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扉の魔導師<BLUE BLOOD RED EYES>  作者: Cessna
蒼天の決闘
295/411

136-3、若者たちの空と大人のやり方。俺が色んな意味で里の未来を預かること(後編)。

 ある夜、突如として部屋にやってきた深紅の瞳の少女・フレイアに誘われて、俺(水無瀬孝、26歳ニート)は魔法の国サンラインへと旅立った。

 「蒼の主」ことリーザロットの館に招かれ、正式に「勇者」としての役目を引き受けた俺は、自警団の少女ナタリーらとの出会いを経て、サンラインの歴史を左右する重要儀式「奉告祭」に参加する。

 そこで俺達は五大貴族の一人、及び異教徒「太母の護手」を手引きとした、敵国・ジューダムから襲撃を受け、危機感を募らせる。

 その後、リーザロットの悲願であり、「勇者」の使命でもある戦の和平を実現するため、俺達は少数精鋭で、都市・テッサロスタの奪還を目指して遠征を行った。

 旅はつつがなく進むかに見えたが、その途上で俺達はまたもやジューダムからの刺客と遭遇、ついにはジューダムの王…………俺のかつての親友、ヤガミと対峙する事態にまで陥った。

 魔導師・グレンの助けにより、何とか奪還の望みを繋ぐも、ジューダムの支援を行う「太母の護手」の指導者を倒して、目標達成まであと一歩まで迫ったという時、再びヤガミが俺達の前に立ちはだかった。

 大混戦の中、俺とフレイアは急遽時空の扉を潜り抜け、オースタン…………俺の故郷、地球へと逃れた。

 そこで待っていた真の「勇者」こと俺の妹・水無瀬朱音と、もう一人のヤガミ……ジューダム王の肉体を連れてサンラインへと戻ってきた俺は、最終決戦に挑むため、中立国・スレーンへ同盟を持ちかけに向かう。

 スレーンの頭領・シスイとの決闘に勝利し、晴れて同盟を結んだ俺達は、いよいよサンラインへと帰国する。

 アオイとヤガミを待つ間、散歩して夜風に当たることにした。

 風なら昼間散々浴びたじゃないかと言われるかもしれないが、飛んで感じる風と歩いて楽しむ風はまた違う。


 地に足がついていると、風のそよめきは大分人間らしい色合いを見せる。

 呼ぶのでも掴むのでもなく、ただ流れていく風の中。訪れを待つというのは、なんとのんびりとして心地良いものか。


 人には肌寒くとも、竜の鱗には冷えた空気が疲れた身体に程良く染みる。白竜やら黒矢蜂やらタリスカやらのせいで滅茶苦茶に乱れたはずのスレーンの地の気脈は、いつしかすっかり元通りのリズムを取り戻していた。


 不思議だ。あんなにも壮絶な生命の明滅の後で、どうしてこんなにも魂の息吹は変わらずにいるのだろう。

 まるで夕立でも降っただけって感じだ。

 ずっとずっと昔から、ここはこうだったのかな。


 善も悪も白も黒も飲み込む、大きくて遥かな時の流れ。

 戦いのためとかではなくて、純粋にそれだけを目的としてこの地の扉と向き合ったなら、はたしてどんな魔術が紡げるのだろう…………。


「…………扉の魔術師、か」


 独り呟くと、風の果てにツーちゃんの顔が浮かんだ気がした。

 笑っている感じがする。楽しそうに、嬉しそうに。

 よくよく考えたら、そんな顔は一度も俺に向けられたことはないのだが、まぁ、それでも想像できないことはないという話。


 のしのしと崖沿いを歩いていく。

 夜空と山脈の境目がくっきりと見える。満天の星空。

 飛べるという安心感が、狭い岩場を平気でずんずん進ませる。


 崖伝いの細道を抜けて岬に出た時、正面から声が掛かった。


「スレーンは楽しんで頂けましたかな? 勇者殿」


 岬の先の祠に、人影が見える。

 意外な人物が俺を待っていた。


「先代の…………」


 先代の頭領、ユースイ・キリンジ。シスイとアオイの実の父親である。

 かつて裂け目の魔物との戦いで負った後遺症で、今もう竜に乗ることはおろか、外を歩くことさえ難しいと言っていたはずだが…………。


「お身体は大丈夫なんですか? というか、どうやってここまで…………?」


 病人が来るには、本家の館からは少々遠過ぎる。

 そもそも、いくら勝手知ったる里とはいえ、供も無しにほとんど視力の無い人間が来られるような道程ではなかった。

 目を丸くしている俺に、先代頭領は日に焼けて皺深くなった顔を人懐っこく綻ばせた。


「お気遣いに感謝します。ですが、大丈夫です。…………全てお見通しなんですよ。この里のことなら、何でもね」


 俺は首を傾げて意図を測る。

 一見したところ、病に耐え苦しんでいる様子は窺えない。むしろ、俺と同じように、悠々と夜風と散歩を楽しんでいるような雰囲気すらある。


 特に気になるのは、彼の眼差しだった。

 完全な盲目ではないそうだが、それにしたってあまりにハッキリと俺の姿を瞳に映している。

 先代はその黒い瞳を、ゆっくりと瞬かせた。


「まだ気付かれませんか?」

「…………まさか」


 俺が呟くと、目の前の男性は健康そのものの気力充実した笑顔をパッと明るく咲かせ、竜のように白く丈夫そうな歯を輝かせて言った。


「嘘です! 全てね」

「えぇっ!?」

「シドウとアードベグ以外に打ち明けたのは、貴方が初めてです。私はむしろ頑強な性質でしてね、古傷は多々あれど、病なぞ生来罹ったことがありません」


 俺が思わず2、3歩のけぞると、先代は可笑しそうに続けた。


「隠し立てしていて申し訳ございません。ここだけのお話、倅と貴方との決闘も一部始終こっそり覗いておりました。いやいや、全く予想以上、期待以上でした」


 先代は笑い止めると、目元にシスイそっくりの皺を残して続けた。


「こうして代替わりが円満に済み、里の進むべき道が新たな地平へと開けたのは、紛れもなく貴方のおかげです。どうしても直接に感謝の意を申し上げたく、こうして馳せ参じました」


 俺が驚きで何も言えずにいるのをいいことに、彼はつらつらと言葉を継いだ。


「貴方という異邦からの風が皆の目を醒ましたのです。長く深い眠りの中におりました我々を、あのアオイ山の古き精霊と同じように」


 先代は吹き抜ける風を追うように晴れた夜空を見上げる。

 俺もついつられてその方を追ったが、そこには一匹、遥か遠く高くを行く野生の竜がいるばかりだった。


 俺は先代の横顔へ視線を下ろし、おずおず尋ねた。


「あの…………何で、嘘なんて?」


 先代は空を仰いだまま、穏やかに答えた。


「…………空が飛びたかった」


 彼は懐かしそうに目を細め、話し続けた。


「空なら見飽きる程に見てきただろうとお思いですか? …………どっこい、頭領というのは中々ままならぬものでしてね。

 どれだけ高く飛ぼうとも、どこまで遠く行こうとも、必ずこの地に降りてこなければならないのです。なんてったって、「頭領」ですからね。他の誰であればともかく、私だけは、決してこの里を離れるわけにはいかなかったのです」


 それに、と言葉が続く。

 先代の目はまだ空をさまよっている。


「何より、この里を愛していますのでね。私の方からもまた、引き戻されていくんです。己の血は時にひどく煩わしく、大抵の場合、それ以上に誇らしかった。この愛がスレーンの地と空と民と私とを、どうしようもなく強く結び付けていた。

 絆は重く、太き鎖。

 …………飛びたかった。飛べなかった。

 心はいつも焦れていました」


 竜とも人ともつかない目をする人だった。

 シスイの横顔よりも、もっと深く濃い日差しが刻まれている。

 先代の話しぶりは、そよぐ風を全く遮らなかった。


「焦がれて、焦がれて、焦がれて…………いつしか私は年を取っていました。家督を継ぎ、シスイが産まれ、アオイが産まれ、民と家業を守り…………飛ばぬ日も長く続きました。

 先にお話しました通り、この目も身体もまだまだ健在です。が、それでも若い頃程には見通せなくなりましたし、倅のような体力の要る飛び方はもうできないでしょう」


 ややおいてから、先代はまた語った。


「つくづく業の深いことと思われるでしょうが、そうなると一層、空への想いが募るものです。勇者殿はまだまだお若い故、この焦燥の嵐の激しさが如何程か、まだおわかりにならないでしょうが…………」


 先代が星空に微笑む。

 確かに、俺に想像できる域は超えていた。

 なんてったって、今は立派な一頭の竜だが、正体は甲斐性無しのニートなのだ。里を背負う重圧はおろか、家族一つ持つ重圧すら多分、わかっていない。

 だがそれでも、無理だと知れば知るだけ憧れる思いのあることは、知っているつもりだった。


 先代はさっきの竜が山稜の彼方へと小さく消えていくのを見送り、再び口を開いた。


「諦めることもできたでしょう。私の父がそうしたように、いずれ竜王様の御許に参り、この大空と溶けて真の竜となる日を夢見て過ごす。シスイやアオイ、里の子供達の未来をこそ本当の己の翼なのだと見極め、使命を全うする。

 最高の生き方ですよ」


 しみじみと風が沁みる。

 空にはもう誰もいないが、魂の歌がいっぱいに満ちている。


 「が」と、先代はそこで急に、口元をニヤリと歪ませてこちらを振り向いた。

 ギョッとしてまた半歩ずり下がる。

 子供っぽくも計り知れないその笑みは、シスイにもアオイにも、未だかつて見出したことの無い彼独特のものであった。

 先代はさっきまでよりも元気良く、雪解けの川のせせらぎのような調子で話を続けた。


「私は、御免ですね。自分の翼はあくまで自分の翼ですよ。

 …………おや、どうしました? 私は少しもおかしなことは言っておりません。諦めることができるのと、そうするのとは全く別のお話です。同様に、素晴らしいと認めることと、それに従うことも別です。

 私は、まだ飛べる。私には、飛びたい空がある。ならば行かねばと、私は決意したのです」


 先代は今なお衰えの見えない二の腕をがっしりと組み、爽やかな笑顔をまた咲かせた。

 なぜこの人が病気だと信じていたのか…………。先日の隠居然とした物寂しい気配は今やどこにもない。

 俺の眼前で堂々とスマイルする男性は、どう見てもまだまだ働き盛りの、健全そのものの一人の竜乗りだった。


「納得しかねるというご様子ですな。…………勇者殿。老婆心ながら申し上げますが、できないことと、「すぐには」できないこととを見間違えてはなりませんよ。目的を果たすためには、時には時間をも手懐けて手立てを講じねばならぬことがあるのです。ぜひとも覚えておいて頂きたい」


 先代は一つ柱を打ち立てるかの如く人差し指を立て、押し潰されそうな大空を背に、白状し始めた。


「私は、このままでは骨まで里に埋もれて、ついぞ飛べなくなると悟りました。そこで一念発起、一計を案じたのです。十数年がかりの、気の長ーい計画です。

 私が私として飛ぶためには、何よりもまず「頭領」を止める必要がありました。だがこれは簡単ではありません。それは詰まる所、私が死ななくてはならないということでした。

 …………家督を譲ればいいだけだなんて、どうか仰らないでください。「頭領」の名は生きている限り、ずっと付いて回ります。「先代」となっても、この骨身に深く根付いた里との絆は旅立ちを決して許しません。

 ですから、私はどうにかしてもう一度、「私」をやり直さなくてはなりませんでした。生まれ変わらなくてはならなかったのです」


 難儀なことだと頷く。

 先代は「わかってくれますか」と相槌に満足し、さらに続けていった。


「そうして私は、ある戦いでの負傷を機に、私は不治の病を装うことにしたのです。腹心のシドウと、幼少からの馴染みで詐病の通じぬアードベグにだけは真実を知らせ、何年もかけて私は徐々に里から存在感を薄れさせていきました。

 そうして、ゆくゆくは倅に正式に名を継がせ、里の安泰を願いながら満を持して天寿を全うする…………予定でした。…………が」


 先代が眉根を寄せ、口の端を奇妙な形にひん曲げる。

 彼は大袈裟に頭を掻き、同じく大袈裟に首を捻った。


「この肝心の代替わりが、まっっったくうまくいかなかった!

 これは予想外でした。私が何だかんだ頑張り過ぎたせいでしょうか、はたまた難しい時代のせいでしょうか…………いつまで経っても、里の民の信頼は私に寄りかかったままでした。

 八方手は尽くしましたが、それでも結局、私を通してシスイに訴えを通したがる者が後を絶たず、無下にもできず対応を重ねるうちに、泥沼にはまりこんでしまったという次第です。

 そのような体制が一旦できてしまうと、シスイはこれ幸いと空いた時間を飛ぶのに費やして、四六時中空の上にいるようになる。そうして頭領が捕まらないせいで、またも私に訴えが募る。

 アオイも年頃だというのに、お友達と遊んでばかりで全く嫁ぐ気配が無く…………。挙句の果てに、シスイはサンラインへと出奔する始末。

 とてもではありませんが、死んでいる場合ではございませんでした」


 先代は空を仰ぎ、また遠く目を細めた。


「子供達と話をしようにも、誰に似たのか、二人共頑固で頑固で…………もうどうしようもない、これは本当に竜王様の御許で夢を叶えるしかないかと肩を落としていた折に、奉告祭であの事件が起こったのです」

「呪われ竜の襲撃ですね」

「そう。太母の護手と手を結んだジューダムによる、賢者暗殺事件。勇者殿はそこで、見事に呪われ竜を撃退なされた」

「俺だけの力ではありませんけど…………」

「貴方のお力が重要であったことは間違いありません。その時私は「そういえば」と、思い出したのです。我が不肖の弟・トリスの悪名高きサモワールでも、貴方の比類無きご活躍があったということを」


 先代は顔を下ろすと、黒い瞳をひたとこちらへ向けた。

 笑みは無く、真剣な顔をしていた。

 というか、サモワールの支配人のお兄さんだったのか…………ちっとも似てないぞ!


「閃きが、私を照らしました。あの勇者殿には、何かある。彼はやがてこの世界の…………ひいては私の里の運命をも、変えるだろうと。

 …………直感は当たり、因果は巡り巡って貴方をこの里へと連れてきました。

 そこからはご存知の通りです。貴方はあの気難しいアオイと心を通わせ、伝統の鎖で雁字搦めになっていたシスイを飛び立たせ、そして最後には、長きにわたって眠っていた里全てを呼び覚ましてしまわれた。

「国乱れ、天地裂ける時、遥か遠方より旅人が訪れる。竜の縁者を迎えよ」…………という伝説は、貴方を活躍させるために私がでっちあげたデタラメでしたが、本当のことになってしまったのだから愉快なものです。誠に、竜王様の御意思は計り知れません」

「えっ!? あれも嘘なの!?」


 思わず敬語が吹っ飛ぶ。

 先代は二カッと、笑顔になった。


「大した演技だったでしょう。昔から、演技だけは誰にも負けない自信があるものでしてな。おかげでシスイもアオイも、露程も私のことは疑っておらんでしょう」

「…………」


 呆れるやら、最早感心するやら。

 確かに詐病だなんて少しも疑わなかったけど、これってちょっと道徳的にどうなんだろう? アオイなんて泣くぐらい心配しているっていうのに、死んだふりって、ちょっと、アンタ…………。

 心中を察してか、先代はこう話した。


「もちろん、全く悪くないとは思っておりませんよ。とりわけ子供達には酷なことをしていると自覚しております。

 ですがね、あの子らもいつかは必ず独り立ちせねばなりません。そういった日は、嘘でなくとも思いがけず突然にやってくるものです。

 勇者殿。貴方はそのきっかけでございました。貴方とヤガミ殿との決闘が、シスイを名ばかりでない、本当の頭領へと変えました。この大変革の時期を、里が掟と運命に従うばかりではない、真に魂に即した積極的な態度で迎えることができるのも、貴方のおかげです。

 これはどれだけの感謝を述べても足らぬことです。私個人としても、万感の思いがあります。

 長くなって申し訳ない。それでも貴方にだけは真実を語らねばと、こうして機を見計らってお話させて頂きました。

 …………ありがとうございます、勇者殿。心から」


 あまりに真摯な礼に、気圧されて謙遜することさえできなかった。

 俺が関わって変わった運命が、全て良い結末に至るとは限らない。これまでにも、たくさんの取り返しのつかない悲劇を巻き起こしてきた。

 だが、それでもこうして一人でも良かったと言ってくれる人がいるのは、とても嬉しいことだ。 

 俺は慎んで、礼を返した。


「こちらこそ、ありがとうございます。…………里の人達は、きっと守ります」


 先代が大らかな笑みを浮かべている。

 彼は一つ大きく自分自身に頷きかけ、言った。


「これで私も、心置きなく旅立てます。…………アオイの婿も見つかって、非常に晴れ晴れとした気分です」

「え? アオイちゃ…………すみません。アオイさん、ご結婚されるんですか? どなたと?」


 尋ねられた先代がキョトンと黒いまなこを瞬かせ、こちらを見つめ返す。

 俺は全身からサァッと血の気が引いて、震えながら問い詰めた。


「ちょ…………な、何ですか、その顔は!? どうして何も言ってくれないんです!?」


 先代がそろそろと岬の端っこへと足を運んでいく。次第に小走りになる。

 彼が鋭く短く口笛を鳴らすと、どこからともなく竜の甲高い鳴き声が聞こえてきた。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください! どこへ行く気ですか!? まさかこれから旅立つ気ですか!?」

「一旦は帰ります! でも勇者殿とは、これでおさらば!」

「ちょっ…………!!!」


 止める暇もなく、身の引き締まった緋王竜が崖っぷちにヒュウと滑り込んできた。

 先代が元気いっぱいに岬からジャンプする。

 竜は完璧なタイミングで主人をその背に乗せると、そのまま吹いてきた追い風に乗って、身軽く夜空へと羽ばたいていった。


 先代の声が、風に乗って届いた。


「――――里を、サンラインを! そして何よりアオイを! よろしくお願いいたします、勇者殿!!!

 いや…………我が息子よ!!! 奉告は済ませておきました!!!

 竜王様の祝福よ、永遠なれ!!!

 どうかお元気で!!! いつかまた会う日まで!!!」


「ちょっと待てぇえぇええええぇぇ――――――――!!!!!」


 追いかけようとしたが、翼の傷を思い出して膝を折った。

 そもそもあのスピードには、とても追いつけない。シスイ並みだ。

 彼の姿が遠く星の一つと消え行くのを、俺はやるせなく見送るしかなかった。



 …………翌朝、俺達はスレーンを発った。

 出発に際しては一悶着あったのだが、ここでは割愛しよう。俺は疲れた。とてもとても疲れた。


 そして夕刻、蒼の主の一行は無事にサンラインへと帰還を果たしたのだった。

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