聖女マリア
「デカイ部屋だなー」
バッカスのいう通り。
私達の部屋・・・というよりも、私たちの階だった。
最上階が全て私達の部屋になっている。
「よーし。俺はこの部屋なー」
バッカスがある部屋に入っていこうとするけど・・・
「バッカス。ここはマリア譲に最初に部屋を選んで貰うべきでしょう。レディファーストですよ」
「そうだなー。新入りだし。マリア、どの部屋が良い?」
「ええ・・・そんな・・・」
あたしはどの部屋でも構わないんだけど・・・
「いいんですよ、マリア譲。私達冒険者は野宿に慣れていますからね。
室内ならどこでもいいのです」
「じゃけん。マリアちゃんが選んでよか」
「俺もそれで良いぜ」
皆が譲ってくれると断りづらいな・・・
ならっと。
あたしは室内を歩き回り・・・
「ではっ、この角の部屋にします」
入り口から一番奥の部屋を選んだ。
特に理由はないけど、隅っこで大人しくてしておこうかと。
庶民派のあたしです。
「へぇー、じゃあ俺はここなー」
「私はこの部屋にします」
「我はここだ」
「俺はここじゃね」
皆部屋を決めていく。
でも・・・
部屋数が余っているんだよね・・・
完全に。
全部で15部屋ぐらいあるから。
こんなにあると困っちゃう。
さてさて。
あたしは自分の選んだ部屋に入った。
ベッドに腰をつけ・・・
ペタンと横に倒れる。
ふぅー。
はぁー。
色々あったけど・・・王都に戻ってきた。
鏡に映る自分の姿を見ると・・・
赤髪の少女のまま。
奇麗な赤髪が揺れている。
今のあたしの姿だ。
やっぱり、赤髪の少女だ・・・
今のあたし。
マリア・マーマーレード伯爵令嬢の姿。
違うか・・・
『赤髪の光姫マリア』か・・・
くぅうううう・・・
ベッドでゴロゴロする。
自分で自分の二つ名をいうとやっぱり恥ずかしいな。
どうかどうか。
この二つ名を言う機会が来ませんように。
お願いします。
心で願った。
でっ。
ベッドでゴロゴロしながら休憩中。
長い間一休みしていると・・・
トントン
ドアがノックされた。
誰だろう?
「はーい」
「バッカスだ。夕食に行かないか。皆で下のレストランに行くんだ」
そういえば・・・
お腹すいてるかも。
ペコペコ。
「一緒に行きます」
あたしはさっとベッドから体を起こし。
化粧台の前に移動。
服装の乱れを直す。
机の上にあったクシで髪をセットする。
よしっ。
ばっちし。
あたしは扉を開けて皆の元へ。
◇
バッカス達と向った先は。
一階のレストラン。
テクテクとついていくとボーイさんに案内される。
あたしが椅子に座ろうとすると、メギドが「どうぞ」っと言って椅子を引いてくれた。
本当の執事さんみたい。
「ありがとう」とお礼を言って、チョコンと座る。
でも、椅子が高いからか。
くぅ・・・足が床につかないよー。
完全にお子様感だ・・・
足がフラフラする。
でもいいもんっ!
そんなの関係ないんだから。
あたしは背筋をシャキット伸ばして淑女スタイル。
見た目より中身が大事なんだから。
「マリア、なにメギドみたいにピシッとしてるんだ。楽にしろよ」
「そうそう、マリアっち。飯なんだし。メギドみたいにする必要はないんじゃね」
「じゃけん、じゃけん」
「皆さん、私を暗に否定しているのですか?姿勢が良いにこしたことはありませんよ」
あっ。
なんだか・・・
妙な注目を浴びてしまった。
でも、負けるないぞっ!
最後までこのスタイルでご飯を食べるんだから。
子供みたいなことはしないの。
「大丈夫です。あたしはこれが自然は姿勢なんです」
「へぇー。そうなのか。マリアって子供っぽいのに、時々大人だな」
「マリア譲は立派な淑女ですよ」
「じゃけん、マリアちゃんはお利巧だな」
「ませた子だなー」
もうっ。
失礼しちゃう。
あたしの真の姿は大人の女性なんだよ。
伯爵令嬢なんだから・・・。
あたしはフラフラと足を動かしながら。
淑女スタイルでご飯を待った
「うまいなーこれ」
「ですね。やはりレストランの物は違いますね」
「じゃけんなー」
「もぐもぐもぐ」
皆で夕食中。
ぶっきらぼうなバッカス。
クマさんみたいなゴルも奇麗にナイフとフォークを使っている。
ちょっと驚いた。
もうちょっと雑だと思っていた・・・
ゴルはオークみたいに生肉にかじりつくんじゃないかと。
でも・・・・そういえばゴルは名家の出身なんだっけ。
それなら当然か。
それにバッカスもちゃんとしてる。
彼も貴族の出なのかもしれないなー。
あたしはナイフとフォークで分厚いお肉を切ろうすると・・・
うーん。
中々上手くいかない。
お肉を切り裂けない。
あれ?
んん?
ナイフがおかしいのかなー。
上手く切れないよ。
ヒョイ
「あっ」
バッカスがあたしの皿を取り。
サクサクッ。
お肉を切り分けてくれる。
「ほらよっ」
カチャ
ぶっきらぼうに皿を戻してくれる。
ポカンと数秒彼を見つめてから・・・
「ありがとう」
「いいってことよ。視界でチマチマ動いていたからな」
なんだか良い訳じみたことをいうバッカス。
素直になれないのかもしれないなー。
変なところで気が利く彼。
ヒョイ パクッ
あたしはお肉を口に入れる。
うーん。
美味しぃー。
ジューシーな肉の味が口の中に広がる。
とっても柔らかくてお口が溶けちゃいそう。
「マリアちゃん、ホクホク顔じゃけん。お肉好きみたいやな」
「へぇー、マリアっちは肉食系かー」
「栄養を取る事は大事ですよ。マリア譲は成長期ですからね」
ありゃ~。
なんだか恥ずかしいな。
ご飯を食べているところを見られるのは。
「あまり見ないで下さいましっ」
「そうですね。淑女のお顔をジロジロ見るものではありませんでした。お許しを、マリア譲」
「マリアちゃん、ごめんじゃけん」
「マリアっち、悪かったよー」
別に怒ってないんだけど。
皆が謝ってくれる。
もうー、なんだか照れるな。
「別にいいですよ。それより、皆さんお食事を続けられた方が。お料理が冷めてしまいます」
「そうだぞー、マリアが言うとおり、どんどん食え。食えるときに食うんだ」
バッカスがパクパクご飯を食べてながらもフォロー?してくれた。
何だかんだいって、バッカスは気遣いしてくれる。
「そうですね。私達も頂きましょう」
「じゃけん、じゃけん」
「俺は注文足そうかな~」
食事は続いていった。