始まりはいつも舞踏会
どうも、赤ポストです。
婚約破棄系ですが、「ざまぁ」要素が入る予定です。
※ハッピーエンドです
耐えること
それは素晴らしいことだと教わってきた
あたしは教会で教育を受け。
来る日も来る日も神に祈った。
いつの間にか聖女と呼ばれるようになったけれど。
どんなに祈っても神は答えてくれない。
あたしを聖女とあがめてくれる人もいるけれど・・・
婚約者は認めてくれない。
愛する人に認めてもらえないのはつらい。
多くの人に認められるよりも・・・
たった一人の人に認めてもらいたい。
それなら・・・・
煌びやかな舞踏会で、貴族令嬢に虐げられても耐えられるのに。
あたしに必要なのは・・・たった一人の愛してくれる男性。
どうして・・・
どうしてなの・・・
あぁー神様。
どうしてあたしはこんなことになってしまったの・・・
~~~~~~~~~~~~~~~
王城で催される第一王子様主催の舞踏会。
煌びやかな会場で、優雅な衣装に身を包んだ男女。
あたし、マリア・マーマレード伯爵令嬢も参加していた。
でも、あたしの周りには誰もいない。
毎回同じ光景だ。
遠巻きに貴族女性があたしのことを見てクスクスと笑っている。
今にも逃げ出したい気分だけど。
あたしは壁の花に徹する。
気にしちゃいけない。
それに数時間の辛抱だもの。
ここでこうしていれば、直ぐに舞踏会は終わるんだから。
あたし、頑張らないと。
すると一人の男の方が話しかけてくる。
「聖女様。この場で会えて嬉しく思います」
見慣れぬ顔。
多分、初めて舞踏会に参加した方だと思う。
そうでなければ、あたしに話しかけるなんてマネはしないはず。
久しぶりに舞踏会で男性と話していると。
パシャンッ!
「あらっ、ごめんなさい」
パシャンという音ともに、あたしに何かがかかった。
冷たい液体はワイン。
あたしの白いドレスは、真っ赤に汚れてしまった。
声の先には第三王女アイリス様。
事あるごとにあたしに嫌がらせをしてくる王女様。
彼女がきたからか・・・
あたしと話していた男の人は去っていった。
舞踏会ではいつもこう。
あたしと殿方が話をすると、決まって誰かが妨害しに来る。
今日話しかけてきた男の方は、初めて舞踏会に参加したんだと思う。
そうでなきゃ、あたしに話しかけるなんて無謀なことはしない。
遠くでは、さっきあたしと話していた男の人が、周りの人々から耳打ちされている。
彼の表情がかわり、あたしから目線をそらす。
これで彼も、もうあたしに話しかけてくることはないだろう。
きっと、ありもしないあたしの悪評を聞かされたんだと思う。
「随分殿方の受けはいいのですね。ですがここは娼館ではありませんのよ。
そのような、いやらしくも透けた服を着ているのは場違いです」
なっ。
それは今さっき。
第三王女様があたしにワインをかけたからなのに。
あたしは反対しようと思ったけど・・・口をつぐむ。
伯爵令嬢であるあたしは、皇女である彼女に逆らうことはできない。
何をいってもあたしの負け。
それにきっと面倒なことになる。
「何か言いたいことでもあるのですか?マリアさん。何でもおっしゃっていいのですよ。
聖女様は、さぞ素晴らしい言葉をお持ちでしょうからね」
アイリス様は、嫌味ったらしくあたしを眺める。
何を言っても許す気なんてないだろうに。
「お顔が優れないようですね・・・殿方がいなくなると直ぐにその表情ですね。
本当に良い性格をしていますこと」
チクチクとあたしを責めてくる第三王女様。
っと、そのとき。
「おいっ、マリア!何してる。王女様にまた迷惑をかけたのか」
走り寄ってくるあたしの婚約者。
ミハエル・ハインツ公爵。
高身長に、煌く金色の髪。
特徴的なブルーの瞳。
女性を惑わす耽美な姿。
第三王女様の顔が、ぽっと赤くなったのをあたしは見逃さなかった。
彼女の表情が色っぽくなり、女の顔になる。
「第三王女様。マリアが何か失礼をしたのでしたら私の方から謝ります。
本当に申し訳ありません。マリアは本当に不出来な女でして」
あたしのことなど見向きもせず。
すぐさま第三王女に謝るミハエル。
悪いのは王女様で・・・あたしじゃないのに・・・
「ミハエル公爵、いいんですのよ。あなた何も悪くありません。
マリアさんが殿方との話しに夢中になっていたところ、あたしにぶつかってきただけですの。
後で回復魔法使いに、腕を見てもらう必要はあるかもしれませんが」
「なんだってっ!マリア、君って人は。どれだけ私に恥をかかせれば済むんだ!」
「違うのです、ミハエル・・・あたしは『黙りなさい!』
あたしの声は、ミハエルに撃ち消されられる。
彼は直ぐに怒鳴る。
声が大きい。耳がキンキンする。
「ほらマリア。君も王女様に謝るんだ」
あたしはミハエルに促されて、しぶしぶ頭を下げる。
この場の雰囲気ではこうするしかない。
いつだって悪いのはあたし。
何をしても怒られるのはあたしと決まっているのだから。
「すみませんでしたわ、王女様。あたしの不注意です」
満足そうに微笑む第三王女様。
ニタニタと上品に笑っている。
「いいのですよ。マリアさんは殿方の人気者ですものね。
婚約者がいる身にも関わらず、ついついお話しに夢中になって気分が乗ったのでしょう。
妙な事をしたくなるのも分かりますけど。この場では控えて頂きませんとね。
最低限の気品が求められるのです」
意味深なことを告げる第三王女様。
あたしはただ話をしていただけなのに。
それじゃーまるで、あたしが男の人をいかがわしいことに誘ったかのよう。
「くっ、マリアッ!・・・すみません。王女様」
「ミハエル公爵。おつらいのはお察しします。
マリアさんは皆の聖女様ですから。皆を癒すために、誰にでも心も体も開くのでしょう。
とても私にはマネできませんわ」
「なっ・・・・」
あたしは公然と第三王女様に侮辱された。
なんで・・・
殿方とお話しをしていただけのあたしが・・・
なんでここまで言われなくちゃいけないの。
いつもいつも。
第三王女様はあたしをチクチクといじめてくる。
一体なんの恨みがあるっていうの?
ミハエルもミハエル。
あたしの話を全く聞こうとはせず・・・
必ず王女様の味方をする。
婚約者はあたしだよ。
あたしなんだよ。
なんで他の女の味方をするの。
そりゃー相手は王女様だけど・・・
そんなのおかしいよ。
うん。
絶対におかしい。
「ではっ、ごきげんよう。マリアさん、早く服をどうにかした方がよろしくてよ。
匂いますからね。雌犬の匂いが」
捨てセリフを吐いた第三王女様は、さっそうと去っていった。
残るのは、憤怒の表情のミハエルとあたし。
彼はかなり怒っているみたい。
プルプル震えている。
「ミハエル・・・聞いて頂戴」
「いや、すぐにこっちにこいっ!」
「い、痛っ。離して下さいまし」
「いいから、くるんだっ!」
ぎゅっと強く手首を握られた。
でもミハエルは力を緩めることなく、あたしを個室に連行した。
今夜、もう一話投稿します。