1━6.ウサギ?
森の中に出てくるのは、森に出てくるような生き物………
蛇とか、猪とか……
他にはゴブリンとコボルトなんかも出てきた。
「グギャア!」
「ギャギャ!」
「ほい、ほい」
「ギャボ!?」
「ギャボア!?」
ここら辺の奴らなら一撃で終わる。
というか、破壊属性強くないか? 攻撃を当てると、相手がぼろぼろと崩れるというか、砕けるというか、すごいことになる。うん。
「さてと、薬草、薬草」
頼まれていた薬草を探していく。
えーと、確かカヒリ草、マナ草、ユヤノ草、胡蝶花だったか
「とりあえず、鑑定していきますか」
特徴は覚えているのだが、この森の中だと注意深く見なきゃ分からないのだ。これなら、鑑定を発動させて見つけるほうが楽だ。
そういえば、二人は幾つ採取してこいとか、数を指摘してなかったな。まぁ、あるだけ取っていくか。
「薬草、薬草…………ん?」
「………?」
なんか、スライムがいる。
青くてプルプルしているあれですよ。
さて、スライムが出たのだから倒せば? と思うだろうが
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ブルースライム
状態:使役
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使役ということは、誰か主人がいるということだ。
プレイヤーかな?
「ルイー? 何処だーい? ルイー……あ、いたいた」
草むらから出てきたのは、真っ赤なスライムを頭に、緑色のスライムを左肩に乗せている少年だった。
髪は黒の混じった緑色で、瞳は水色をしている。
っていうか、ギルドで他のプレイヤーにパーティーを組んで欲しいとお願いしてた子じゃないか
「あ、どうも」
「どうも。スライムだらけだな」
「アハハハハハ。使役枠が増えたら、勝手に仲間になってまして………仕舞いには【スライムマスター】なんて称号が………」
【スライムマスター】って…………
なんというか、何とも言えないな。しかし……
「あんまり、他のプレイヤーにスキルとか称号のこと話さないほうがいいぞ。中には、利用しようとするプレイヤーがいるからな」
「あっ、そうですよね。ありがとうございます」
「いいよ、いいよ。そういえば、一人なのか?」
従魔師のようだが、パーティーを組んで欲しいとお願いしてたし、無事に組めたのかな?
「スライムだけのテイマーとは皆さん流石に組めないようで………昨日始めたばかりなんですけど、フレンドも一人もいないんですよね」
乾いた笑いを浮かべる少年は、最初のボスの熊はなんとか【回復魔法】を取得していたので、回復職としてパーティーに入って倒せたそうなのだが、本業のテイマーでは全然駄目らしい。
なんというか苦労してるんだな。しかし、将来は面白いことになりそうだ。
「良かったら、俺とフレンドになるか?」
「え!? いいんですか!?」
「あぁ、将来面白いことになりそうだからな」
「え? まぁ、とりあえずありがたいです。あ! ぼくディロと言います。それで、青いのがルイ、赤がシモン、緑がリメノです」
「俺は千夜だ」
ディロとフレンド登録をする。
レベル上げをするというディロと別れる。
スライム達が、別れ際にディロと同じようにお辞儀をしたのにはびっくりして、笑ってしまった。
いやね、これほどコミカルだと笑っちゃうでしょ。
「さてと、引き続き薬草探ししますか」
とにかく、薬草を採取していく。頼まれていた薬草以外にも、鑑定で薬草と出ている物や、ポーションに使えるという物も採取する。
採取するだけ採取して、あの二人に作ってもらおうと思いました。
「薬草、薬草、薬草………ん?」
薬草をプチプチしている時、ふと気づいたことがある。モンスターがいないのだ。
なんだろう……モンスターがいないというだけなら、ゆっくり薬草採取ができるからいいのだろうが、別段そういうわけではない。だって、ここフィールドだよ? モンスターは普通に出てくるもんだよ?
「いったいどういう………ッ!?」
突然、悲鳴が聞こえてきた。
沢山の悲鳴。おそらくだが、プレイヤーだろう。
ここは初心者用のフィールドのハズなのに、なんでこんなに沢山のプレイヤーの悲鳴が聞こえてくるんだ?
一つは、初心者狙いのPKの仕業
もう一つは……
「ギュイ!」
「うぉ!?」
黒い物体が飛んできた。それを、間一髪で回避する。
「ユニーク個体かっ!」
現れたのは、俺の背丈ほどもある漆黒の兎。
長い耳には、宝石のついた黒い金属のリングが着けてあり
爛々と紅く輝く瞳が、俺を睨みつけている。
鑑定してみると、こうなっていた
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【死狩帝兎 ヴォーパル・カイザー】
推奨レベル:780
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おぃぃぃぃぃぃ!!! 運営ーー!!?
こんなん初心者フィールドで出していいユニーク個体じゃねぇだろ! 出すなら、推奨レベル50ぐらいが限界だろうが!
「ギュイィィィィィィ!!!」
「ッ!?」
威圧か? しかも、なんだか嫌な感じを混ぜこんだ威圧のようだ。しかし、【不撓不屈ノ者】の効果で、無効化できたようだ。良かった。
しかし、悲鳴は絶えず聞こえてくる。
まさか、複数いるタイプか!? しかも、かなりバラバラになっているようだ。
「ま、他を気にしてる暇はなさそうだな」
「ギュ」
黒兎は、威圧が効かなかったのを見ても、特に驚いたふうもなく構えた。
さて、アルハガルナほどではないが、強敵だ。しかも、アルハガルナのように見逃してくれるような奴ではない。目を爛々と輝かせて、俺を殺す気まんまんのようだ。死狩とはよく言ったものだな。
「ギュイィィィィィィ!!!」
黒兎が叫びとともに突撃してくる。
こうして、“ガナ森林”でのプレイヤー対死狩兎の戦いが始まったのだった。




