勇者パーティーのルール
勇者パーティーに入ったあたし。
皆と握手して、改めて心を分かち合う。
剣を扱っているからか、バッカスとリューイの手は硬かった。
ゴルの手はなんだろう・・・大きかった。
硬いとかそういう意味ではなく、とにかく大きい。
さすがゴブリンと素手で戦っていただけのことはあるかもしれない。
最後にメギドの手。
凄く細くて奇麗な手をしていた。
手を触っただけだけど、繊細な人なんだと思った。
握手が終わると・・・バッカスが皆を見回し。
「よしっ。これで、俺達は無事に七属性揃ったわけだ。
俺の闇属性に、マリアの光属性。メギドの5属性」
「おい、俺の氷属性だってレアだぞ」
「分かってるリューイ。でも折角七属性そろったんだ。
俺達のパーティー名もやっと真実になったな」
んん?
あれ?
てっきり勇者パーティーが名前かと思っていたけど。
違うのかな・・・
別のパーティー名があるのかもしれない。
それもそうか・・・
勇者パーティーって、名前ではない気もする。
「バッカス、パーティー名はなんなのですか?」
「ふふっ。気になるかー、マリア」
怪しげな笑いを見せるバッカス。
気になるけど・・・それ程でもないかな。
でも、バッカスは聞いて欲しそうな顔をしているから。
「あたし・・・気になります」
「そうか。俺らのパーティー名は『七色の騎士団」』だっ!。どうだっ!」
イヤイヤイヤ。
「どうだ!」っとドヤ顔されましても。
皆、興味津々な目であたしを見られても。
困ります。
皆どう反応するかすっごく気になってるみたい。
あたし的には恥ずかしい名前だと思うんだけど・・・
皆の様子を見ると・・・
カッコいいとおもってるようだから・・・ここは合わせようかな。
「すっごく、良い名前だと思いますわ」
「だろ。マリアは分かってるな」
「さすがマリア譲」(メギド)
「じゃけん、じゃけん」(ゴルドウィン)
「いや、俺はダサいと思うけどなー。マリア、無理してるだろ」(リューイ)
あっ。
リューイはあたしの真の考えと同じだったようだ。
しかし華麗にスルーされるリューイ。
誰も気にしていない。
「じゃあ、マリアも名前をつけようか」
んん?
名前?
あたしにはマリアって名前があるはずだけど・・・
そう自己紹介もしたし。
「名前とはなんですか?あたしの名前はマリアですよ」
「マリア、内のパーティールールなんだ。皆二つ名をつけるんだ。
ほら、さっき説明したろ。肉弾凶器のゴルドウィン、五大属性使いのメギドとか。
あれのことだよ」
あー。
ふむふむ。
あれですかー。
適当にバッカスが付けた名前だと思ったけど。
違ったんだ。
パーティー公認の名前だった模様。
って。
ええええ。
ええええええっ!
あたしにも変な名前付けるの・・・
できるなら・・・
ただのマリアでもいいんですけど・・・ (チラチラ)
「マリアは光属性で、かなり奇麗な身なりをしているからな。光姫のマリアでどうだろうか?」(バッカス)
「いいですね。マリア譲には姫の呼称がいいと思います。しかし、赤髪が特徴でもあるのでは?」(メギド)
「そうじゃけん。両方でいいじゃけん」(ゴルドウィン)
「赤髪の光姫ってことか?」(リューイ)
「そうだな、それにしよう。偶にはリューイも良いこというな」(バッカス)
「私も異議ありません」(メギド)
「我もじゃけん」(ゴルドウィン)
「俺の案だからな、俺の」(リューイ)
さくっと会話が進んでいく。
あたしのチラチラ目線はまったく効果がなかったようだ。
ちぇ・・・誰も察してくれなかったよ。
もう・・・。
プイッと顔を背けて見ると。
「ほら、マリア・・・『赤髪の光姫マリア』で決まりだ!良かったな」
「いえ、あたしは・・・」
「マリア、口答えは禁止だ。このパーティーでは、あだ名は多数決制だ。ということでよろしく」(バッカス)
「よろしくお願いします。赤髪の光姫」(メギド)
「よろしくじゃけん。赤髪の光姫」(ゴルドウィン)
「よろ~、赤髪の光姫」(リューイ)
えええ?
ちょっとちょっと。
待って。
待ってよ。
皆「うんうん、良い名前だ」と頷いているけど。
あたしの意見なしで、『赤髪の光姫』で決まっちゃったみたい。
皆に呼ばれると恥ずかしいよ。
口答え禁止って・・・とんでもないパーティーに入っちゃったのかも。
あたしがオロオロしていると。
「大丈夫ですよ、マリア譲。この名は呼ぶ事は少ないです。
普段はマリア譲と呼びますので。ご心配なく」
よかったー。
メギドが焦っているあたしを気遣ってくれた。
さすがに毎回『赤髪の光姫』っていわれるとむず痒いから。
「でも、初対面の人には『赤髪の光姫』ってちゃんと自己紹介するんだぞ。
俺もマリアにあった時は『黒剣のバッカス』って名乗っただろ」
あ・・・
たしか・・・そんなこといっていたっけ。
オークさん達が大変な事になっていてうっすら記憶だけど。
でも。
そんなルール・・・
キツクないですか・・・
あたしは自分の自己紹介場面を想像した。
出会った人に、「あたしは『赤髪の光姫』よ」と述べる自分の姿を・・・
・・・・
・・・・
ありゃ~無理だよ~。
絶対無理。
無理無理です。
そんな恥ずかしい自己紹介・・・絶対にできないよ。
無理なものは無理。
じゃー。
皆にはばれないようにしよう。
こっそり自己紹介しよう。
そう心に誓った。




