慶タンの事、大好きだよね!
まとわりつく精霊たちがうっとおしくなった光代は感情的になり、慶ちゃんに大嫌いだと言って泣かしてしまう。でも、慶ちゃんが泣いちゃったので、反省して、好きだと伝え、お詫びに一緒にスーパーに買い物に行くことにした。
「もういいからかえって」
光代は無表情に言った。
「は?」
忍ちゃんは眉間に深いシワをよせた。
「もう、いいからかえってください」
光代がそう言うと慶ちゃんが目をまんまるくして光代に駆け寄ってくる。
「なんで?光代ちゃん慶タンのお友達でしょ、仲良しでしょ?慶ちゃんと一緒に居たいよね、そうだよね、大好きだよね」
慶ちゃんは光代にすがってきた。光代にはそれがすごくわずらわしく感じられた。
「離してよ、あんたなんか大嫌い!」
光代がそう言うと慶ちゃんの目にみるみる涙が溜まってきた。
「ううう……光代ちゃん慶タンの事大嫌いって言った…大嫌いだって、大嫌いだってわああああー」
慶ちゃんは大声で泣き出した。
それに釣られて剣ちゃんも大声で泣き出す。
「あーあ、泣かせちゃった」
忍ちゃんは険悪な表情で光代をにらみ付ける。
「な、なによ、勝手に泣いたんじゃない、私悪くないわよ、泣きたいのはこっちのほうよ、
甘いもの食べたいのに、食べられなくて。お菓子大好きなのに、なんで私がこんな目にあわなきゃだめなのよー、うううう……」
光代の目からポロポロと涙がこぼれてくる。
それを見た慶ちゃんは目を丸くして光代に走りよってくる。
「いいこ、いいこ」
慶ちゃんは光代の頭をなでる。
「ううう、ごめんね」
光代は涙を拭きながら慶ちゃんを見た。
「ねえねえ、光代ちゃん、慶ちゃん好き?」
「……うん」
光代はうなずいた。
「慶タンも光代ちゃん大好きー!」
慶ちゃんは光代に抱きついた。
それを見た真似っこ剣ちゃんも慶ちゃんに抱きついた。
「ぷっ、バカじゃないの」
忍ちゃんは鼻で笑ってそっぽを向いた。
それを見て慶ちゃんは忍ちゃんの処に走ってゆく。
「ねえねえ、忍ちゃんは慶ちゃん好き?」
「はあ?ばっかじゃないのお」
忍ちゃんは眉を不均等にゆがめて声を荒げる。そしてそのまま、プイっとそっぽを向いた。
「大好きに決まってるじゃない」
「やったー!」
慶ちゃんがピョンピョン跳ねた。
「ツンデレか!」
剣ちゃんがツッこみを入れた。
「と、いうことで、これだけ大きな騒ぎを起こしたんだから、あなた、責任とってくれるんでしょうね」
忍ちゃんはびしっと光代に指さした。
「え~、まあしょうがないかな、私も悪かったし。でも責任ってどうすれば……」
「スーパーに連れて行ってお菓子を買って、私たちにお供物としてそなえなさい。ただし、一柱50円以上のものじゃなきゃだめよ」
「一柱?なにそれ」
「ホントにものを知らない子ね、神の数を表すときは柱と数えるのよ」
「へー」
光代は関心した。
とりあえず、泣かせてしまった事への良心の呵責もあったので、ご機嫌とりにこの子たちをスーパーに
連れて行くことにした。
お供物としてお菓子をあげると、精霊たちが品評会をはじめ、それが楽しくて光代は気が晴れた。