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『Freedom Frontier』  作者: 雪沢 泉
1章.“死狩兎の踊る森”
16/45

1━11.【追跡近衛兎】


今度は、追跡兎との戦いの前です






「うーん。スライムとの戦い方、戦い方」



その少年は、森の中を歩きながらうんうん唸っていた。


顔は平凡より少し上、タレがちな目に、スッと通った鼻筋。口は固く引き結ばれていて、ひたすらうんうん唸っていた。



「ルイはなんかいい手ある?」


『イチゴ食べたいー』


『ボクは、メロンー』


『きな粉もちー』


「いや、食べたいものじゃなくて」



少年は、肩や頭に乗ったスライム達と会話していた。


他の従魔師(テイマー)や、召喚士(サモナー)でさえ、自ら話すことができるモノ以外とは、深く絆を結んだ状態で【念話】スキルを使うか、【念話】スキルもちのモノで無い限り会話することは出来ない。


では、なぜ少年はスライムと会話ができるのか


答えは、少年のもつスキルにある。



【スライムマスター】



スライムしか使役(テイム)出来なくなるかわりに、ありとあらゆるスライムもしくは、粘性生命体との意志疎通、スライムの能力の大幅強化、好感度絶大、使役枠の限界解除、使役したスライムはHPが0になっても、一日後には復活するようになる。等々……


という、スライムに関してのみ強力な効果を持った称号を持っているのだ。


さらにもう一つスライムに関する称号により、スライムだけでなく自身も強化していた。



【スライムの加護】



物理攻撃に対する高い耐性と、自身を好いているスライムの数だけ能力が上昇するという称号である。



このように、この少年………ディロは、スライムとともにゲームをすることを余儀なくされた。


ちなみにディロは、他の強力といわれるモンスターや幻獣、神獣を使役来なくなるというデメリットはあるが、それでもメリットが大きいので、まぁ、このままでもいいかという気持ちで行動している。



そして現在は、スライムとどう協力して戦うか考えていた。



「うーん………そういえば、千夜さん靴履いてなかったような………」



と、考えるのに疲れてきたディロは、先ほどフレンドになった青年のことをふと思いだし、疑問を浮かべた。


カッコいいコートとズボンを着こなしていたが、特に武器は持っておらず、裸足で歩いていた。なんというか、不思議な雰囲気と、強大な力を内に秘めているような人だったと、のんびり思い出していた。



『そういえば、そうだねー』


『うんうん。覚えてるよー』


『真っ黒ー』


『真っ黒ってほどじゃなかったよー?』


『だねー』


『言われてみればー』



ディロは、のんびりとしたスライム達の会話に多少和みつつ、周囲を警戒しながら進んでいく。とにもかくにも、レベル上げをしなければいけない。


ここの敵には、普通のスライムでは何匹いても勝てないが、称号のお陰で大分強化されているし、スキルでも強化されている、さらに、ディロ自身も魔法をそれなりに使えるので、ここのモンスター程度ならば、ソロでも倒せるのだ。



「三匹とも覚えてる? 狙いは兎だからね、チビ達にも探させてね」


『はーいー』


『任せてよー』


『眠いー』


「リメノ……」



ルイとシモンが元気良く了解したのに対し、リメノはふるふると眠いと答えた。


ちなみに、チビ達とは、なんの戦闘力ももたないスライムの子供達であり、主に隠れながら周囲や大分先の散策を行っている。


ディロの称号は、スライム同士ならばかなりの距離でも念話ができるようになり、さらに【地図】等の一部スキルまで共有されるらしく、沢山の子供スライム達を適当に放している。



ちなみに、スライム達とは意志疎通ができるはできるのだが………



『る~♪ るる~♪ るー』


『たらたららー』


『いすかんだるー』



たまに良く分からないことを口にしたり、変なモノに気をとられて、頼んでいたことを忘れたりするので、万能というわけではない。


というか、間違った情報もきたりするので、注意が必要なほど。



「えーと、兎、兎……えっ!?」



突如として、四方八方から悲鳴が聞こえてきて、ディロは、びくっと身体を震わせて、キョロキョロと辺りを見始める。


悲鳴が一つや二つなら、猪に突進されたのだろうと思うところだろうが、それが幾つかも判別できない数で、四方八方から聞こえてきたとなると、警戒するのは当たり前である。



「な、何?」


『大変、大変ー』


『黒いのが襲ってるってー』


『一匹? 沢山? 分かんないよー』



チビ達から情報を貰ったのだろう三匹が、ディロの上で跳ねたり、ふるふる震えたり、身体をくねくねさせたりして、ディロに伝えたいことを伝えていく。


それを聞きながら、ディロは現状起こっていることを予測する。


黒いユニーク個体が何体か現れて、プレイヤーが襲われているのだろう。と



「とにもかくにも、僕達じゃあユニーク個体なんて倒せるわけないし、逃げるっきゃないね!」


『逃げろー』


『すたこらさっさー』


『あぼーんー』



ディロは直ぐ様逃走を始める。


しかし、ユニーク個体に見つかっては意味がないので、慎重に進んでいく。


すると……



「うわぁ!!」


「た、助けてくれー!」



何人かのプレイヤーが、黒い兎の耳と足が生えた卵の軍団から、逃げ続けていた。



「何あれ?」


『卵ー?』


兎卵(うさたま)だねー』


『兎卵ー、兎卵ー』



シュールな光景にディロとスライム三匹が立ち止まって見ていると、一匹? 一個? の、兎卵がプレイヤーにぶつかり、爆発を起こし、それに巻き込まれた他の兎卵が連鎖爆発を起こした。



「………えぇ………」


『爆弾だねー』


『追跡爆弾だねー』


『兎卵追跡爆弾だねー』



兎卵が、追跡爆弾だと分かったディロが、直ぐにそこから退避しようとした時


パァン! という乾いた音とともに、自身の頭部に衝撃が走った。





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