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『Freedom Frontier』  作者: 雪沢 泉
2章.“battle of the Imperial City ”
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2━9.襲撃者その1━━ mercenary of dark


王都襲撃者その1です






■中央噴水広場■











今、王都は混乱に陥っていた。


王都の三ヶ所で、突如として異邦人(プレイヤー)による暴動が起こったからだ。



ここ、中央噴水広場では、禍々しい装備に身を包んだ集団が、住民を次々と捕まえ、建物を破壊するなど、好き放題していた。



「ハハハハハ! 最高だなァ!」


「本当ですね。報酬も美味しいですし、何より好き放題出来るってのが」



中央噴水広場にいるのは、ガルガンシア所属の、《超暗黒傭兵団》と呼ばれるクランであり、極悪非道の限りを尽くすことで有名なクランだ。


今回は、ファルノートの王都で適当に、好きなように暴れまわってくれという依頼を二つ返事で受けて、この場所に来ていた。



「骸王さん! そろそろお楽しみいいですか?」


「おう。そうだなァ……」


「ひっ」



一通り周囲の住民を捕まえた《超暗黒傭兵団》のメンバーは、クランマスターの骸王とともに、捕まえた中の女性達のグループに、いやらしい笑みを浮かべながら近づいていった。


最早、彼らを止められる者はいないと、住民達が絶望した時………



「━━━ぁ?」


「なにっ!?」



《超暗黒傭兵団》のメンバーの一人が、頭を何かに撃ち抜かれ、光の粒子になって消えた。


それを見た他のメンバーが、直ぐ様辺りを見渡すと、いつの間にか多くのプレイヤーが集まっていることに気がついた。



「いつの間に………」


「【気配察知】スキルが仕事してねぇ!」



《超暗黒傭兵団》のメンバーは、直ぐ様武器を構えて、戦闘態勢をとるが、相手がなかなか攻撃をしてこないのに気がついた。


メンバー達が首を傾げるなか、クランマスターの骸王だけは笑みを浮かべて叫んだ。



「てめェらァ! 動いたらこいつらを殺すぜェ?」



そう言って、捕まえた住民の一人に武器を突き付け、よりいっそう笑みを深くする骸王。


彼らを囲んだプレイヤー達は、それを聞いて怒り、何人かは卑怯だと罵倒し始めた。



「ハハハハハ! 卑怯上等! 俺達は失うもんなんてねェからなァ!」


「帝国のプレイヤーは噂通り低俗な者ばかりのようだな」


「ああん? てめェ、自分の立場が分かってるのか?」



ローブを着た男性プレイヤーの言葉に、骸王が顔を歪ませて住民を持ち上げ、手に持った剣を首筋に当てた。


それを見たローブの男は、フッと笑って手を上げた。



「なっ!?」



それが合図だったのか、《超暗黒傭兵団》が捕まえていた住民全てが、木で出来た人のカタチをした人形に変わった。



「住民は既にその人形と取り替えてある。我がクランは貴様らのような攻撃職しかいない攻撃特化ではなく、ありとあらゆる局面に対処出来るように、プロフェッショナルが集まっているのだ」



ローブの男が、自慢気に堂々と語り、それを聞いた骸王が苦虫を噛み潰したような表情になる。


ちなみに、ローブ男の言葉を聞いたプレイヤーの一人が、「いや、クランマスターが適当に募集かけた結果、勝手に色んな職集まっただけなんだけど………」と呟いたが、ローブの男や《超暗黒傭兵団》には聞こえなかったようだ。



「我らはファルノート一のクラン、《黄昏の灰トワイライト・アッシュ》! 貴様らは我々が排除する。助かりたいなら、今すぐ全力で逃げるんだな」



ローブの男………その正体は《黄昏の灰》のクランマスター、グレイマンの右腕の銀海であり、賢者の職に就く、魔法のエキスパートである。


そして、今この中央噴水広場にいるのは、霧羽からの情報を聞き、王都に散らばるプレイヤーからの情報網によって直ぐ様駆けつけた、クラン《黄昏の灰》のメンバーの一部である。



「ほう。お前らが《黄昏の灰》か………しかしいいのか? 王都には他の奴らも来てるんだぜェ?」


「ふっ。貴様は情報収集能力があまりないようだな、住民の避難はファルノートのクラン総出で行っている。それに………」



銀海が指差す貴族街のほうでは、先ほどまで上空を飛んでいた飛行系のモンスターが姿を消しており、かわりに炎や雷、光などの乱舞が空中に飛んで弾けていた。



「んなッ!?………」


「貴族街のほうのモンスターは、クラン《虹薔薇の騎士団》が対処している。さらに……」



続いて、銀海が指差したほうでは、先ほどまで王都中を駆け巡っていた白い閃光が、一ヶ所を執拗に攻撃しているのが、遠目でも分かった。



「あれは………馬鹿な、まさか、まさか! “八無刀”かッ!」


「その通りだ。さぁ、理解出来たのなら、そろそろ始めようか?」



銀海は自身の頭上に巨大な火の球を出すと、それを《超暗黒傭兵団》に向かって、放った。


メンバーは直ぐ様その場から離れたが、避け遅れた数人が、火に飲まれて一瞬で灰になった。



「全員! 一人残らず倒せ!」


「てめェらァ! 全員ぶっ殺しちまェ!」



《超暗黒傭兵団》、《黄昏の灰》、ファルノートとガルガンシアの二つのクランが、正面からぶつかり合い、戦闘を開始した。


いや、この場には一人足らない。



「よォ、そこの奴………クランマスターはどうしたァ?」


「…………」



(おっと、意外と頭は回るのか? クランマスターはまだログインしてないなんて、言うわけないだろうが)



そう、《黄昏の灰》のクランマスターにして、“黒轟”の異名を持つ、ファルノートのプレイヤーでも三本の指に入る強者、グレイマンは今日はまだログインしていなかった。



「どうやらいねェみてェだが、まさかまだログインしていなとかァ?」


「………」



骸王の問いには答えずに、銀海は発動させる魔法の準備をし始めた。



「まぁいいかァ、噂の奴がいねェんなら、さっさと終わらせちまうかァ! 『解放』!」



骸王の言葉に反応して、骸王の装備が変形し禍々しい見た目から、漆黒の近未来型の鎧に変化した。



「………それが、ガルガンシアの『機械武装(マシン・アーマー)』か」


「いんや、こいつはそこに魔法技術を練り込み強化した、『魔導機械武装マギ・マシン・アーマー』だァ!」



骸王はそう言うと、目にも止まらぬ速度で移動し、銀海を守るように盾を構えていたプレイヤーの一人を、一瞬で消し飛ばした。


それを見た銀海が、魔法を発動させようとした時、王都が大きく揺れ、轟音とともに、王都の一角から巨大なナニかが現れた。



「な、なんだ!」


「ハハハハハ! おっと、ついに王都崩壊のアレが来るぞォ」



現れたのは、ガルガンシア所属のプレイヤーが作りだした、城塞破壊を目的とした巨大なモンスターに機械による改造と武装を施した、作られたモンスター


“対城塞兵器No.04 MCTメカニック・カノン・タートル”である。



『皆さーん! 申し訳ありませんが、今から王都を落としまーす! 三分待って上げるので、降伏の準備と死ぬ覚悟をお早めにー!』



拡声器のようなもので大きくされた、絶望の声と言葉。


王都襲撃は、まだ始まったばかりである。





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