勇者パーティーの検査
自己紹介での二つ名避けに想いを廻らしていると・・・
カキンッ
バッカスが背中の大剣を突然抜き出す。
な、なにするの・・・
っとあたしは驚くが。
周りの人たちは誰も驚いていない。
一体、今から何が起こるのか・・・
「マリア。後、これは仲間には全員やっていることだが。
今から儀式をする。マリアなら問題なくパスできるよ」
大剣をあたしに向けて微笑むバッカス。
ちょっと怖いんですけど・・・
何々?
実力試験か何か?
まさかバッカスと一体一で戦うのかな。
ゴブリンをガンガン真っ二つにしていたバッカスと。
あたし・・・瞬殺される自身があるよ・・・
絶対に無理。
戦闘職じゃないから。
「あのーテストですか?もう仲間になったのだと思いましたが?」
「大丈夫大丈夫。なに、簡単なものだよ。
物騒なものじゃない。仲間に魔物やよからぬ者が混じらないようにしている、簡単なテストさ」
「そうです。マリア譲。痛いことになりませんのでご安心を」
バッカスとメギドはあたしをなだめるけど。
大剣をむけられると、すっごく怖いんですけど。
「バッカス。あたしにやましいところなどありませんわ」
「それを今から確かめる、いくぞ」
バッカスが黒剣を強く握ると・・・
黒霧が舞いだす。
黒霧が剣を覆いとぐろを巻く。
―――「闇の悪魔より力を借り、真実を問いただす。
汝は魔物か?汝は悪事を企むものなりか?」
ドシュン
黒霧があたしを取り囲むが・・・
プシュー
得意に何も起ることなく霧散した。
この感覚・・・オーク洞窟の時と似ているのかもしれない。
黒霧はあたしを苦手としているのかもしれないな。
「はいっ。終了。やっぱりマリアはピュアだな。普通な少しは反応するものなんだぜ」
「そうですね。マリア譲は心が清いのでしょう」
「じゃけんじゃけん」
「マリアっちはそこらの女と違うんじゃね。腹の中に何か考えている女は多いからな。
今のをそこいらの女に使うと、途端に黒霧に飲み込まれるからな」
「それはリューイの偏見だろう。だが、マリアが素晴らしい女性であることは変わりない」
「分かってるよー。マリアっちは特別みたいだから」
なんだかよく分からないけど・・・
あたしは試験に合格したみたい。
ポカンとした顔をしていると。
「マリア譲。今のは心の試験です。
心の中に悪事を行う想いがないか確かめたのです。
一応私達は勇者パーティーですからね。善良な心が求められるのです。
よからぬ心があれば、黒霧にいつまでも覆われていたでしょう」
メギドが丁寧に説明してくれた。
心の試験か・・・初めて聞いた能力。
闇属性魔法の使い手は少ないというか、始めて見たから全く知識がない。
そんなこともできるんだーと感心する。
教会とか国の裁判とか、色々なところで活用できそうな魔法。
「しかし、マリア譲。今の様に霧一つ纏わりつかないのは奇跡ですよ。
本当に澄んだ心をしている証です。まさに聖女様のようですね」
「そうですか・・・」
久しぶりに聖女と呼ばれてドキリとする。
別に身分を偽っているわけじゃないけど・・・
なんでだろうか。
後ろめたい気持ちになってしまう。
あたしは話を変えたかったので。
何か話題は・・・話題は・・・ええっと。
あっ。
そうだ。
これからのことを聞いておかないと。
「あのー。これからの目的地はどこなのですか?」
そう。
呪いを解くために旅をしているのは分かったけど。
どこに行くのかは聞いてなかった。
これから向う先を聞いておかないと。
「マリア譲、王城ですよ。呪い関係の資料を拝見しに、王立図書館に行きます。
少々国の仕事もありますしね」
お、王城に戻るのか・・・
思い出しちゃうなー。
舞踏会で第三王女様にワインをかけられた場所。
ミハエルに我慢できなくて飛び出してきた場所。
あたし的には今は近づきたくない場所だ。
でも・・・
この姿なら誰もあたしに気づかないかな。
子供みたいに小さくなっているし・・・
赤髪に真紅の瞳。
この姿で気づく方がおかしい。
でも・・・婚約者のミハエルは気づくかもしれない
ううん。
違うかな。
気づいて欲しいな。
あたしはミハエルのことが好きだったし。
今も好きなのかもしれない。
それに今でも婚約者なんだから。
例え姿が変わっていても・・・
あたしの真の姿に気づいて欲しい。
無理な願いかもしれないけど。
そう思う。
それに・・・
オークに浚われたあたしが今どういう扱いになっているか気になる。
行方不明扱いになっているのか。
それとも死亡扱いになっているのか。
お父様とお母様はどう対応しているんだろう。
ミハエルは慌ててるのかなー。
あたしは皆の事を考え、思いを廻らした。