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『Freedom Frontier』  作者: 雪沢 泉
1章.“死狩兎の踊る森”
22/45

1━17.皇帝の影そして………






皇帝と覇王の戦いの外側


数多くのプレイヤーが、皇帝と覇王の戦いの場に向かっていた。



「なかなかの強さのユニーク個体らしいな」


「俺、ユニーク個体に会うの初めてだわ」


「俺も、俺も」



既に兎達によって、デスペナルティになったプレイヤーが、掲示板に書き込んだり、フレンドに知らせたことにより、騎士王国所属のプレイヤー達が、ユニーク個体の撃破のために森に入っていた。


その殆どが、レベル200超えであり、手練れが多かった。



「にしても、こんだけプレイヤーがいるのに、“黒轟”も見ないし、“氷麗の騎士”っていうか《虹薔薇の騎士団》の団員も見かけないな」


「まぁ、なんか忙しいんじゃないのか? “八無刀”は来てるかもしれないけど」


「まぁ、“八無刀”はいても分かんないけどな」



プレイヤー達が話しているように、この場にファルノート内のプレイヤー最強と名高い者の姿はない。


さて、三人の強者だが……それぞれ独自の理由でここに来ていなかった。


“黒轟”グレイマンは、手にはいる武器や防具、アイテム等は自分に合わないだろうと判断し、別の場所に向かった。


“氷麗の騎士”ネルは、王都から遠く離れた場所にメンバーと行っていたので、間に合わないと判断し無視。


“八無刀”華天は…………



とにもかくにも、この場にはファルノート所属(・・・・・・・・)の強者はいなかった。



「…………」



そんなプレイヤー達だが、知り合いでもない者達が大多数を占めており、互いに牽制しながらユニーク個体を探していた。


そのため、気づくのに遅れたのだ。



「━━━ぁ?」


「━━━ぇ?」



また二人、デスペナルティになった。


気づくことなく、ただの一撃で倒されていくプレイヤー達。


彼らは決して弱くはない。


しかし、今回は相手が悪かった。



「…………キュイ」



皇帝を守る近衛兵最強にして、暗殺者の力もあわせ持つのは、【影ノ暗殺近衛兎 ヴォーパル・シャドウ】


彼を捉えるのは至難の技である。


【襲撃近衛兎 ヴォーパル・アセイラント】の保有する能力、【気配消失】を持ち


【追跡近衛兎 ヴォーパル・チェイサー】の保有する能力、【姿形消失】を持ち


そして、対象を一撃で殺すことのできる、皇帝の力を具現化させた能力を持っている。



【死狩刀】



【ヴォーパル・シャドウ】にしか認識出来ない漆黒の短刀は、心の臓、首、頭、等の急所に当てることにより、ありとあらゆる防御系、耐性系の能力を無効化して、即死させることができる。


どのように守ろうとも、当たってしまえばどんな強者でも倒せるという、凶悪なスキルである。



「キュイ」



【ヴォーパル・シャドウ】は、皇帝の影であり、皇帝を崇拝する、最も忠誠心のある近衛兵である。


彼は、皇帝の望みを叶えるために、皇帝の元へ向かおうとするプレイヤー達を、次々と倒していく。


たとえ、皇帝が負けるとしても………



「………キュイ」



皇帝の影として、ただただ敵を倒していく。


そして、遂に目に見える範囲の敵は全て倒した【ヴォーパル・シャドウ】は、皇帝の戦いを見届けるために、皇帝の元へと急ごうとし━━



「ッ!? キュイ!」



━━突如自身に向けて放たれた何かを回避する。


地面に刺さったのは、不思議な形状をしたナイフのようなもの。


この場に、日本人がいれば、おそらくこう言っただろう。



クナイ………と



「キュイ………」



【ヴォーパル・シャドウ】は警戒する。


何故なら、自身へと向けて寸分の狂いもなく放たれたその武器には、本当にギリギリで気づいたからだ。


その武器が飛来した方向は分かるが、放った人物はもうその場に居ないであろうことは分かる。


殺気すら感じさせない見えない相手は、どうやら自身と同じような部類であることは分かる。


しかし、それでも自身の居場所を見抜いた術が分からない。


姿も無く、気配すら無い自身を、いったいぜんたいどうやって捉えたというのか………



「キュイ」



再び飛んできた武器をひょいっと避けるが、【死線感知】に反応が合ったため、直ぐ様その場から全力で離れる。



「『火遁:雷炎爆符』、解放」



直後、何処からともなく聞こえてきた、鈴を転がすような声に呼応するように、武器が大爆発を起こした。


【ヴォーパル・シャドウ】は、歯噛みをした。


相手は自分の居場所を認識しているのに、自分は相手の居場所どころか、姿すら発見できていないのだ。



「『風遁:鎌鼬之陣』」


「キュイ!?」



今度は、『ヒュウッ』という音とともに、周囲の木々や草花が切り刻まれる。


不可視の暴れる刃を上手い具合に回避して、安全な場所まで逃げた。



「『火遁:鳳千火』」


「キュイィィィィィ」



次に来たのは、火の玉の雨だった。


それを避けながら、火の玉の飛んできている場所に向かっていく。何故なら、その場所に自身を追い詰める危険な存在がいるハズだから


火の玉を回避しきり、その場所にたどり着いたら、そこには何もいなかった。



「キュイ?」


「『火遁:雷炎爆符』、解放」



再び聞こえた、終わりを呼ぶ声。


【ヴォーパル・シャドウ】は、【死線感知】の反応に従い、その場所から全力を発揮して、逃げる。


しかし、回避行動をとった瞬間、先ほどまでいた場所から幾つもの爆発が起き、その衝撃を受けて【ヴォーパル・シャドウ】は吹き飛ばされた。



「キュイィィィィィ」



吹き飛ばされた場所から、直ぐ様立ち上がろうとした【ヴォーパル・シャドウ】だったが、身体が動かないことに気づいた。


意思の力を振り絞って、辺りを見渡すと、自身の後ろの地面に、先ほど飛んできた武器が地面に突き刺さっていた。



自身の影(・・・・)に突き刺さっていた。



「忍法、『影縫』」



木々の間から現れたのは、一人の少女だった。


黒い揃いの上下の衣服に、胸の部分だけを覆っている銀色の軽鎧を着ていた。その軽鎧には、逆さまになった、茎や棘の部分まで真っ黒な薔薇が刻み込まれていた。


そして、右手には、光を吸い込むような漆黒の刀身をした短刀を持っていた。


そして、特徴的なのはその右目。片方しかない眼鏡のレンズのようなものが、右目の前に浮かんでいた。



「キュイィィィィィ」



少女が、自身を殺そうとしているのは明白だった。


動けない自身を殺すのは簡単だろう。


だから、その隙を逃さない。


背中から氣を全力放出して、自身の影に突き刺さっていたクナイを吹き飛ばし、自由になったその身体のまま、少女に飛びかかり、その心臓部分に、【死狩刀】を突き刺した。


霞みのように消える(・・・・・・・・・)少女の身体。



「キュイ」



再び、皇帝の元に向かおうとした【ヴォーパル・シャドウ】だったが、脳天から何かに身体を貫かれた。


消えていく意識の中、【ヴォーパル・シャドウ】が最後に聞いたのは………



「忍法『空蝉』………さよなら」



鈴を転がすような、少女の淡々とした声だった。







【死狩刀】



【空前絶後の生還者】、『肩代わりのペンダント』は無効化しますが、【瀕死覚醒】のような死んだ後に効果を発揮する、復活系は無効化できません。



そして、騎士の国に忍者ですよ




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