2━12.襲撃者その4━━hit man of bewitching
桂月視点です
■王城■
「あれ? 戻るの?」
「うん。お城まで送る」
「ほんと? やった!」
はしゃぐリュエーナを背負って、千夜が開けた穴から屋敷に戻り、そのまま屋敷から脱出する。
千夜からの連絡によると、もうすぐ王都で帝国の襲撃者達が暴れるらしい。私は、王都のほうを任されたので、後のことは千夜に任せることにした。
とりあえず、リュエーナを安全であろう王城まで送ったら、王都の被害を見つつ、危なそうな所に向かうことにする。
「正面から入れるかな?」
リュエーナが誘拐されたのは分かってるハズだから、最悪、私が捕まってしまうかもしれない。
「それなら、侍女達が使ってるほうに行こっ! 侍女達なら入れてくれると思うから」
「それなら、そうしよう」
リュエーナの案内で、お城の侍女の人達が利用する入り口の方に行き、丁度出てきた人に事情説明。
「殿下を助けてくださりありがとうございます。事情のほうは私が伝えておくので、どうぞ客室でおくつろぎください」
送り届けたら直ぐに王都に向かうつもりだったけど、お礼をしたいという侍女長さんと、お礼もしたいしもう少し一緒にいたいと言うリュエーナに甘えて、少しいることにした。
もしかしたら、王族を狙った帝国のプレイヤーとかが出るかもだし
侍女さんの一人に案内されて、客室に向かっていると………
「リュエーナ!」
「フェリシアお姉様!」
リュエーナを抱き締める、ドレスを着た綺麗な女性。
第一王女フェリシア=ファルノート。
ファルノートの第一王女で、ファルノートの住人から愛されている、心優しき聖なる乙女。他の王族のように金髪碧眼ではなく、透明にすら見えそうな白い髪に、澄んだ空色の瞳をしている。
「フェリシアお姉様! 桂月が助けてくれたの!」
「………桂月? そう」
此方を見てふわりと微笑み、ありがとうと告げる彼女に、会釈する。
「久しぶりね。元気そうで良かったわ」
「はい」
なんだか、昔に戻った感覚に陥る。
楽しくて………辛くて………悲しかったあの頃
「あれ? フェリシアお姉様と桂月って、知り合いだったの?」
「えぇ、昔ちょっとね」
「………」
首を傾げるリュエーナに、フェリシアが微笑みながら肯定する。
フェリシアに少し話がしたいと言われて、私は彼女とともに彼女の部屋に向かうことになり、リュエーナは、実質この国を統べている第一王子の元に向かった。
この国は、とある事件で国王を失った。国王の妃は数年前に既に無くなっており、今は五人の子供達しか王族はいない。
失われた“騎士王の冠”を見つけない限り、第一王子は王位を継承出来ない。
でも、ファルノートの住人達は、国王はまだ生きていると思っている。
この国の現状を知っているのは、ほんの一握り。何故私が知っているのかは━━━
「貴女とこうして話すことになるとは思わなかったわ」
「私も」
彼女と会っていた私はもういない。
騎士だった時の私はもういない。
「戻る気はないの?」
彼女の空色の瞳が私を見つめる。
私は首を振る。
私はもうあそこに戻れない。
剣とともに騎士であることを止めた私は、もうあそこに戻ることはない。
「そう………残念だわ」
王都が襲撃されたのは、そんな時だった。
「っ!? 何!?」
「始まった」
私の言葉に、どういうこと? と聞いてくる彼女に、千夜に聞いたことを話すと、直ぐに第一王子に伝えに行くことになった。
急いで第一王子のいる所に向かうと、この国の第一王子である、ルークレイン=ファルノートが騎士団長っぽい人に指令を出している所だった。
「ルーク兄様!」
「フェリシアか。ん? 君は……桂月だったか?」
「はい」
軽く挨拶をかわすと、フェリシアがルークレインに事情を説明した。
「もう少し早く言って欲しかったが………帝国の機械兵器か………不味いな」
苦い顔をしつつも、指令を出していくルークレイン。確かに、この国に帝国の巨大兵器をなんとかする戦力は、殆どないと思う。
プレイヤーは分からないけど………
「兎に角、今は襲撃者共をなんとかするのが先決だな。フェリシアとリュエーナは、地下の避難所に行ってくれ。桂月は、二人の護衛を頼みたい」
「はい」
そうか、第二、第三王女は今は王都にいないんだっけ? まぁ、それはいっか。
それじゃあ、さっそく向か━━━
「なっ!?」
「ルーク兄様!」
「兄様!」
ルークレインを狙って放たれた弾丸を弾き、襲撃者がいるであろう所に向けて、クナイを投げつける。
「あら、バレちゃった」
現れたのは、両手に拳銃を持ったスーツ姿の女性。
大きな胸に、見事なくびれのついた妖艶な女性だ。
帝国のそんなプレイヤーを、私は一人だけ知っている。
「“姫蠍”シャクナゲ」
「あら、名前知ってくれてるなんて嬉しい。でも、私も貴女のこと知ってるのよ? ね、黒薔薇の桂月さん?」
シャクナゲの言葉に、思わず顔をしかめてしまう。
その呼び名は嫌いだ。
それより
「逃げて」
「…………分かった」
王族の三人が逃げたのを確認しつつ、再びルークレインを狙って放たれた弾丸を弾き飛ばす。
まったく、油断も隙もない。
「ふふ。先ず、貴女から仕留めないといけないみたいね」
「その前に、私が貴女を倒す」
騎士は止めたけれど、それでも、この国は守りたい。
彼のように




