勇者パーティー
勇者パーティーと名乗ったバッカス。
彼は次々にゴブリンを大剣で真っ二つにしていく。
瞬く間に既に戦っている三人に加わった。
よく見ると・・・
陣形の様なものがあるみたい。
バッカス、リューイ、ゴルドウィンが前衛として突撃。
後ろからメギドが魔法をバンバン打ち込む。
それがスタイルみたい。
でっ。
そのさらに・・・
さらにさらに後ろで・・・
あたしはポツンと戦闘を見守っていた。
本当に、ポツーンって感じ。
騒々しい戦闘区域から離れた憩いの場所です。
回復魔法を使えるから、手助けをしようとするけど・・・
彼らは傷を負わない。
誰一人負わない。
一方的に無双していく。
丁寧な事に、ゴルドウィンがあたしの周りに防御結界を張ってくれているみたい。
「ハッ」っとゴルドウィンがこちらに向いて手を向けると、透明な膜が出来た。
その幕にゴブリンがぶつかって、あたしには近づいてこれない。
万全の体制だ。
皆が戦闘する中。
あたしはぼーっとしている。
皆さんお強いです。
勇者パーティーというだけあり、各分野トップの実力者なのかもしれない。
個人の戦闘能力がとんでもなく高い。
通常の魔物では相手になるはずも無いと思う。
ふぅー。
暇だ。
あたしは特にやる事が無いので・・・
髪とかいじっていても問題ないぐらい。
なんだか・・・とっても申し訳ないな・・・あたし。
何もやっていない感がすさまじい。
ぶっちゃけ。
寄生冒険者と揶揄される動きを今あたしはしている。
前に従者のトーマスに聞いた話。
オークから逃げたトーマスから聞いた話を思い出す。
『知ってますか、お嬢様。楽して強くなる方法があるっす。
強い冒険者に囲まれてついていって、分け前だけ貰えばいいっすよ』
っと、楽しそうに話していたっけ。
トーマスは転移魔道具で逃げたと思うけど・・・
今頃どうしているのかな?
分からないな・・・
数分後。
全てのゴブリンを狩り尽した皆が戻ってくる。
返り血で赤くそまった集団。
所々肉片も?ついているワイルド戦隊。
ちょっと不気味だけど・・・しっかりと魔物を狩った証だ。
戦闘で何もできなかったあたし。
ここで活躍しないとね。
十分休憩はすんだから。
英気を養っていたんです。
あたしは皆に両手を向けて。
「皆さん、動かないで下さい」
「マリア、どうした?」(バッカス)
「マリアっち、どしたん?」(リューイ)
「マリアちゃん、じゃけん?」(ゴルドウィン)
「マリア譲、何をなさるのですか?」(メギド)
「あたしも皆さんに協力します」
ブーン
あたしが呪文を唱えると、彼らの服装は奇麗になる。
新品同然のいでたち。
清掃魔法の効果だ。
あたしは聖女として、教会で怪我人や病院を癒したり。
孤児院を回って諸所の手伝いを行っていた。
戦闘経験など無いあたしだけど、その分細々とした便利魔法は豊富。
あまり誇らしいことではないけれど、清掃魔法は大の得意なの。
どんな汚れでも一瞬で奇麗に落とせる自身がある。
信頼の実績と経験ですよ。
言ってて悲しくなるけど。
でもいいの、清掃魔法は中々使い手がいない希少魔法でもあるし。
皆の役に立ってるんだもん。
あたしは自分の出来ることをするんだから。
「マリア、ありがとう。」(バッカス)
「マリアっち、すげー、キレイキレイじゃん」(リューイ)
「マリア譲、惚れ惚れするお手並みですね」(メギド)
「マリアちゃん、しゃかりきじゃけんのう」(ゴルドウィン)
奇麗になった皆が褒めてくれるけど・・・
やっぱりなんだか微妙な気分かも。
だってあたしは戦闘では何も出来なかった。
回復魔法で役に立てると思ったけど、それも無し。
一方的に皆が無双して怪我を負わないから。
やっていることは皆の服をキレイにすることだけって・・・
なんだか悲しくなっちゃうな・・・あたし。
でも、いいの・・・
いいんだから。
自分の出来る事をしているんだから。
あたしも役立ってるんだから。
ふっ。
小さな孤児達に言われた渾名を思い出すな。
そうです。
そうなんです。
何を隠そう。
『掃除屋のマリア』とはあたしのことですよ。