2━8.科学的装備
「ヴァイスさん、そのプレイヤーは任せましたよ。僕は王都に潜入してるプレイヤーへの襲撃開始の連絡と、兵器の起動を行うんで」
「山波、本当に喋りすぎなんだけど?」
「素、出かかってますよ?」
「誰のせいだ、誰の」
なんか、王都が襲撃されるそうなので、フレンドに一斉メールで伝えておく。《黄昏の灰》の人達なら、なんとか止めてくれるんじゃないかと思う。
さてと、目の前の奴がどれくらい強いか分からないが、ステータス的には勝っている………ハズ。といっても、ステータスで勝負が決まるほど甘いゲームじゃないそうなので、油断せずに行こうと思います。
とりあえず
「【破壊撃】、【剛】、『氣刃』!」
「うわぁ!?」
「ッ! いきなりか!」
「ちょっと待ってただけでも、ありがたく思ってほしいんだが?」
とりあえず、弱そうなひょろっとした山波という男を狙ったのだが、ヴァイスという人物に受け止められてしまった。
というか、随分とゴツい銃だな、しかも、見た目が年季がかなり入っている風に見える。
「『解放』!」
その言葉と同時に、目の前のヴァイスという人物が光輝く、そしてぶれていなくなった。
「【堅】、『不退転』」
左腕に『不退転』を纏わせて、後方から迫ってきた長い足の一撃を、受け止める。ジャストにはならなかったが、ダメージを減らせたのは良しとして、回し蹴りを放つ。
避けられたか━━━━って
「━━女だったのか」
「それが?」
「いや、別に」
フルフェイスの兜のせいで、顔も見えなかったし、声もくぐもっていたので分からなかったが、切れ長の目をしたショートカットの女性だった。
さっきの『解放』という言葉がトリガーだったのか、重厚そうだった鎧は肌にフィットした近未来的な鎧? 服? のようになっている。
「あれ? もう解放したんですか?」
「出し惜しみしていられない相手のようだからな」
「あらら、それじゃ、僕も急いだほうがいいですね」
駆け足でさって行こうとする山波という人物に、【縮地】でいっきに迫り、蹴りを放つ。しかし、蹴りを放った足に衝撃が走り、山波に当たる前に弾かれてしまう。
「そう易々とやらせると思うか?」
「無理みたいだな」
ヴァイスの銃口がこっちに向いているので、先ほどの衝撃は弾丸が当たったのだろう。
「しかし、徹甲弾を蹴りで破壊するとは、非常識だな」
「銃弾を徹甲弾にするほうが非常識だと思う」
ちょっと心外だったので、言い返したのだが、確かに蹴りで徹甲弾を破壊するほうが非常識だな。うん。まぁ、俺も破格のステータスと、破壊属性があるから破壊出来たと思うので、他の人はなかなか出来ないんじゃないかな?
とにもかくにも、科学と魔法の力を利用したガルガンシアの武器とか装備は、やはり相当厄介みたいだ。欠点も多いそうだが、それでもほぼ誰でも高火力を出せるから脅威だろう。
ロマンだし……
「『ブースト・オン』」
おっと、さらに速度が上がったようだ。といっても、認識出来ないほどではないから、特に問題はないだろう。
その後も、一進一退の攻防を続けていく。
俺は向こうの攻撃を出来るだけ受け止め、受け流していく。受け止めた場合はカウンターを狙い、受け流した場合は隙を見つけての攻撃をしていくのだが、なかなか当たらない。
相手の戦闘方法は、素早さと身軽さを利用した一撃離脱のヒット・アンド・アウェイで、時々銃撃や手榴弾のようなモノでの攻撃を加えてくる。
ダメージはそれほどでもないが、蓄積されれば不味い。
さて、どうするか
「『廻放』!」
「ッ! 『マジックバリア』展開!」
本当にギミック豊富だな、おい。相手の攻撃のタイミングに合わせて周囲に放った氣は、鎧の表面に現れた半透明の障壁を砕いて終わった。
そろそろ、攻勢に出よう。
「━━━━」
ここだ!
「【剛】、『鋭蹴』!」
「なっ━━くぁ!!」
だいたいのクセやら動きのキレは分かったので、先読みで攻撃を食らわせてみた。にしても、こっちだと現実より楽に出来る気がする。
さて、一撃与えた程度では倒せないとおもうが、装備にヒビが入っているようなので、後三回ぐらい当てれば生身の体に一撃食らわせられるようになると思う。
「━━特注品だぞ? 無茶苦茶な奴だな。しかし、本当に出し惜しみしてる暇は無さそうだな、【チャージ】」
ヴァイスがそう言うと、右手に持っていた銃の銃口が光り出した。
あれかな? 俺の【溜め】スキルと似た感じのスキルかな?
「『イグニス・ショット』」
え? 殆ど時間おいてないけど━━━
そんな事を思いながら、銃撃なんて言葉よりレーザーだとか火炎放射という言葉が似合いそうな攻撃をなんとかしようと考える。
よし、なんとか相殺してみよう。
「【破壊撃】、【剛】、『氣砲』!」
破壊属性をのせた氣の一撃が、相手の大技を吹き飛ばした。
よし、これでなんとか━━━
「『プラズマ・カノン』」
右側からそんな声が聞こえたと思ったら、閃光が周囲を包み、痺れるような激しい痛みと轟音とともに、俺の身体が吹き飛ばされた。
「ぐぅ………」
ヤバイな、先ほどの戦いでのダメージの蓄積に加え、忘れていたが治りきってない左腕を戦闘に使い過ぎたことによるダメージ、それに先ほどの大技の直撃………
これはガチでヤバイな。
そして、何かの動く音と振動に首を動かすと、例の亀の兵器が動いていた。
不味い!
「ポーションを………」
「━━━やらせると思うか? 『バースト・クラスター』」
ポーションを使おうとした俺に、銃から放たれた弾丸が直撃し、幾つもの爆発を起こした。
そして、視界の隅にある俺のHPゲージは0になった。
「お疲れ様です」
「連絡はしたのか?」
「えぇ、勿論。さて、それじゃあ王都を破壊しましょうか」
「━━━何?」
「あぁ、すいません嘘つきました」
「………それは、私を敵に回すということか?」
「いやですね、ヴァイスさんの意に沿わないことはしませんよ。上からもそう言われてますから」
「………私は、最悪の事態にならないように立ち回る。文句はないな?」
「えぇ、勿論ですよ」
次回は、王都のほうになります
 




