。沙紗ちゃん助けて~」


「二人共、いい加減コードネームで呼びあってください」



メンバーの中では、後方支援を担当する白薔薇のリリーと、桃薔薇のノーレが、あまりのモンスターの多さに、フリーだった黄薔薇の沙紗に助けを求めた。


雷撃で空中のモンスターを攻撃していた沙紗は、二人のもとに向かい、寄って来ていたモンスターをさくさく倒していく。



今はまだ危ない場面はないが、これ以上増えるとMPの問題でかなり不味くなる可能性があった。主にリリーとノーレが



(うーん。どうやってモンスターの補給をしてるのか分からないけど、無尽蔵に近い気がするなぁ……何処にいるかも分からないし、やっぱり団長には来てほしかったなぁ……)



アスルはため息を吐きながら、クランハウスで布団を被っていじけている人物の姿を思い浮かべた。



(自分が悪いって自覚してるのに……強情でヘタレなんだから)



「まぁ、それはあっちもだけど」


「? なんのことですの?」


「なんでもないよ。それよりも、この状況をなんとか打開しないとね。あの機械のこともあるし」



襲いかかってきたモンスターの一体を切り捨て、水の槍を産み出し、周囲に放って何体かのモンスターを倒しながらアスルは呟く。



「そうですわね。ワタクシの炎も萎えてきたようですわ」



炎が弱くなった剣を見ながら、パシオンは「はぁ」と、ため息を吐いた。



「そもそも、皆疲れてるよね」


「えぇ、今回の依頼は少し大変でしたもの」



少し前まで行っていた依頼。


とある人物が作った、巨大暴走ゴーレムの機能を停止させる、または破壊の依頼を受けた《虹薔薇の騎士団》は、準備を整えて向かった。


予定通りなら、巨大暴走ゴーレムは、そう時間をおかずに機能を停止させるか、破壊するか出来るハズだった。



しかし、予想外のことが起きた。


軍団系のユニーク個体が出現し、《虹薔薇の騎士団》と巨大暴走ゴーレムの戦いに加入し始めたのだ。


大暴れする巨大ゴーレムと、倒しても倒しても現れる土塊のモンスターの両者を相手取ったせいで、かなりの時間がかかってしまったのだ。


巨大暴走ゴーレムは破壊することが出来たが、ユニーク個体のほうは本体を見つけられずにとりのがしてしまったのだ。



「はははは。こんな軍団はこりごりだよね」


「まだワタクシの炎が効きやすいモンスターがいるのが救いですわね」



土塊やゴーレム相手には炎があまり効かず、パシオンは戦いの最中イライラしっぱなしだったのを、アスルは思い出した。それに比べれば、まだ効くのがいるこっちのほうがいいのだろう。


どれほどの数いるのか不明なのは同じだが……



「ふぅ。なんか面倒くさくなってきたね、一掃しようか」


「そうですわね。ここでストレスを一度発散したいですわ」



アスルとパシオンの二人は、他のメンバーに大技をやることを伝え、大量のモンスターに向かい合う。



「それじゃ、赤薔薇からどうぞ」


「ええ、任せて」



モンスター達に向き合い、燃える剣を持った両手を自然体が如くダランと下げて、目を瞑るパシオン。


暫くそうしていると、パシオンの周りがだんだんと歪み始めた。そして、パシオンの周囲に火が出ては消え、消えては出てを繰り返し始めた。



「陽炎が出るほどの温度って、どのくらいだっけ?」


「アスル姉、私がそんなの分かると思う?」



アスルとペノが話し合っている間に、パシオンの準備が完了していた。


カッと目を見開いたパシオンは、モンスターの群れに突撃していく。



「さぁ! ワタクシの情熱の前に灰となりなさい! 『プルガトリオ・ダンサ』!」



燃え盛る両手の剣の炎は、さらに激しさを増し、さらに二本の炎の剣がパシオンの後方に出現した。


計四本の炎の剣を携えたパシオンが、まるで踊るようにモンスター達を灰へと変えていく。その勢いは止まることを知らず、モンスター達を次々と倒していく。



「ふぅ。すっきりしましたわ」


「じゃ、次は私の番だね。『オーシャン・カット』!」



再びぞろぞろと現れたモンスター達に向けて、剣を振るうアスル。すると、まるで海を割ったかのように、剣が振るわれた直線の両端から水が溢れ出る。


一泊おいて、斬られた空間を埋めるように、凄まじい勢いで水が戻り、斬られなかったモンスター達を巻き込んで細切れにした。



「よっし! だいたい片付いたかな?」


「えぇ、言い感じに少なくなりましたわ」



二人と他のメンバーも少し力を抜くが、それを知ってか知らずか、上空から先ほどまでの数を凌駕する、鳥系や下級竜などのモンスター達がわらわらと現れた。



「うわぁぁぁぁ………って、こっちに向かってこない奴いるじゃないか!」



何体かのモンスターが、別の所に向かおうとしており、それを見たメンバーは慌てて、別れて各個撃破しようと話し合い、早速別れて向かおうとしたその時━━━



「『銀世界』」



上空にいたモンスターの殆どが、一瞬で氷つき、砕け散る。



「『シルバーフリーズ・ソードダンス』」



続いて、銀色に輝く剣達が、凍らなかったモンスター達に向かっていき、倒していく。


ものの数分で、上空にいた全てのモンスターが倒され、まるで何も無かったかのような状況になっていた。



「全く。私がいるというのに、王都に攻め入ってくるとは、よほどの阿呆らしい」



凛とした姿で立つ、一人のプレイヤー。


《虹薔薇の騎士団》のクランマスター、“氷麗の騎士”ネルが、遂に動き出した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ