お花がいっぱいの部屋
その日の午後。
「お花、ここに置いときますねー」
「いつも悪いねー。マキノさん」
「いいえ、バッカスの頼みだから」
「ありがとさーん」
「ちゃんと世話しないとだめだよー。お花は繊細だから」
「分かってるよー。ありがとさーん」
「ちゃんと話し聞いてるー?」
「んん?聞いてるよ」
「なら、いいけどー。お花は大事にしてね」
「勿論さ」
はい。
さて問題です。
上の会話は誰の会話でしょう?
チッ チッ チーン
時間切れです。
正解は・・・
これがね。
なんと。
バッカスとお花やさんの会話なのです。
お花屋さんっていうのは、花ちゃんがいたお店の、奇麗な女の人のこと。
あの時・・・
あたしがバッカスから問題を相談されて、依頼を受けた時。
(お花屋さんで起こっている問題の相談)
バッカスが「やりぃ~」って言っていたから、ちょっと気になっていたんだよね。
何かあるんじゃないかと。
うーん。
でもねー。
なんだろう?
バッカスとお花屋さん、仲よくない?
いや、別に仲が良いのは良いことだと思うんだけどねー。
なんだろう・・・
普通より仲が良い気がする。
「ありがとさーん」なんて、調子のった感じの返し。
普段のバッカスなら返さないと思うし。
怪しい・・・
とんでもなく怪しいなぁ・・・
これ。
匂います。
匂いますよ。
うーん。
それに。
実はねー。
あたし。
バッカスがあたしのこと好きじゃないのかと少し疑っていたんだけど・・・
あてが外れたのかもしれない。
うん。
そんなことはないかもしれないなー。
勇者パーティーは皆仲良しだから。
それと同じ好きなのかもしれない。
まぁ、どっちでもいいんだけど。
ふぅー。
しかし。
今思えば・・・
新しい幸せを求めて城を飛び出して・・・
色々なことがあって勇者パーティーに入ったんだけど。
なんでしょう。
そこそこ充実した生活を送れている気もする。
赤髪で小さくなっちゃったけど。
まぁ。
過去を振り返ってもしょうがないか。
大事なのは今。
「じゃあね、バッカス。また今度お花持ってくるから」
「はい、お気をつけて。お店まで送るよ」
「ええ、いいの?」
「大丈夫、大丈夫」
「じゃあ、お願い、実はここにお花を運ぶために台車を引いてきたの」
「俺が台車を引きましょう」
お花屋さんと、嬉しそうなバッカスが部屋を出て行った。
それに・・・
部屋にはたくさんのお花が置かれている。
最近お花率が異様に増えた。
別に悪い事じゃない。
見た目的にはいいし。
目に優しい。
心も清々しくなるし。
良い匂いもする。
元々は、花ちゃんの肥料を買うついでにお花も買っていたんだけど。
最近は本末転倒で、お花の方が多くなっている気がする。
「おっ、どうしたー。マリアっち。花なんか見て、食べるのか?」
寝ぼけたことをいいながら、リューイが登場。
シャワーを浴びてさっぱりしたみたいだけど・・・
フラちゃんにかまれて頭おかしくなったのかも。
バコッ
とりあえず、あたしはリューイの足を蹴った。
「い、痛っ、何するんだよ」
「リューイ、バッカスとお花屋さん、知り合いなの?」
「あぁーん?ええっと、確かそうだったかも」
「そう・・・」
「なんだ、気になる感じ?」
「別に・・・」
「ならっ、一緒に後つけるか?」
「えっ?」
「大丈夫だし、バレやしないし、バレても散歩って言えばいいじゃん」
うーん。
大丈夫かな。
リューイだからな。
「ほらっ、行こうぜ。早くしないと見失う」
「えっ・・・ちょっと・・・うん」
心は揺れながらも。
バッカスとお花屋さんを尾行するために。
あたしはリューイと部屋を出た。
10/3 (月)22時に短編投稿しますので、宜しければご覧下さい。
「君の名を呼ぶとき ~人を好きになる瞬間」
※時間になり、以下のページ下部のリンクをクリックすると飛びます。