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地獄のモンプチ  作者: 楠乃小玉
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人の不幸でメシがうまい

甘いものの食べすぎでお医者様に甘いもの禁止令を出されてしまった明石光代。それでも、

衝動的に甘いものを買ってしまう。この状況をなんとかしようと神社で神頼みしたら、

家に精霊が来て、光代に見せびらかせながらおいしそうにケーキを食べるのだった。

「血糖値がかなり上昇していますね。肝肥大、腎機能障害の併発しています。甘いものの食べすぎなんですよ。あなた、このままじゃ、糖尿病になりますよ」

医師は冷静な顔で言った。

「そこをなんとか、何とかなりませんか」

 深刻な表情で明石光代が医者ににじりよる。

「なりません」

冷静に医者は返す。

「今後、甘いものは食べないで下さい。食べ続ければ死にます」

「そ、そんな」

「イヤなら他所に行ってください、私の処では責任を負いかねます」

「はい……」

 光代は重い足取りで家路につく。

「まだ18才で糖尿病予備軍とか、どうなってんの私の体。私、お好み焼きをオカズに御飯食べて、コーラ飲みながらケーキ食べてるだけのどこにでもいる関西の女の子なのに。ラーメン&チャーハンとか、デザートにケーキバイキングとか、みんなやってるわよね。それなのに、どうして私だけ……」

いくら考えても、そこまで血糖値が上がる要素が見つからない。

スマホで悪化した糖尿病の写真を見てみる。酷くなると手足の末端が壊死してくるようだ。怖い。

そんな事にはなりたくない。

 考えれば考えるほどイライラする。ストレス発散に駅前で生クリームが一杯入ったシュークリームを買った。まあ、買うだけだから、たべなければいいのだ。

 家に帰る。ああ、シュークリームが食べたい、甘いバニラクリームの香り。

 でも、食べなければいいのだ。

 口に含む、何ども口の中で噛んで味を楽しむ。流し台の三角コーナーの中にでろでろ~とクリームを吐き出す。なんともいえず、心の中にむなしさが刺しこんでくる。針のように心を突き刺す。

「あああああああああああ!」

なんて不幸なんだ!甘いものが食べられない人生なんて!

悲しみのあまり家を飛び出し港の波止場まで歩いて行った。船着場の近く。よく子供の頃からこの場所を

通った。そう、美味しいイチゴのショートケーキがあるから。また、買ってしまった。

「何やってんの私!」

光代はその場に崩れ落ちた。

これを食べたら、本当に死んでしまうような気がした。

「ああ、神様!なんとかこのイチゴのショートケーキがなかったことにしてください!私の目の前から消し去ってください!」

 そう祈りながら歩いていると、ふと、古い神社の前を通りかかった。光代はその中にふらふらと入っていって、神様の前で手をあわせた。

「なにとぞお助けください」

 そして、家に帰った。家に帰って台所で恐る恐るケーキの箱を開けると、そこにはケーキがはいってなかった。

 無意識のうちに捨ててしまったのだろうか。それでいい。

「ふぅ」

光代は短くため息をついて、そのまま自分の部屋に行った。そこには中国風のオレンジ色の服を着て、

頭に二つシニオンをつけたちっちゃな子供が座っていた。

 体が少しずんぐりしていて、どうも人間の体型ではない。

「あ…あなた誰?」

「あ、光代ちゃんおかえり~!あのね、けいタンはお花の精霊の慶たんだお」

 この精霊らしき者は自分の名前を二回繰り返した。どうも頭が悪そうだなと光代は思った。

それよりなにより……

「あんた!何私の部屋でイチゴのショートケーキ食べてんのよ!」

「お?光代ちゃんがケーキ処分してくれって神様にお願いしたんじゃん!」

部屋の中に芳醇なケーキのにおいが充満する。慶ちゃんはクチャクチャと音を立てながら

ケーキをほおばっている。

「私の前でケーキを食べるな!しかも、ゆっくり味わって食べるな!」

「だって、おいしーんだよこれ~ほーら~」

 慶ちゃんは光代にケーキを見せびらかす。

「だから、私の前で食べるなって言ってるだろ!」

「わかったよ~も~」

 慶ちゃんはケーキを持って光代の背後に回る。そこでクチャクチャ音をたべながらケーキを食べる。

「うがー!」

 光代は激怒して慶ちゃんを追い掛け回す。

「きゃ、きゃ!」

慶ちゃんは喜んで走り回った。

「はあはあはあ、もう限界だわ!」

光代は家を走り出て、さっき通った神社に向かった。神社の中に入るととお賽銭奮発して100円入れて、

手を合わせた。

「この状況なんとかしてください!そうだ!ケーキ食べても太らないからだにしてください。そうすれば、病気の心配もないわ!」

 お祈りして光代は家に帰った。かえってみると、慶ちゃん背中に金色の鎧を着た小さな精霊をおんぶしながらケーキを食べていた。

「何、こいつ」

けんちゃんだお!」

「だから、なんなの、こいつ!」

「もちろん、炎の精霊だお!燃焼系だから慶タンがいくら食べても太らないお!」

 慶ちゃんがそういうと、慶ちゃんの背中にへばりついている剣ちゃんの背中からボッと炎があがる。

「いつもより多めに燃やしております!」

剣ちゃんが叫んで慶ちゃんの背中から油分を吸収して炎を燃やす。

「だから、そういう事じゃないからー!」

光代は叫んで部屋を飛び出し、再び神社へ。

「神様お願いです!私の望みは、どうやったら私が甘いものを食べても太らないか、甘いものを食べても

病気にならないか教えてほしいのです!」

光代は神社のお賽銭箱に千円入れて帰ってきた。

家に帰ると、玄関に水色の天女の衣みたいな服装のちっちゃな精霊が光代のほうをヤブにらみしていた。

「死ねば?」

「は?なに言ってんの、ていうか、あなた誰?」

「私は水と智を司る精霊、にんちゃんよ」

「で、死ねばってどういう事よ」

「死ねば太らないわ。糖分を口にねじ込んでも消化しないわよ」

「……もういいです」

光代は考えるのをやめた。


結局何も解決しない。問題は悪化するばかりだった。どうする光代!

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