悪魔騎士の仲間たち
オーク洞窟から救い出された。
まぁ、なにもされずに。
逆に姫生活をしていたので・・・
救い出されたというのはちょっと違うのかもしれない。
バッカスに連れられて外に出ると。
付近には3人の男の人。
皆武装しており、冒険者風の装い。
彼の仲間みたいで、バッカス (あたしをオンブしたまま)を囲んでいる。
「バッカス、黒剣を使ったのですか。あれは負担があるから使用しない方がいいでしょう」
「そうじゃけん。元々偵察するだけじゃっただろ」
「そんなことより、後ろの可愛い子ちゃん誰だよ?」
「お前ら、いっぺんにいうな。誰が誰だか分からん。マリアも混乱しているだろ」
「いえ、あたしは・・・」
と言うものの。
はい、その通り。
バッカスの言う通りです。
絶賛混乱中のあたし。
◆ここ最近の経過
呪いの腕輪→赤髪化&子供化→洞窟が騒がしい
→オーク爺さん錯乱→謎の悪魔騎士に助け出される→冒険者達?に囲まれる
↑今ここ
というわけで。
頭が全然おいつかないわけですよ。
もうぅ・・・混乱しっぱなし。
でも振り返ってみて。
今やっと我に帰れたかな・・・あたし。
心が落ち着きました。
あたしが心の平穏を取り戻すと。
バッカスが屈んであたしを地面に下ろす。
背中をポンッと押して、皆の前にあたしを押し出すバッカス。
まるで子供を知人に紹介する親の様に。
思ったよりバッカスの力が強かったので・・・
あたしはチョコチョコとふらついてしまう。
もう少しで転ぶところだったけど、大丈夫。
ふぅーセーフ。
なんとかバランスを保てた。
体が小さくなって間もないから、ちょっと体の使い方にもなれていない。
もぅ・・・バッカスは雑なんだから。
ちょっとバッカスを睨んでみた。
「大丈夫だマリア。心配するな。今紹介してやるよ」
あれ?
なんか勘違いされたっぽい。
不安でバッカスを見返したと思われたみたい。
もう・・・本当は違うのにー。
「だがよー、その前に・・・他の魔物まで寄ってきたようだ。
お前ら頼む。俺は一戦してきたからな」
「いいでしょう」
「じゃけん」
「めんどうじゃね」
「頼むぞ。ほら、来たぞ。お前らも戦闘したいんだろ」
私達めがけて、ゴブリンの集団が迫ってきている。
頻繁に魔物が出現するなんて・・・
こんなこと・・・今まではなかったのに・・・
魔物たちに何かあったのかもしれない。
三人の男達がゴブリンの集団の元に向う。
今、魔物達との戦闘が始まった。
【戦闘中】
目の前で戦闘が繰り広げられる中。
あたしとバッカスは距離をとって鑑賞中。
隣でバッカスが戦闘中の仲間を紹介してくれるらしい。
まずは、一人の大男を指差す。
目線の先では・・・
『がはははっ、大したことないのう』
グキッ
ゴブリンを首を片手で折り、握りつぶすクマの様な大男。
「あの大男は・・・
―――『肉弾凶器のゴルドウィン』。
防御魔法の名家、ゴールド家出身。
本当にクマみたいに大きくて、人かどうか怪しいレベルだが・・・多分人だ。
がっちりとした体で、巌のような奴だけど。あれで中々繊細で、気が利くんだ。
皆はゴルと呼んでる。」
へぇー。
ふむふむ。
ゴルドウィンさんですかー。
ゴールド家の名前は冒険者に疎いあたしでも聞いた事があるレベル。
そんな名家出身なんだー。
にしても本当にクマっぽいな。
あたしは心の中で、ゴルドウィンのことを「おっきなクマさん」と呼ぶ事にした。
次にバッカスが目線向けたのは、細身の長髪の男。
長い長髪を揺らしながら舞っている。
『俺様の美技に、酔いなっ!』
ヒューン パリパリパリ
長髪剣士が剣を振るうと、ゴブリンが凍りついて結晶化。
その後砕け散る。
「あのチャライのは・・・
―――『氷剣のリューイ』
大貴族出身のイケメン騎士だな。
泣きホクロが印象的で、女性受けが良い。
たどり着く街々で、怪しげな女性と仲良くしているが・・・
大丈夫だ。君の事は狙わないだろう。その辺はわきまえている」
ほうほう。
ふむふむ。
確かにチャラそうだ。
戦いながらもこちらにアピールすように、目線を合わせてくる。
時々手も振ってくる。
あたしは心の中で、「チャラ剣士」と呼ぶことにした。
次にバッカスが目線を向けたのは。
執事服を纏い、メガネをかけた男。
『灰になりなさい。道を塞ぐものよ』
ババババババッ
執事風の衣装の男が杖をかざすと。
炎に焼かれて、オークが一瞬で灰になる。
「あのキリっとしたのは・・・
―――『五大属性使いのメギド』
火・水・風・土・雷の基本属性魔法を全て使いこなせる魔術師だ。
いつも服装をきっちりと着こなし、動作がキビキビしてるな。
執事の様に礼儀正しく、メガネが似合う知性派だ」
ふむふむ。
へぇー。
凄いなー。
五大属性使いって初めて聞いた。
あたしは光属性の魔法しか使えないし。
普通は多くても二属性の魔法のはず。
とんでもない人なのかもしれない。
あたしは心の中で、「インテリ執事魔法使い」と呼ぶことにした。
「でっ、最後に俺だけど・・・・」
一匹のゴブリンが包囲網を抜けてこちらにきた。
バッカスは後ろから迫りくるゴブリン。
あたしが「後ろっ!」っと叫ぼうとした瞬間。
「っち」っといいながら、バッカスが剣を振り回す。
「おらあああああっ!」
バシュ
オークが真っ二つに裂けて、血が飛び散る。
「―――『黒剣のバッカス』
悪魔騎士バッカスとも言われている。闇属性魔法使いだ。よろしくな」
攻撃スタイルからか。
皆の中で一番血まみれになっているバッカス。
血まみれでまっかっか。
あたしは即座に清掃魔法をバッカスにかける。
直ぐに彼にかかった血が取れる。
「ありがとうマリア。
それと・・・もう一つマリアに言っておく事がある」
「なんですか?」
彼はニヤリと笑った後。
「俺達、勇者パーティーだからっ!」
「えっ?」
言い終わると・・・
バッカスは先程の一撃で気分がのったのか。
「おらああああっ!」っと叫んでゴブリン軍団めがけて突撃を始めた。
って。
ちょっと・・・
えええええええっ!
勇者パーティーって・・・
そんなさくっと・・・
えええええええええ?
あたしは又しても驚きに震えていた。