2━1.妹とその友達
「一つください」
「105Eになります」
「はい」
「毎度ありっ!」
現在俺は、屋台で焼き鳥を売っている。
隣には、たこ焼き屋とドーナツ屋。そして、たこ焼き屋の隣に焼きそば屋。
はい、この四つが今の屋台です
「千夜くん。ボクにも一つ」
「あ、俺も」
「私もー!」
「………105Eになります」
けちーと言う屋台メンバーを無視して、金を払うまで待つ。
何故か、金額分の各屋台で売っている物を渡されたので、こちらも焼き鳥を渡す。
「かぁー! うまいわー! 千夜くん、千夜くん、そろそろボクに作り方、教えてくれてもええやろ?」
「ダメです」
隣のたこ焼き屋には、胡散臭い顔をした糸目の青年の見た目の、神坂さん。ちなみに、自称大阪出身。
自称なのは、本当は大阪が好きな関東の人で、「もしかしたら訛りが間違ってるかもしれないけど、気にせんといて!」と言っていたからだ。
「くぅー! うまい! 千夜ビール!」
「ないです」
焼きそば屋台をやっている、モロコシさん。簡単に言うと、おっさん。
誰がなんと言おうと、おっさん。
「美味しいー。甘いものが一番だけど、千夜くんの焼き鳥はたこ焼き、焼きそばを凌駕するね!」
「ありがとうございます」
ドーナツ屋台を開いているのは、三つ編みにそばかす、バンダナを着けてとエプロンをしたアリーさん。
ヨーロッパ出身で、甘い物ならだいたい作れる。ドーナツ屋台だけれど、たまにチュロスやらジェラートやらが並んでいる時がある。
「ひどいわー! ボクの作ったたこ焼きなんかな! 本番でならったんやで? 焼き鳥には負けんわ!」
「俺だってなぁ!…………あ、趣味だったわ」
「趣味なんかぁーい! 知っとったけどな」
神坂さんとモロコシさんは、よくこんなやり取りをする。そして、アリーさんはそれをスルー。
道行く人たちは、またやってるよという表情。
あ、最近の日常だが、ログインして直ぐに大きな石を背負って、王都の外壁を千周する。
やり始めた当初は、プレイヤー住民とわず引かれたが、最近ではとある有名クランのクランマスターや、ムキムキ鍛冶師やら、ムキムキ武闘家やらな人達も一緒に走っている。
「塵も積もれば山となる、だ」
とか言っていた。
さて、修行したり、屋台をやったり、狩りをしたり、薬草採集をしたりしている最近だが、我が妹の茗がこのゲームに参戦したということで、王都の中央の噴水広場にいる。
霧羽と一緒に
「なんで俺も?」
「まぁまぁ、いいだろ? 今日は暇だって聞いたぞ?」
「まぁ、そうだけど………」
妹の茗は、友達三人と一緒に少し前からこのゲームをやり始め、寄り道をしていて来る予定だった日より大分過ぎて………今日、今から来るらしい。
そして、霧羽を呼んだ理由だが、澪ちゃんも茗と一緒だからだ。
「それにしても、千夜の妹か………」
「なんだ?」
「いや、なんの職業選択したのか気になってな」
「“画家”ですよ」
「うおっ!?」
突然後ろから話しかけて来たのは、ベレー帽に白と黒の可愛らしい衣装を着た、銀髪ツインテールの美少女がいた。右手にはGペン、左手にはスケッチブックを持っている。
霧羽はかなり驚いているが、俺はなんとなく気づいていたので驚いていない。
しかし、画家なんてあったか?
「ハズレ職業を選択するなんて………流石茗ちゃん?」
「ちっちっち。職業に画家があったから、漫画家になるかもと思って。後悔するより使える方法を探す!」
「だよな」
「何そのトンでも理論……」
霧羽が戦慄しているが、そんなことをしている暇はないぞ、茗の友達は濃い人物が多い。
ほら、来たぞ。
「遅れて申し訳ありません」
丁寧に腰を折って謝る艶やかな黒髪ロングに、十二単のような着物を着ているのは、おそらく澪ちゃんだろう。周りの男達の目線を独占している。
「フフフフフフ」
そして、澪ちゃんとは違う意味で目立ってる人が……
含み笑いを続けるフード付き黒マントで、フードを目深に被って顔が見えないのは、引きこもりの翠ちゃんだろう。人に話しかけられたくないからといって、その不審者まがいの格好はどうなのか………
「千夜さん! 千夜さん! そのカッコいいコートもっとよく見せてください! とっても、とっても、興味深いです!」
ちっちゃな身体に、純白のワンピースを着てぴょんぴょん跳び跳ねているのは、小学生によく間違えられる宮ちゃんだろう。ちなみに、裁縫が得意で、衣装をよく作っている。何の衣装かは察してくれ。
「よし! それじゃあ、自己紹介だね! 私はメイリ!」
「シンリです」
「フフフフフフ………ニコ………」
「あっ! チーネです!」
茗は、メイリ。澪ちゃんは、シンリ。翠ちゃんは、ニコ。宮ちゃんは、チーネ。
「ふっふっふ。この四人で、この世界に二次元の素晴らしさを伝えるのだ!」
「頑張りましょう!」
「フフフフフフ………そろそろこもれるところ行かない?(震え声)」
「このコートどこで手にいれたんですか?」
なんというか、相変わらずのメンバーだな。しかし、一部だけだったのは良かった。妹の濃い友達はもっといる。全員来たら、かなりカオスなことになっていただろう。
とりあえず、その場の全員でフレンド登録を済ませ、本日は解散。また機会があれば一緒にクエスト行ったりしよう。ということになった。
そういえば、画家ってどうやって戦うんだ?
初期職業の中には、ネタ職業っぽいのもあります。いずれ化けますけどね




