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オークさんを治療します

 オークに捕まって森を移動中。

 彼らは力が強いためか、あたしは首をヒョイっと掴まれて運んでいった。

 まるでネコになった気分。

 手を足がフラフラしています。 





 暫く進むと。

 オークの住処らしき洞窟に連れられ、ポイッと檻にいれられた。

 ネコをケースにいれるみたいに。

 あまりにも軽く扱われたので、あたしって軽いんだなーと少し思ったりもした。


 洞窟内には小さなオークや老いたオークもいて、あたしのことをチラチラ見ている。

 

 これからのことを思い・・・檻で呆然としている。

 置物のように固まっていると・・・

 小さなオークがジロジロ見つめてくる。

 多分、子供オークだと思う。

 親指をおしゃぶりしているし、クリっとした純粋な目でジーっと見てくる。

 小さな子供特有の、無心の表情で見つめてくる。


 あたしは少し恥ずかしかったけど・・・・あることに気づいた。

 小オークの手は怪我しているみたい。

 腕の形がおかしい。

 多分・・・あれは骨が折れている。  


「こちらに来なさい」

「んん?」


 小オークは首をかしげる。


「噛み付きはしないわ。手をみせてごらんなさい。直してさしあげるわ」

「でも・・・近づいたダメだって・・・」


 迷っているような子オーク。

 キョロキョロと周りを確認している。

 だが、ちょうど見張りのオークはどこかいったところだった。


「その腕、痛いんでしょ。あたしなら痛みを消してあげられるわ」

「・・・ほ、ほんと?」


「任せて頂戴。あたしは傷を癒すのが得意なのですわ」

「痛いこと・・・しない?」


「お姉さんを信じて下さいましっ」

「・・・分かった」


 子オークはおずおずとあたしに手を差し出す。

 あたしが手をかざすと・・・ビクッと震える小オーク。


「お手を拝借」

「うん」


 あたしは回復魔法を使った。

 聖女と呼ばれる要因の一つは、回復魔法に優れているからである。

 




 数秒後。

 子オークの怪我は直った。 


「あっ、なんともない。全然いたくないよー。少しも痛くないっ!」

「いったでしょ。あたしに任せて下さいまし」


 小オークはビックリしてキョロキョロしている。

 手が治ったことが信じられないようだ。


「奇麗なお姉さん、ありがとう」

「ふふっ、いいのですよ。あたしは出来る事をしたまでです」


 彼は嬉しそうに走っていき・・・大きなオークを呼んできた。

 あたしと交渉をしたボスオークだ。


「お前・・・回復魔法・・・使えるのか?」

「ええ、少々使えますわ」


「そうか・・・」


 ボスオークは黙る。

 オークは表情の変化が分かりにくいけど、何か迷っているのかもしれない。

 小オークはボスオークの腰にくっつきながら、クイクイと何かをボスオークに頼んでいるようだ。

 

 あたしは分かった。

 彼らが何を望んでいるのか。 

 戸惑っている理由は分からないけど、こちらから提案した方が良いだろう。


「オークさん、怪我人がいるのならば、治してさし上げましょうか?」

「いいのか?俺達・・・オーク。人・・・オーク・・・嫌う・・・醜いから」


 ボスオークは種族間の差別を気にしていたようだ。

 まったく、そのような些細なこと、あたしは気にしませんのに。

 どんな種族でも、困っている方はほうっておけません。


「構いませんよ。あたしは見た目で差別するようなことはしませんの。

 困っている人がいたら平等に接するのですわ。

 皆違って、皆良いではありませんかっ!」


「感謝・・・治してもらいたい奴・・・いる・・・・何人か」


「いいですわっ。あたしに任してくださいましっ!

 さぁっ。一列に並んでください。ささっ」


 




 その後。

 あたしは何匹かのオークを治療していった。

 オークは傷をほったらかしにしており。

 自然治癒以外の治癒方法はないようだった。


 最初の方は、皆ビクビクしながらあたしの治療を受けていた。

 

 何人かの怪我人が呼ばれたけど・・・

 あたしの前で。

 「お前がいけよ」「いやいや、お前が先に」「いや、お前からどうぞ」と、順番を譲り合っていた。

 時間がかかりそうだったので、あたしの方から指名した。

 怪我具合が一番重そうな人を。


 選ばれたオークは「えっ、俺?まじかよ」という絶望の表情をした。

 まるで死刑判決でもくらったような顔。

 他の怪我オークたちはほっと一息ついていた。


 だけど、一人目を治療すると反応は変わった。

 あたしの回復魔法の効果が分かったのだろう。

 次々に怪我人が列に並びだした。

 



 10人目の治療をしているとき。

 クラっと頭が揺れた。

 回復魔法には体力と魔力を使うからだ。


「いいのか?魔力・・・・尽きないか?」


 ボスオークがあたしを心配してくれているようだ。

 オークなので表情は分からないけど、多分そう思う。

 あと・・・ぶっきら棒なオークなのかもしれない。

 あまり仲間と話している姿も見ない。


「いいのですわ。魔力は天からの贈りもの。皆のために使うのです」

「そうか・・・お前・・・・いい奴」


 オークに褒められた。

 岩のような手で頭を撫でられる。


「これ・・・使うといい」


 オークが魔力回復薬(多分、盗品)を差し出してくれるので。

 ありがたく頂戴して補給。


 キュルルルルルル~スポンッ!


 ゼリー状の半固形物を全て飲みつくす。

 グビグビ飲むと・・・美味しい。

 魔力が体に満ち溢れてくる。

 エネルギーが補給される。


 さぁ、もう一仕事やりますか。

 何匹でもオークを治療しますよ。

 なんだかハイになってきたんだから。


「元気・・・なったか?」

「ええ。ありがとうですわっ。オークさん」


「そうか・・・よかった・・・他の奴も・・・頼む」

「勿論ですわっ!」


 あたしは治療を続けた。

 怪我人を癒し続けた。

 直ったオークさん達は皆、嬉しそう。

 丁寧にお礼を言ってくれる。

 彼らの笑顔が力になる。

 あたしは、彼らの笑顔を見ながら治療に励んだ。



 できることをやらなくちゃ。


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