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『Freedom Frontier』  作者: 雪沢 泉
1章.“死狩兎の踊る森”
14/45

1━9.【襲撃近衛兎】


はい、襲撃兎との戦いの前です






「さぁー! じゃんじゃん狩るわよー!」


「キリカちゃん。皆置いてきちゃったけど、いいの?」


「いいの、いいのっ! ここのモンスターぐらい、私がいれば楽勝よ!」



時は、兎達が出現する少し前に遡る。



“ガナ森林”へとやって来て、レベル上げをしようとした霧羽達のパーティーだったが、レイカを連れてどんどん先へと進んでいくキリカについていけず、霧羽、ロンター、蒼百合ははぐれてしまったのだった。


しかし、それを気にするキリカではなく、ここのモンスターぐらいなら、二人で楽々倒せるだろうとそのままずんずん進んでいる。



そして、レイカはそんなキリカを心配しつつも、歩みを止めずについていく。



元々、後先考えずに進むキリカを心配してついていくレイカというのが、この双子の日常であるが、なんだかんだいい結果に終わるので、霧羽達とはぐれてしまった今の状況も、二人してなんとかなるだろうと思ってしまっている。


結局の所、二人は双子であり、何処かで思考が似ているのだった。



「えっと、兎さんを狙うんだよね?」


「そうよ! 幸運兎(フォーチュンバニー)っていって、普通より多く経験値を落とすの!」


「でも、可愛い兎さんなんだよね?」


「そ、それは忘れるの!」



レイカの鋭い指摘に、あたふたしながらも誤魔化すキリカ。


そう、二人の狙いは幸運兎である。


ちなみに、エンカウント率が低いことを、キリカは完全に忘れている。



「どう? 見える範囲にいる?」


「うーん。いないみたい」



弓士というか、遠距離物理職に必須のスキル、【鷹の目】を使って辺りを見渡すレイカだが、周囲にはモンスターの姿を見ることは出来なかった。


続いて、【気配察知】を発動させたが、此方にもなんの反応もなく、レイカは首を傾げた。



「モンスターが………いない?」


「そうなの? それなら、反応があるまで歩くのよ!」



レイカの言葉を聞いて、キリカは直ぐに歩き出した。


一方のレイカは、結構な察知範囲をもつハズの自分の【気配察知】スキルに、なんの反応もないのがきがかりになっていた。



「キリカちゃん。なんか変だよ、戻ったほうがいいかも……」


「何言ってるのよ。せっかく来たんだから、兎見つけるまで戻らないわよ!」



レイカが周囲の状況に嫌な予感を感じて、キリカに戻らないか相談するが、それを聞かずにずんずん進んでいくキリカ。


レイカは、そんなキリカにため息をつきつつも、仕方がないとついて行く。



そんな時……



森のそこかしこから、悲鳴が聞こえ始めた。



「何っ!?」


「わ、分かんない! 何かあったのかな?」



二人が、突然聞こえてきた悲鳴に周囲を警戒し始める。


周りを見て、とりあえずの脅威がないことを確認すると、キリカはフレンドトークを霧羽達パーティーと繋げる。



『キリカ、レイカ無事か!?』


『大丈夫ですか!?』


『二人とも大丈夫~?』



フレンドトークを繋ぐと、三人から心配する声が聞こえてきた。


蒼百合は、相変わらずの調子だったが



『こっちは二人とも無事。でも、何があったの?』


『分からん! 突然色んな場所から悲鳴が聞こえてきて………ッ!? んなっ!?』


「キリカちゃん!!!」



フレンドトークの途中で、霧羽の声が切羽詰まったものに変わって切れ、キリカに向かってレイカが飛びかかり、押し倒した。



「なに!?」


「こっち!」


「キュイ!」



直ぐに起き上がったレイカが、キリカの手を引っ張ってその場から逃げ出す。



「キリカちゃん! 煙幕とか出せる!?」


「良く分からないけど! 『ファイアボール』乱れ撃ち!」



レイカの言葉に、キリカが直ぐ様周りに『ファイアボール』をやたらめったら適当に撃ち始める。


すると、地面に着弾した火の玉が爆発して、周囲に土煙を出す。



「キリカちゃん! 【気配希釈】使って!」


「分かった!」



土煙の煙幕をはりながら移動し続けた二人は、ちょうどいい草むらに飛び込んで、【気配希釈】を発動させて息を潜める。


レイカが、草の間から外の様子を見始めたのを見て、キリカも同じように外を見始める。



「何があったの?」



キリカが、声を潜めてレイカに尋ねる。


レイカは、顔に緊張感を浮かべながら答えた



「黒い兎さんが、突然キリカちゃんの背後に現れて、襲おうとしたの」


「それで突然押し倒したの」


「うん。多分だけど、霧羽くんや、クランマスターさんが言ってた、ユニーク個体ってモンスターだと思う」


「成る程ね。つまり、この悲鳴はユニーク個体の仕業なの」


「うん。それに、一体だけじゃないみたい」



レイカの言葉に、キリカはため息を吐きながら、ラッキーなのかアンラッキーなのか分からないわね。と、呟いた。


そして、二人はフレンドトークの最後の霧羽の言葉に、もしかしたら霧羽も襲われた可能性があると考えた。



「それにしても、転移能力ってめちゃくちゃね」


「ただの転移じゃないかも……」


「なんで?」


「それなら、他のユニーク個体とか、強いモンスターでも覚えてそうだから」


「そうね。転移に条件があるなら、倒せるかもしれないわね」


「逃げないんだ」


「逃げないわよ。あ、レイカは逃げてもいいわよ?」


「キリカちゃんだけ置いてはいけないよ。分かってるでしょ?」


「えぇ。それじゃあ、なんとかしましょうか!」



草むらから周りをキョロキョロと見渡す黒い兎を見ながら、二人は勝利への作戦を考える。


こうして、双子と襲撃兎の戦いが幕を開けた。





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