#1
俺の朝は早い。理由は単純明快。何故なら学校が遠いからだ。
ニュースを見ながらコーヒーをすする。美味である(ほっこり)。
そんな静かな雰囲気を台無しになったのは数秒後のことである。
「おっはよー!優くんっ!起きてるー?」
と外から軽快な声が。全く朝っぱらから元気なヤツだ。
声の主は九条まろん。俺のことを好き(?)らしい。なんでもオーラに惹かれたとか。
それに、こいつが来るようになったのは三日前から。そん時に何故俺の家を知ってるのかと聞いたら、
『なんかね、優くんを感じたんだ。それで家がわかったんだよ!』
らしい。もう変人どころか超人だね。俺にはGPSでもついてんのか。
「優~、お友達でしょ~?さっさといってらっしゃーい?」
この声の主は俺の母さんで名は優子という。俺の名前もこの人からとったんだとか。
母さんに急かされ家を出る。
「悪い、待ったか?」
「ううん、優くんのためならいつまでも待っていられるから…」
ぽっと頬を染める九条。
「こんな朝からアピるのはよせ。身がもたん。」
「えへへ、そだね♪」
ぎゅっ。俺の腕に抱きついてきた。いや、別にドキドキなんてしますよ?するけどいけない気がするんだよなあ…
こいつ性格や身長は幼いのに胸とか腰とかが普通の女子高生より少し…いやかなりイケナイ方向に成長していると思う。
これまさか狙ってやってるとかないよな?そんなにずる賢いことはしないハズだ…多分。
「またこれで歩くのか?いい加減人目が気になるんだが…」
「これはあたしがやりたくてやってるんだからいーの!それに見せびらかしたいし…♡」
仕方のないやつだ。これも最近できた蓮花高校に早くもできた都市伝説、
[生徒はクラスに、教師は学年に1人以上は万人が認める変人がいる]の所以なのか。
すると一つの疑問が生じる。
何故この学校にだけ変人が集中しているんだ?という疑問が。
まだ確認したわけじゃないが、少なくとも俺が真っ先に避けるであろう変人が俺の隣にいる。それにあの噂の拡散力。明らかにこの学校、何かある――
「――優くん、ぼーっとしてるよ、考え事?ベーコン食べる?」
「あ、あぁ、悪い。それとベーコンは要らん。」
だってそのベーコンお前が食ってたやつだから俺が食ったらか、かかか間接キスになっちゃうじゃん。こんな美少女(変)とそんなことしたら俺の平穏な生活、もとい運が尽きる。いや、時既に遅しかもだが。
そんなこんなで学校に到着。
「おはよーっ!」
九条がもはや叫んでるんじゃないかというレベルで挨拶をする。周りからも「おはよー」とか「ちわーす」とか「ねみぃ…」と声が。最後のは寝不足かな、うん。
九条の挨拶(?)により教室の連中の注目が一気に俺達に向く。すると、「お前ら付き合ってんの!?」とか「会ったの昨日だよね?」とか「おいてめえ俺と代われ!」だのと声が。焦る俺。いや最後の奴はやめとけ。かわいいと思ったらかなりの変人だから。
教室入ったとたんに注目されるという初体験に驚きと困惑していたら、女子生徒がこちらに向かってきた。
「おはよ~。二人ってやっぱぁ、付き合ってるのぉ?」
「おはようございます、それと付き合ってません」
「あはは、そーなんだぁ。あたしは小倉 萌。よろしくねぇ♪」
「あ、あぁ、よろしく」
肩ぐらいまでのウェーブがかかった髪に細い目は、どこからか優しさが感じられる。
「むぅ、話し掛けるのは勝手だけど優くんはとらないでね。一夫多妻制度は明治までだよ!」
「そんなことはしないよぉ~」
なんか知らんが、九条が一方的に小倉さんの事嫌ってないか?
小倉さんはニヤニヤしていた。
そして始業のベルが鳴り、この騒ぎは一旦落ち着きを見せる。
さて、学校はは終わり今は帰宅途中なのだが、とにかく疲れた。
第一に、誤解の弁明である。俺と九条の複雑な関係を理解させるには骨が折れたね。
そして、もうひとつはこの学校の授業内容だ。なんせ普通の学校とやってる事がまるで違う。
普通の学校じゃ異性との関係は清く__とかなんだろう。だが、うちの高校は違う。むしろ奨励してる感じすらあったぞ。
担任に聞いたら、「それがこの学校の方針なんですよぉ~」だそうだ。なるほどわからん。
そんなこんなで今に至るわけだが...
「ねえねえ優くん。今度、家にこない?」
なんでこいつが居るんだよ?
しかも出会って間もない野郎を家に招くなんて、どんだけ無防備なんだよ。
「急にどうしたんだよ。それに、帰宅まで付いてくる気か」
「そう言うかなと思ってこの3日間我慢したんだよ?だからいいじゃーん」
「その我慢を継続しろよ...」
「む~りぃ~」
言いながらも俺の胸に体を預けるようにもたれかかってくる。
「お前、他のヤツにもこんなことしてるのか?だったら止めとけよ」
「何言ってるの、あたしがこんなことするのは優くんだけだよぉ」
そういうことを言われるとドキッとするでしょうが。
「そ、そうか。ならいい」
よくねえよ。いや、よく考えてみろ。こいつ、性格こそちょっとアレだが、顔はメチャクチャ可愛いよな。
それに、そんな美少女(変)から俺は好かれている...こんなこと一生のうちに起こることって無いよな。
まてまて。俺の人生のモットーは[平穏]だ。齢16にしてその掟を破るというのか。だがしかし__
「まあまあ、これであたしが優くんのことが好きっていう証明にはなるよね?」
「...お前、よく平気で言えるよな。ちょっと堕ちそうだったぞ」
「ふむふむ、それは良い傾向だね」
「よくねえよ。」
サポシ。
「というわけで、今日からはあたしのことは[お前]じゃなくて名前で呼んでね」
唐突だな、おい。話が脱線しているので適当に対応しておくか。
「はいはい、わかりましたよ、まろん殿」
普通に言うとやはり恥じらいがあるためふざけて言ったつもりだったんだが、それが、どうだ。
見ると、九条が赤面していた。それはもう、耳まで真っ赤に。
「ど、どうしたんだよ」
「いや、あまりにも急に言われたし、[殿]までつけられたら...」
しくじったな、こりゃ。こいつは変人なのだ。ツボが分からないのに迂闊だったか...
「なんで[殿]でそんなに赤面できるんだよ」
「そっ、そんなの今はどうでもいい事だよ!じゃ、明日の帰りに、あたしの家に行くよっ!場所は教えるからっ!じゃあね!」
「お、おう...」
なんか、そういうことらしい。