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『Freedom Frontier』  作者: 雪沢 泉
1章.“死狩兎の踊る森”
21/45

1━16.【死狩帝兎】






【死狩帝兎 ヴォーパル・カイザー】



かのユニーク個体は、“機会帝国 ガルガンシア”にて誕生したユニーク個体である。


生まれながらにして、4体の近衛兵を従え、その力を持ってして、数多くのプレイヤーと住人達を倒してきた。



自身の強さを証明するために、ただひたすらに進んできた。


しかし、かの皇帝の前に立てた者は未だにいない。


何故なら、皇帝を倒そうとしたものは、4体の近衛兵に直ぐに倒されてきた。


【襲撃近衛兎】により、死角から一撃で仕留められて、中には殺られたことすら気づかないものもおり


【追跡近衛兎】により、見ることもなく吹き飛ばされて仕留められたものもおり


【叛逆近衛兎】により、正面から殺られたものもおり


そして、皇帝の影(・・・・)により、理解も出来ぬままに殺られたものもいた。



そして、皇帝を見ることができても、皇帝の前に立つことが出来るものはおらず、戦えたものもいなかった。


皇帝の威厳の前には、弱者は抵抗すら許されずに敗北するのである。



「ギュイ」



しかし、今皇帝の目の前にいるものは、弱者であって強者である。


いや、強者である。



「強いな」



皇帝の威厳を受けてなお、当然とばかりに立っている。


皇帝が持つ力が一つ



【処刑ノ厳】



威圧に屈したものに、問答無用の死を与える皇帝の力。


これにより、皇帝以上のレベルのものしか、皇帝と戦えすらしないのである。



「ん? “氣”の通りが悪いな」


「ギュイィィィィィ」


「というか、相殺されてるというか」



さらに、目の前の相手は皇帝の“氣”すら無効化している。


皇帝の“氣”は、当てた相手に一定確率で即死効果を与える、“死氣”である。



「ギュイィィィィィ!!!」



皇帝は歓喜していた。


自身の強さを証明するためなら、自身が全力で戦うことがなくてもいいハズである。ただ、勝ち続ければいいだけであるからだ。


それでも、皇帝は戦いたかった。


自身と同格のものと


自身と全力を出せるものと



弱い相手では、全力を出せないから意味はない。


強すぎる相手には会ったことがなかったが、会ったとしたら全力を出しても簡単に倒されてしまうかもしれない。または、全力を出す前に倒されてしまうかもしれない。


それでは意味がない。


自身が行いたいのは、自身が命を燃やして戦うことが出来る、真なる勝負である。


ただの殺戮でも、作業のような大量虐殺でもない。



「ギュイィィィィィ!!!」


「しっ!」


「ギュ!」


「はぁっ!」


「ギュボ!?」



拳と拳を、脚と脚を、力と力を交わしあい、吹きすさぶ血風の中で、無言の会話を行いたかった。ただひたすらに、自身の全力を出して戦ってみたかった。



「ギュイィィィィィ!! (『死狩嵐』)」


「うぉ!?」



周囲の木々を薙ぎ倒しながら、高速回転により、自身が竜巻となって、暴風を纏って嵐を起こして相手に突撃する。



「ふぅ…………【破壊撃】、【螺旋】、『廻放』」



しかし、相手はその場で力を収束させた回転攻撃を放つ。


回転方向の違う両者がぶつかり合い、不協和音を奏でる。



(………『竜の爪撃(ドラゴン・クロー)』)



均衡を破ったのは、相手のほうだった。


右手から放たれたのは、三つの斬撃。


皇帝は、竜の爪を、竜の手を、竜の力を幻視した。



「ギュイィィ?」


「よし、成功だな」



さらに皇帝は幻視する。


相手の背後に、竜の姿を


大きくはないが、その内には強大な力を宿し、その瞳はただただ前を真っ直ぐ見ていた。



「ギュイィィィィ(こいつはなんだ? いや、何者なんだ?)」



前に戦ったことのある連中とは少し違う。


どこか強大な力を感じさせる衣服に、素手に素足。


その瞳には、恐怖も、愉悦も、怒りも感じない。


ただただ、自分を見ていた。


どうやら、自分を倒すための方法を考えているようだ。



『……名は……』


「ん?」


『……名はなんという?』


「………千夜……“覇王”千夜だ」


『………そうか、我が名は【死狩帝兎 ヴォーパル・カイザー】、さぁ、死力を尽くそうぞ』


「おう!」



こうして、覇王と皇帝の戦いが始まった。



「…………」



そして、それを影より見る者が一人。


皇帝が影にして、最後の近衛兵


近衛にして、暗殺者。


誰も姿を見たことがない、静かなる殺戮者。



【影ノ暗殺近衛兎 ヴォーパル・シャドウ】



今、静寂に生きる近衛兎の暗殺が開始される。






次回は、皇帝じゃない兎です。そして………ふふふ

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