お姫様生活→呪いの少女
世話役のオーク爺さんが、あたしの食事を持ってくる。
生肉は食中毒が怖かったので、焼いたお肉と果物の詰め合わせ。
「姫様、お口に合いますでしょうか?」
「ええ、美味ですわ」
中々美味しい。
未だに何のお肉か分からなけど、とってもジューシー。
果物は人と同じものを食べているみたい。
甘いリンゴ。
お肉も果物もかなり良い物。
多分、あたしにはこの巣で一番良い物を持ってきているんじゃないかな。
「ありがとうございます。人の食べ物は分かりませんので。
何かありましたらおっしゃってください。直ぐに手に入れてきます」
オーク爺さんは、ちょくちゅくあたしに要望を聞いてくる。
でも、あたしは捕らわれの身。
何かいうのは悪いと思って、口には出さなかった。
すると、オーク爺さんはあたしの様子を見て動き出した。
今座っている椅子も少し固かったんだけど、いつのまにかクッションがおかれていた。
あたしが苦手だと思っていた第二王子様の像は、気づくと撤去された。
陰でささっと動いてくれているようだ。
世話役とはそういうものなのかもしれない。
本人が何か言う前に察知して動くものなのかも。
でも、ちょっと怖いかな。
ここでシチューがほしいというと。
村の食卓でも襲ってきそうな気配がある。
オークの姫として注意しないといけないな。
あたしはリンゴを食べながら、視界の隅でヒョコヒョコ動くものを見ていた。
因みに、リンゴは一口サイズにカットされている。
細かい心遣いをされている。
「その尻尾、自分で動かしているのですか?」
「これですか・・・半分は自動的ですじゃ。このように自分でも動かせます」
ヒョコヒョコとしっぽの動きを変えるオーク爺さん。
オークには皆かわいらしいしっぽが生えており、見ていると心が和んでくる。
「器用ですね」
「姫様。喜んでくださりますか。こんなこともできるのですよ」
しっぽで石を掴み、地面を掘り出した。
地面に出来上がったのは・・・あたしの似顔絵?
オーク爺さんのかくし芸に驚嘆する。
「どうでしょうか?」
「よき出来です」
「ははっ。ありがとうございます」
オーク爺さんのしっぽ芸を鑑賞した後。
あたしは部屋の中を観察中。
盗品だろうけど・・・
色々な物が置いてあるから、ついつい気になっちゃう。
タンスや机ごと無造作に置かれていたりもする。
とりあえず豪華なものはこの部屋に詰め込んでいるみたい。
まるで宝物庫。
試しにタンスの引き出しを見ると、中には衣服がそのまま入っていた。
どうやら女性物みたい。
生地からしてどこかの貴族女性のものだと思う。
うーん。
なんだろう・・・
なんだか楽しくなってきた。
宝探しみたいで面白い。
盗品だからいけない気もするけど・・・
確認するだけなら良いよね。
持ち主が分かれば返してあげられるかもしれないし。
既にこの部屋にあるんだから。
なら、全部確認しないとね。
宝探ししちゃお。
ザクザクと部屋の中を探っていると・・・
うんん?
これは・・・
もしや・・・・あれでは。
不穏な魔力を感じる。
何かの腕輪みたいもの。
見慣れない物だけど・・・・
これ・・・アレだよね・・・魔道具だよ。
うんうん。
絶対そうだと思う。
気配が全然違うんだもん。
ってことは・・・当たりっ!
やったー。
あたし・・・魔道具を発見。
かなり高価な物のように思える。
まさにお宝発見。
嬉なくなったので、試しに腕に近づけてみると・・・
カチッ。
「・・・・」
あっ。
腕に嵌った。
近づけると自動的にカチって嵌った。
あれ?
ちょ、ちょっと・・・
外せないんだけど・・・これ。
腕にはまってとれないよ・・・この腕輪。
ええ?
イヤイヤイヤ。
ちょっとまってよ。
呪いの腕輪か何かなの・・・これ。
ええいっ、えいっ。
お願いだから、抜けてよ。
「・・・」
「・・・」
ありゃ~~。
ダメ・・・全然取れないみたい。
うんともすんともいわないんだもん。
きっちりと装着されちゃってる。
まいっちゃう。
普通には取れないみたい。
取ろうとしたら自分の腕が取れちゃうと思う。
うーん。
困ったなー。
完璧に装着されちゃってる。
それに・・・一体どういう効果があるんだろう、この腕輪?
通常の魔道具は、つけると何かしらの変化を感じられるはずなんだけど・・・
今のところ体に変化は感じないし。
何にも感じない。
まぁ、いいかなー。
特に害はないのかもしれない。
それに上から服で隠せは目立たないし。
暫く時間がたつと外れるのかもしれない。
後でオーク爺さんに石鹸を頼んでみよう。
肌をつるつるにすれば外れるかもしれない。
きっと、スポって一発だと思う。
それじゃー。
ストンッ
あたしは腕輪を外すのを諦めて、ベッドに横になる。
宝探しは一旦中止。
ストップ・ザ・宝探し。
動いたら休憩しないとね。
小まめに休むのは大事大事。
意外に宝探しに熱中してしまったみたい。
ベッドでゴロンしていると・・・
瞳が重くなってきて・・・・
ウトウトしてきて・・・
目を閉じて・・・
お休みです。
zzzzzzzzzzzzzz
っと、
ガンガンガンガンガン ガンガンガンガンガン
「ぎゃああああああああああっ!」
突然頭痛がして目覚める。
変な声上げちゃった。
それぐらい頭が痛い。
頭の中で小人がハンマーを振り回しているみたい。
ドンドン爆発するように痛くなってきた。
な、なんなのこれ?
一体なんなの?
毛根が弾け飛びそう。
燃えるように痛いの。
光の様な痛みが襲ってくる。
ちょ、ちょっと・・・
タンマミーアッ!
痛みに悶えて、枕に噛みく。
枕を噛んで痛みを抑えようとする。
ベッドの上で左右に高速ゴロゴロすると・・・
あっ。
止まった。
突然痛みが止まった。
いきなりパタリと止んだ。
何事もなかったように。
ふぅー。
はぁー。
よかった。
もう一瞬だめかと思った。
色々爆発しちゃうんじゃないかって。
ふと、鏡 (多分、盗品)を見ると。
赤髪の少女が映っていた。
ベッドの上に横になり、枕を抱えている少女。
あれ?
誰?
この子?
この部屋にはあたしだけなのに・・・
あたしが顔をクイッと動かすと、赤髪の子もクイっと動かす。
手で頬を触ると、同じように触る。
頭をクイクイッと高速で動かすと、赤髪の子もクイクイッと高速で動かす。
えっ。
ええええっ!
この子・・・・まさか・・・
あたしなの?
この赤髪の女の子があたし?
でもでも。
髪の毛は黒かったはずだし。
もうちょっと背も高かったはずだし。
この赤髪の子は・・・子供みたいだし・・・
年は・・・12歳ぐらいだろうか・・・
コテン
首をかしげて思考するあたし。
・・・・
・・・・
えええええええええっ!
ちょっとちょっとおおおっ!
あたし・・・
どうなってるの?
子供になっちゃったの?
赤髪になっちゃたの?
なんで?
どうして?
一体何が起こったの?
全然分からない。
あたしは絶叫に震えた。