王都に到着
森を抜け、王都についた。
しかし夜が遅かったこともあり。
王城に入るのは明日。
今日は王都の宿に泊まることになった。
小さな姿で戻った王都。
宿に向っていると・・・
うん?
あんれー?
あたしの赤髪が珍しいのか。
それともバッカス達勇者パーティーのせいだろうか。
ジロジロと多くの人に見られてしまう。
「マリア、気にするなよ。いつものことだ」
「そうじゃけん、我らは目立つからのう」
バッカスとゴルが気を使ってくれる。
ポンポンと頭を撫でられる。
ちょうど二人の手の位置に頭がくるからかもしれないなー。
「ううん。気にしてないよ」
うん。
実際に気にしてないから。
だって聖女の時も皆に見られていたから。
慣れてるの。
今と聖女の時ではちょっと意味合いが違うと思うけど・・・
「マリア。宿はもうすぐだからな。俺ら勇者パーティーは国の施設が大抵タダなんだ」
へぇー。
そうなんだぁ。
でも、その代わりに大事な役目があるんだと思う。
勇者だから魔王とか倒すんじゃないかなー。
まだ詳しい話は聞いていないんだけど・・・
「ほら、もうつくぜ。この宿だ」
バッカスの目線の先を追うと・・・
お、おうぅ・・・
これはこれは・・・大きなお宿。
これまた豪華なお店。
店の前に来ただけで圧倒されてしまう。
あたしは伯爵令嬢だったけど・・・家の方針で質素に暮らしていたから。
このようなお高いお店に縁がないの。
でも・・・確かこのお店・・・王都でも有数の宿だった気がする。
噂で聞いたことがある高級宿。
さすが・・・勇者パーティー。
この宿がタダなんて・・・・
「ほら、マリア。みとれていないで入るぞ。ちゃんとついてこないと迷子になるからな」
もうぅ・・・バッカス。
完全にあたしのことを子ども扱いだ。
確かに今の姿は子供だけど・・・
小さいけど・・・
本当は大人なんだよ・・・あたし。
確かに子供の姿になってからは・・・
なんだか子供みたいな仕草をしちゃってるかもしれないけど。
ちぇっ。
「マリア譲、参りましょうか」
メギドが優しくエスコートしてくれるので、あたしは彼について宿の中に入った。
豪華な宿に入ると・・・
う、うわぁー。
な、なんで?
店の中に滝が・・・あるよっ!
なんのために?
吹き抜けのホールになっており。
かなり高層から水が落ちてきている。
ジュワーっと水しぶきが立っている。
そのせいか・・・
ひんやりと気持ちいい。
このための滝なのかな・・・多分。
「初めて見るとビックリするよなー。俺も驚いた。滝だっ!って」
「マリア譲、私もですよ。店内に滝がある店は珍しいですから。
高価な魔道具で制御しているらしいですよ」
バッカスとメギドが横で優しく解説してくれる。
メギドは魔道具がある場所を指差している。
「ではっ、私は受付にいってきますね」
「おう、頼む」
メギドは受付に向かうけど。
あたしは滝が気になっていた。
なんかすっごいんだもん。
もうちょっと近くで見たいなー。
虹がかかっているし、滝の下ではお魚さんの姿が見えるから。
「マリア、滝の近くに行くか?エサあげられるんだ」
「じゃけん、じゃけん。パクパクしてる口に投げるけん」
うーん。
お魚にエサかー。
ちょっと楽しそうだなー。
チョロチョロ動いていて楽しそう。
「うん。あたし見てみたいかなー」
「ほら、じゃあこっちこっち」
あたしはバッカスに連れられて水面の傍へ。
水霧がぶわぁーって顔にあたる。
うんうん。
ひんやりクールっ!
気持ちいい。
爽やかな気分になる。
心が洗われた気分になる。
でっ。
水の中にいるお魚さんを見ていると・・・
バッカスがささっとエサを買ってきてくれた。
「ほら、このエサを魚の近くに投げるんだ。間違って魚にぶつけるなよ」
「分かってるよー」
そんなことより・・・
早くエサ頂戴。
早くお魚さんにエサをあげたいのにー。
バッカスがエサ袋を中々渡してくれないので。
心がソワソワする。
「まてまて、そんなに物欲しそうな顔するなよー。今渡すって。ほらよっ」
「ありがとう」
あたしはバッカスから子袋を受け取る。
木の実のようなものがたくさん入っている。
食べてもおいしそうだ。
「いいかーマリア。赤い魚が初心者向けだ。アレを狙え。近くの水面に投げれば良いんだ」
初心者って何?って思ったけど。
ここは上級者?バッカスのいうことを聞いておこう。
あたしはルーキーだからね。
「分かった」
狙いを済まして・・・
「えいっ」
チャポン
木の実を赤いお魚さんの近くに投げた。
木の実は水面に浮くが・・・
お魚さんが気づく前に沈んでしまった。
「ありゃーダメだな、マリア。初心者の投擲だ。プロはこうやるんだよ」
バッカスが木の実を投げる。
ポイッ
チャポン
右と赤いお魚さんの前に木の実は浮き。
パクッ
木の実を食べるお魚さん。
お、おうぅ・・・
確かにプロの技なのかも知れない。
一発一中だ。
「どうよ。こうやって、魚の進路に木の実を投げるんだ。木の実が沈まないうちに魚に見えるように」
へぇー。
ふむふむ。
バッカスは手馴れた様子だった。
お魚さんもホクホク顔で嬉しそうだ。
ならっ。
あたしもマネしてやってみよう。
いざ、二投目。
「えいっ」
ポイッ
チャポン
木の実が赤いお魚さんの前に浮く。
これは・・・
中々上手くいったかも・・・
パクッ
木の実を食べるお魚さん。
「やったー。見た見た?今食べたよー、お魚さんが食べたー」
「マリア上手いじゃないか。二度目で成功とは、中々腕が良いのかもしれない。
プロのエサやり師になれるかもな」
「じゃけん、じゃけん。マリアちゃんはセンスあるじゃけん」
「マリアっちは投擲センスがあるんじゃね」
「だな。ゴルはまだ一回も成功していないんだ」
「我はエサやりは苦手じゃけん」
「ゴルっちは魚に怖がられてるじゃねーデカイから」
皆が褒めてくれるし、なんだか楽しくなってきた。
早くもう一回投げたい。
ポイッしてパクッっしたい。
お魚さんがあたしの木の実を待っていると思うの。
うんうん。
多分、そう思う。