1━8.ウサギノ狩リ
ユニーク個体と呼ばれるモンスター達がいる。
それは単体であり、集団であり、大きいモノ、小さいモノ、空を飛ぶモノ、地を潜るモノ、海を泳ぐモノ
見た目は普通のモンスターと変わりなかったり、能力値がレベルより低いものがいるが、総じて共通している部分がある。
唯一無二の能力
似通った能力を持っているモノもいるが、だいたいは他のユニーク個体とは別の特別な能力を持っている。
そんなユニーク個体の出現場所だが、色々ある
出現地域が一ヶ所なモノ、決まった所を周回するモノ、神出鬼没で出現場所が決まっていないモノ等々
今回“ガナ森林”に出現したのは、神出鬼没のユニーク個体である。
さらに、ユニーク個体には推奨レベルというものがあり、その推奨レベルと同等のプレイヤーが戦える強さに設定されている。
そして、今回“ガナ森林”に出現したのは、推奨レベル780が一体。
そして━━
◇
『襲撃兎はアナタの後ろ♪ 今日も首を狩り取った』
とある吟遊詩人の歌の一節である。
「キュイ!」
「━━ぁ?」
その兎は、森の中を縦横無尽に駆けていた、獲物を見つけては、その背後に移動して、頭部を蹴りで吹き飛ばし倒していた。
「キュイ!」
「ッ!? 何処行っ━━ぁ」
次々と、エモノの首を狩っていく黒兎。
その名は
【襲撃近衛兎 ヴォーパル・アセイラント】
対象に気づかれることなく、対象の首を狩りとる皇帝の近衛兵。
そう、対象から気づかれることはないのだ。
「くそっ! なんで【気配察知】に反応がないんだよ!」
「キュイ!」
「うわぁーーー!?」
襲撃の近衛兎は、止まることなく首を狩っていく、首を狩る相手がいなくなるまで━━
◇
『追跡兎をアナタは見れない♪ 今日も身体を消し飛ばした』
とある吟遊詩人の歌の一節である。
「はぁ、はぁ、なんなんだよアレ!」
「知るか! 兎に角逃げろ!」
“ガナ森林”の一角、この周辺にいるプレイヤー達は、あるモノに追われていた。
その全てのプレイヤーが、乾いた音の後に身体に軽い衝撃を受けて、追われることになった。
「!」
「!?!?」
「!!」
「♪!」
プレイヤー達を追うのは、黒い兎の耳と足を生やした、真っ黒な卵だ。
その卵が沢山、沢山、プレイヤー達を追っている。そして、その卵は━━
「なっ!?」
「前からっ!」
プレイヤーに当たると、大爆発を起こし、頭部だけを残して後は消し飛ばした。
これをなすのは、一匹の兎。
プレイヤー達の見えない場所に隠れて、凶悪な追跡爆弾を生み出していく。
その名は
【追跡近衛兎 ヴォーパル・チェイサー】
ターゲットが消えるまで追い続ける爆弾を製造する、皇帝の近衛兵。
「うわぁ!?」
「く、来るなー!」
追跡の近衛兎は、止まることなく爆弾を作り続ける、追うものがいなくなるまで━━
◇
『叛逆兎はアナタの正面♪ 抗い逆らい生き続ける』
とある吟遊詩人の歌の一節である。
「『メガ・スラッシュ』!」
「バカやめ!」
「キュイ!」
「━━ぁ!?」
「━━ぁ」
剣士の男の渾身の一撃を、首につけたマントで受け止めた黒い兎は、そのままマントを振るう。すると、マントから莫大なエネルギーの塊が放たれ、剣士の男と、一緒にいた聖騎士の男を消し飛ばした。
「キュイ………」
我が物顔で歩く黒い兎。
先ほどから一切攻撃することはなく、相手の攻撃を待ち、攻撃してきたところに反撃の一撃を食らわせたり、魔法を跳ね返したりして戦っている。
物理、魔法、ありとあらゆる攻撃を弾き返すマントを持ったその兎の名は
【叛逆近衛兎 ヴォーパル・リべリオン】
皇帝に従わず、ただついていって敵と戦い、己の攻撃の正しさを証明しようとする近衛兵。
止まることはしない。自分が満足するまで
◇
『最後の兎は闇の中♪ 皇帝の影で笑ってる』
とある吟遊詩人の歌の一節であり、神出鬼没の死狩帝兎の最後の近衛兵の、正体を暗示した歌である。
そう、未だに最後の近衛兎だけは、誰も見たことがないのだった。
という訳で、近衛兎の紹介話でした




