2━6.忍ぶ者
桂月視点です
千夜とゲームデート………なのかな?
まぁ、デートだと思えばデートだから、良しとしよう。
でも、今は一緒にいない。
早く合流したいから、さっさと屋敷にいる怪しい奴をどうにかしよう。
千夜には話してないけど、『極翔龍・空鏡天眼』で見てみた結果、屋敷内には屋敷中を見回っているプレイヤーが四人、一ヶ所に二十人ほど、地下には百人ぐらいいる。
しかも、プレイヤー全員、所属がガルガンシアになっている。
まぁ、一人全然違う人いるけど
とりあえず、潜入するための準備。
人のいない場所に移動し、スキルを発動させる。
「【気配消失】、【光学迷彩】、【消臭】、【消音】、【視線拒絶】、【自動隠蔽】」
潜入は得意。
盗賊系、忍系、その他隠蔽に特化した職業についたり、隠蔽系スキルを沢山持っているので、人に気づかれずに行動するのは得意。
「【影潜り】、【影渡り】」
影に入り込むスキルと、影から影へ移動するスキルを利用して、屋敷に素早く、かつ、気づかれずに入り込む。
さて、とりあえず、一人二人始末しておこう。
「おい、もう一人はまだ出ないのか?」
「幽霊系は平気らしい」
見つけた。
素早く倒すために、先日手にいれたあの武器を使おう。
『暗殺兎の死狩刀』
私意外に認識されないこの短刀を、首、心臓なんかの弱点部員に当てることで、耐性系、無効系のスキルやら称号なんかを無視して、相手を即死できる凄い武器。
気に入ってるんだけど、他の場所に当ててもダメージを与えられないのが難点。
しかも、一日三時間を越えて使用出来ないから、ここぞって時しか使えない。
「じゃ、どうする?」
「計画はもう最終段階だから、倒してもいいんじゃないか?」
「だな、そうしよう」
「それじゃ、連絡するか」
させないよ?
後ろから片方のプレイヤーの心臓を貫き殺す。
「━━━ぁ?」
「どうし━━」
もう一人は、振り向いた所を首を撫でるように斬って殺す。
さて、見回っているのはあと二人だけど、流石に怪しまれる可能性があるから、一ヶ所に集まっている二十人のほうに行こう。
屋敷を最短ルートで、音もたてずに移動する。
ここかな? 扉を開けないように、【影潜り】と【影渡り】で中に侵入し、気づかれないように天井の隅に移動。聞き耳をたてる。
「ハハハハハ!! にしても、上手くいったなぁ、おい」
「本当だな!」
「ボス、やりましたね!」
「あぁ、帝国の連中はいけすかないが、こんなに美味しい仕事もないしな。あぁ、手を出すなよ」
「少しぐらい、いいんじゃないですかい?」
「駄目だ。連中には、手を出すなと言われてる、守らなかったら、面倒なことになりそうだろ?」
どうやら、あの巨漢の男がボスのようだ。というか、ボスって呼ばれてるし。
それにしても、PKクラン《血濡れの狩人》は、王国のクランだったハズだけど、帝国に鞍替えしたのかな? これで帝国に入れるんだから、PKにとっては最高の国なのかな?
まぁ、どうでもいいことは置いといて………
「へへへ、残念だったな王女サマ、助けは来ないみたいだぜ?」
「んーー!」
「ハハハハハ! いくら叫ぼうとしても、そんなんじゃ意味ねぇし、こんなところに助けに来る奴もいねぇからなぁ!」
部屋の男達が笑う。
この部屋には、何故かこの国の第四王女がいる。
猿轡をされてるし、誘拐されたのかな?
助けよう。
千夜に事情を話す。
『ふんふん。成る程な………あ、地下にいる最高レベルのプレイヤーはどのくらいの強さだ?』
『レベル548』
『魔法系で一番レベルが高いのは?』
『403。それが?』
『じゃ、地下のほうはなんとかするよ』
なんとかって? と、聞こうと思ったらフレンドトークを切られて、次の瞬間轟音とともに屋敷が揺れた。
「な、何が起こった!?」
「襲撃かっ!?」
「ボス! 屋敷に入り込んでた奴が、床を破壊して地下に侵入しやした!」
「なにっ!?」
『極翔龍・空鏡天眼』で地下を見てみると、PKプレイヤー達をギャグマンガみたいに吹き飛ばしてる千夜が見えた。
………とりあえず、千夜のほうは大丈夫そうだけど、さっさと王女様を助けて応援に行こう。
「水、風、複合……『霧遁:濃霧吐息』」
“水遁”と“風遁”の複合である、“霧遁”を使って、口から霧を吐き出して、部屋の中を満たす。
「なんだこれは!?」
「煙幕かっ!?」
驚いてる。驚いてる。いい感じ
「忍法『霧隠れ』」
霧に紛れて、一人づつ確実に倒していく。
「━━ぁ?」
「ぐぁっ!?」
「ぁぐ━━」
「なんだ! どうした!?」
だいたい倒した所で、ボスと呼ばれた男が斧を薙いで広範囲技を出してきたので、天井を利用した三角飛びで避けつつ、忍法『影分身』で、分身をボスと呼ばれた男の前に出しておく。
「ん? 女か? なかなかやるようだが、終わりだ!」
残っていたプレイヤー達によって、“影分身”が捕らえられる。
「へへへ、ボス! こいつは好きにしていいんですよね?」
「まあまて、俺も参加する」
影分身を取り囲んで騒ぐPK達を無視して、最終準備を終わらせる。
よし
「『火遁:分身大爆発』!」
私の言葉を起点に、分身が大爆発を起こす。
ちなみに、PK達の周りに『闇遁:黒蝕結界』を張っておいたので、周囲には被害は無い。
「んー? んーー!!」
王女様の猿轡を取って、縛られていた手足もほどく。
「ぷはっ! 助かったー!!」
「ん」
「ありがとう! 私は、ファルノートの第四王女、リュエーナ=ファルノート!」
「桂月」
「そっか、じゃあ桂月! お礼をするから、私をお城までおくって!」
その前に行く所がある。
王女様を抱えて、千夜が空けた穴から地下に入り込む。
怖がるかと思ってたけど、大きな声てはしゃいでいた。
「あれ? ここどこ?」
「……さぁ?」
地下に降りたのはいいけど、千夜の姿も見えない。まぁ、探そう。
私は、王女様の手をひいて、千夜と合流するために地下を歩きだした。
次回は、千夜視点に戻ります




