ピンチと出会い
ヒーロー登場っ!
落ち着け、あたし。
落ち着かないとダメ。
興奮して頭をキョロキョロしてもダメ。
ここは冷静になって。
まずは状況を確認しないとね。
うんうん。
ペタペタ
あたしは自分の顔を触ってみる。
ちょっと皮膚が柔らかくなってるかも。
子供っぽいプニプ二感がある。
やっぱり子供になってるのかも・・・
赤髪を触ると・・・温かい・・
熱を持っている。
えっ・・・なんで?
なんでだろう?
髪が温かいって・・・
まるでお風呂に入った後みたい。
ホッカホッカ。
あたしの黒髪はどこにいったの?
燃えるような赤髪は宝石の様に煌いて奇麗だけど・・・
奇麗だけど・・・・
あたしの髪じゃない・・・
それに・・・
ミハエルも褒めてくれたブルーの瞳が・・・
真紅に変わっている・・・
底が見えない光を放っている。
髪も瞳も真っ赤なあたし。
どうしよ・・・
ほんとうに赤い女の子になってる。
ベッドから離れ。
鏡の前でよく自分の姿を確認しようとすると・・
「あっ」
うおっ。
ズサッー
ブカブカになった服を踏みつけて転んでしまう。
体が小さくなったから、足が引っかかってしまった。
まずは自分サイズの服に着替えた方が良いかな。
うんうん。
そうしよう。
あたしはタンスの中から体に合うサイズの服を探す。
動きやすい質素な服がよかったけど・・・
見つかったのは、赤いフリフリドレスだけ。
何十ものフリルがついたドレス。
こ、これを着るしかないのか・・・
子供っぽくて恥ずかしい気がするけど・・・
見た目は子供だしね。
いいかな。
この体なら似合っているのかもしれない。
赤髪に真紅の瞳だから。
【お着替え中】
よしっ!
できたっ!
お着替え終了。
誰の服かは知らないけど、サイズはピッタリ。
鏡の前でポーズをとると。
ささっとドレスが翻す。
ばっちしね。
右腕を見ると・・・
ありゃ~。
腕輪のサイズも今のあたしの大きさに適応しているみたい。
ちょっと小さくなっている。
もしかしたら外れるんじゃないかと思ったけど・・・
ガッカリ。
そんなことはなかったみたい。
というか・・・
この呪いの腕輪が全ての原因じゃないかと思えてくる。
絶対にそうだよ。
原因が腕輪ぐらいしか思いつかないもん。
ならばっ!
あたしは再び腕輪を外そうとしようすると・・・・
『ブヒィィィィィィイイイイイっ!』
『に、逃げろおおおおっ!』
『なんだこいつらあああああああっ!』
な、何々?
ちょっとどうしたの?
何だかすっごい声が聞こえるんだけど。
扉の外から叫び声が聞こえる。
外がとっても騒がしいみたい。
足音も聞こえるし・・・金属音が響く音も。
どうみても尋常じゃない音。
絶対に何か大変なことが起ってる気配だよー。
カチャッ
あっ。
オーク爺さんだ。
「姫様、お逃げ下さいっ!」
凄い勢いで部屋に入ってきたオーク爺さん。
必死の形相で顔には黒いすすがついているし。
お髭はこんがりやけている。
外は火事にでもなっているのかな。
「少し落ち着いてはどうですか?息をしっかり吸いましょう」
あたしはオーク爺さんはなだめる。
こういう時こそ、落ち着いて行動しないといけない。
冷静にならないと。
けれど・・・
オーク爺さんはあたしをみて目をパチクリさせている。
「ああ・・・」っと口を開けたまま固まっている。
さらに精神混乱度が上がったみたい。
オロオロしてる。
「だ、誰じゃ、お前は・・・姫様をどこにやった。赤髪の魔女め」
「はいっ?」
・・・
・・・
そうでした。
そうでした。
あたしは今何故か赤髪少女になっていたんだった。
くっ・・・完全に忘れていた。
直ぐに誤解は解かないと。
「オーク爺さん。あたしが姫です。ちょっと・・・痩せたんですの」
「う、嘘じゃ。全く別人じゃ。姫様は美しい黒髪で、ちびっこじゃない。
もっと大人じゃ。オークだからって馬鹿にしおって」
うーん。
さすがに痩せたでは無理でしたね。
あたし自身も無理だと思っていました。
ならば・・・ここは本音で話し合いましょうか。
真摯に話せば、思いは伝わるはずです。
きっと。
「オーク爺さん。実はこの腕輪を嵌めましたところ、このような姿になっていたのです。
不思議なこともあるものですね」
「魔女め・・・先程からふざけたことを・・・美しい姫様をどこにやったのじゃ?」
ダメでした・・・
一欠けらも信じて貰えなかったようです。
とすると・・・
どう説得すれば良いのでしょうか。
他の方法でいきましょう。
「あたしですよ。あたし。あたしが姫様です。
あなたのしっぽ芸を知っています。似顔絵を描いてくださったでしょ。
とてもお上手でした」
「んじゃ?・・・わしは皆に描いておるわいっ!」
確かに、得意ならそうしているかもしれませんね。
あちゃー。
記憶作戦も失敗ですか・・・
策が尽きてきました。
―――ドゴンッ
―――バリバリバリ
オーク爺さんの後方で爆発音が聞こえた。
かなり派手な爆発音だった。
「やばいのじゃ、あやつがきおった・・・」
ガクガク震えるオーク爺さん。
一体何に脅えているんだろう。
さっきからしきりに後ろを気にしているみたい。
「魔女、姫様はどこじゃ、はよ申さんか。はよはよっ!あやつがくるわい」
「姫はあたしですよ」
うわー。
自分で姫っていうと・・・恥ずかしい。
一応オークの姫で間違いないんだけど・・・
恥ずかしいものは恥ずかしいんだもん。
「魔女め・・・たわごとばかりのべおって。こうなれば力づくで聞き出すのじゃ」
やばっ。
オーク爺さんはとうとう決意したようだ。
近くにある石を拾い。
あたしに襲い掛かってこようとした瞬間。
「おやおや、妙な胸騒ぎがして来て見れば・・・穏やかなじゃないな。全く穏やかじゃない」
「な、なんじゃ!?」
ヒューン ドゴンッ
「ぎゃああああああ!」
突然、扉が吹き飛ばされてきてオーク爺さんが吹き飛ばされる。
部屋の入り口から一人の男が颯爽と登場する。
「お姫様。助けに来たぜっ!」
あたしの目に映ったのは。
大剣を持った黒い服の男だった。
―――熱風が洞窟を吹き荒れる中
―――時が止まったように胸がチクリと震えた
―――仄かに焦げる胸が春を告げる
―――これは運命の出会いかもしれません
―――こころが揺れたのでした