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エサやり

 あたしは木の実を持ち。

 滝の下の池にもう一回投げた。


 「えいっ」


 ポイッ

 チャポン

 パクッ


 やったー。

 また成功だ。

 お魚さんがエサをパクッと食べた。

 なんだか面白くなってきたかも。

 プロになれるかもしれない。


「マリアやるなー」

「じゃけん、じゃけん」

「不思議じゃねー。今のはちょっとコースがそれたっぽいのに」


 確かに、今はコースを外れたけど・・・

 お魚さんから寄ってきてくれたみたい。

 うーん。

 なんでだろう。

 お魚さん・・・お腹が減ってるのかなー。

 ペコペコなのかも。


 ならっ。

 もっと木の実をあげないとね。

 召し上がれー。


「えいっ」

 ポイッ

 チャポン

 パクッ


「えいっ」

 ポイッ

 チャポン

 パクッ



 何度か投げていると。

 エサがなくなってしまった。

 スッカラカン。


「よしっ。この辺にしとくか。魚たちも満腹だろう」

「じゃけんねー」

「今日は大量にエサ食ったっぽいからねー。マリアっちは謎の才能があるんじゃね」


 うーん。

 あたしのエサ投擲率は驚異的だったらしい。

 近くにいた人もあたしのことを見て驚いていた。

 特に何も特別なことはやっていないんだけど・・・。

 他の人と同じだと思うんだけどなー。

 なんでだろう?


「マリア。偉いぞー」


 ポンポンっと頭を撫でてくれるバッカス。

 ちょっとー・・・

 サワサワされるとくすぐったいよー。


「こうなったら、マリアごと水面に投げてみればいいかもな」

「じゃけん、じゃけん」

「面白いんじゃねー。お魚に大人気じゃね」


 ええ?

 何いってるの皆?

 笑いながらも目がちょっと本気なんだけど。

 まさか・・・本気じゃないよね。

 冗談だよね?


 ヒョイッ フワッ

「あわわわっ!」


 ちょっとちょっとっ!

 何々?

 あたしはバッカスに軽々持ち上げられた。

 フワっと無重力。

 足がユラユラと揺れている。


「じゃあ、水面に投げるかー」

「じゃけん、じゃけん」

「あの青い魚の前が良いんじゃね。ほらっ、あそこ」


 ええ?

 ホギャーッ。

 ちょ、ちょっとちょっとっ!

 本気なの?

 何か真剣に皆話している。

 誰もとめようとしない。


「ダメダメ。あたし、美味しくないよー」

 足をばたつかせて投擲反対するけど・・・

 バッカスはガッシリあたしを掴んでいる。


「マリア、バタ足してー。そんなにも水面に飛び込みたいのか?」

「そのバタ足・・・マリアっちは水中でも大丈夫じゃね」

「じゃけん、じゃけん。マリアちゃんは人魚になれるけん」


「じゃあ、行くぞ、1、2。3・・・」

 謎のカウントを始めるバッカス。

「「1,2、3」」

 ゴルとリューイがカウントを繰り返す。

 えええ?

 その数字は何まであるの? 


 ちょ、ちょっと、ダメだってっ!

 本当に。

 あたしあまり泳ぎはうまくないの。

 それにこんなとこで・・・


 あたしが慌ててばたついていると・・・



「おやおや、あなた達は一体何をしているんですか?マリア譲が困っているではありませんか」



 穏やかな声が聞こえたと思ったら、メギドだ。

 手には鍵を持っている。

 受付が済んだんだと思う。

 やれやれといった顔で執事さん風。

 実務能力が高そうだ。

 彼はこのパーティーイの様々な実務をこなしているんだと思う。


 一瞬、バッカスの力が抜けた。

 あたしはその瞬間を見逃さなかった。

 サッと彼の手から抜け出す。


 ヒョイ ピョン スタッ

 見事床に着地する。

 数分振りの床だ。

 大地に下りたあたし。


「あっ、逃げられた・・・・

 何、少し遊んでいただけだよ。本気で水面に投げるわけないだろ。

 マリアの反応が面白かったんだよ」

「じゃけん、じゃけん」

「マリアっちは本気で投げられると思ってたんじゃね」


 うそだー。

 絶対うそ。

 半分ぐらい絶対に本気だったと思う。

 心がヒヤヒヤしちゃったー。

 もぅ・・・危うく水中生活するとこだった。

 ふぅー。

 未だに心がヒュンヒュンする。


「全く、私達は一応勇者パーティーなのですよ。もうちょっとシャンとしましょう」


 そうそう。

 メギドの言う通り。

 レディに対してなんて扱い。 

 あたしはすっごくビックリしたんだから。


「悪かったよ。マリア」

「じゃけん、マリアちゃん」

「マリアっちは楽しんでいたんじゃね」


 リューイは全然反省してなさそうだった。

 ヘラヘラ笑っている。

 あたしは思いっきりスネを蹴ってやった。


「あ、痛っ!な、なにするんだよー。やったのはバッカスじゃねーか」

「ふんっ!」


 あたしはすぐさまメギドの後ろに隠れた。

 リューイはひーひー言ってスネを抑えている。

 いいざまぁだ。

 

「では、部屋の鍵を貰ってきましたので、向いましょうか。部屋は最上階のようですよ。

 リューイはいつまでスネを抑えてるんですか」

「そうだぞ、リューイ」

「くっ・・・マリアっち・・・覚えていやがれ」


 あたしはメギドの陰に隠れた。


「よしっ、じゃあいくか」

「じゃけん、じゃけん」

「やっとベッドかー。やっぱり野宿よりは良いよな~」


 あたし達は最上階に向った。

 


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