2━4.騎士と訳あり
ファノからファルノートまでのモンスターを、二人で瞬殺しながら進む。
道中、桂月が腕を振るっただけでモンスターを倒した時は、驚いた。何をやったか聞いたら、短く「武器」と答えられた。しかし、桂月なんも武器持ってなかったけど?
そんな疑問が浮かびつつも、順調に進んでファルノートにたどり着いた。
「着いたな」
「そうだね」
二人で人の多い街中を、ギルドに向けて歩く。
と、人だかりが出来ているのが見えた。
「なんだ?」
「さぁ?」
桂月と首をかしげながら人だかりの方に行き、隙間から見てみると、金属鎧を着た女性プレイヤー達が歩いていた。
見ている人達は殆ど女性で、プレイヤー住人半々くらいかな? 黄色い悲鳴をあげたり、手を振ったりしている。金属鎧の女性プレイヤーの何人かは、愛想よく手を振っている。
「なんなんだろうな………桂月?」
「………」
桂月は、何故か少し暗い顔をしている。いったいどうしたんだ?
どうしたのか聞こうとした時、知っている人がやって来た。
「よぉー! 千夜くんも見学しに来たんか? そっちは妹さんやろ」
「どうも神坂さん。桂月は友達です」
「ふーん。友達ねぇ……」
神坂さんは、俺と桂月を何度か見た後、「分からんなぁ」と言って首をかしげた。なんでだ?
しかし、神坂さんはこの騒ぎについて知っているようなので、聞いてみた。すると……
「なんや、知らんかったんか? 見てみぃ、メインメンバーが来たで」
神坂さんの指差すほうを見てみると、先ほどより自由な感じの装備を着た女性プレイヤー達が来た。すると、見物人の女性達がさらに黄色い悲鳴を上げる。
「あれが、《虹薔薇の騎士団》の幹部連中で、“七色騎士”呼ばれてる連中や。そして………」
耳がキーンと成る程の歓声がした。
何が起こったのかは、神坂さんの指差したほうを見て分かった。
銀色の髪をした女性騎士。その歩みは堂々としており、周りの女性達には目もくれずに進んで行く。
「ん?」
よく見てみると、鎧に銀色の薔薇が刻み込まれている。なんか、桂月のものと似ているような……
ま、一先ず置いておこう。
さて、最後に来て、この歓声、それに《虹薔薇の騎士団》ということは……
「あの綺麗な人が、“氷麗の騎士”ネルや」
「へぇ、あの人が……」
これで、後会ってないこの国の主戦力は華天って人だけだな。
さてさて、桂月のオーラがだんだん暗くなってきたので、神坂さんに別れを告げてギルドに向かう。
道中、桂月の口数はいつもより少なかったが、ギルドに近づいてくると、いつも通りになったので、一安心。
そうこうしているうちにギルドに着いたので、よさげな依頼を探す。
「………Fが仇になるとはっ!」
受けられる依頼が優しすぎるんですが………
薬草集め、スライム、ゴブリン討伐は基本として、清掃の手伝いや、荷運び、猫探しなんてのもあるんですけど………
くそっ! なんでだ! Aにはドラゴン討伐とかあるのに!
一人沈んでいると、くいくいと服を引っ張られた。
「これ」
「ん? なになに……幽霊屋敷の調査?」
桂月が持ってきたのは、街の外れにある屋敷に幽霊が出るそうなので、それの調査らしい。
うん。なかなか面白そうだ。
依頼を受注し、さっそく向かおうとすると……
「あー、やっと終わらせられるー」
「橙薔薇、もう少し━━」
「はいはい、緑薔薇。もう少し《虹薔薇の騎士団》らしくしろっていうんでしょ? けど、それじゃあ私らしくないしさー、ね! ネル姉」
「………」
ギルドに入ってきたのは、オレンジ色の髪をサイドアップにした元気いっぱいという感じの少女と、緑色の髪を編み込んだクール系の少女、それにネルという騎士。
というか………
「………」
「………」
そのネルと桂月が、目を合わせたり、逸らしたりしている。
向こうの少女二人は、それをそわそわと落ち着きなく見ている。
やがて、桂月が俺の手を取って、騎士三人をスルーしてギルドから出た。
暫く歩くと、桂月が手を離したので、地図で場所を確認。
「東の方にあるみたいだな、よし、行こう」
歩き出すが、桂月は下を向いて立ち止まって動かない。
「どうした?」
「………なんで何も聞かないの?」
「話したくなさそうなことを無理に聞いたりしない。話したくなったら話せばいい」
無理に話させて、こっちもそっちも暗くなったり、辛くなったりしたら嫌だからな。
「ありがと」
「いいって、いいって、それより幽霊屋敷行こう」
俺がそう言うと、桂月もやっと明るい表情になった。
よし! 幽霊捜索と行きますか!
◇
■三人の女性騎士■
ギルドに依頼達成の報告をしたので、私達はクランホームに戻ることにした。そして、私はかなり落ち込んでいる。
はぁ、また駄目だった。
どうにも上手くいかない、最初の時の自分に戻って来てほしい………
「また駄目だったね~」
「がはっ!?」
オレンジの言葉が私の心に突き刺さる。
「オレンジ! こういう時は本当のことは言わずに、そっとしておくほうが」
「ぐふっ!」
グリーンの言葉が、追い討ちをかけてきた。
うぅ。これだから私という奴は……何が“氷麗の騎士”だ。ただのヘタレだ、私は
「っていうか、桂月さん男の人と一緒だったね」
「………え?」
ペノの言葉に、記憶を巻き戻す。
そういえば、桂月に手を引かれて一緒に出ていった灰色髪の男がいたような………
とりあえず、腰の細剣を抜き放つ。
「ちょっと、ネル姉! 何処に行くのかな!?」
「待ってくださいネルさん!」
「待たん! 絶対殺す!」
桂月に近づく男は、即殺す!
「桂月さんに嫌われるかもだよ!」
う。
ペノの言葉に、力が緩む。
くそう! 桂月に近づく男は殺したいが、桂月に嫌われたくない!
「どうすればいいんだぁぁぁぁぁ!!!」
街中に、私の絶叫が空しく響いた。
“七色騎士”メンバーの性格と、花言葉を似せたいですが、自信が無いので合ってなかったらすいません




