表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/64

始まりはいつも舞踏会

どうも、赤ポストです。

婚約破棄系ですが、「ざまぁ」要素が入る予定です。

※ハッピーエンドです

 耐えること


 それは素晴らしいことだと教わってきた


 あたしは教会で教育を受け。


 来る日も来る日も神に祈った。


 いつの間にか聖女と呼ばれるようになったけれど。


 どんなに祈っても神は答えてくれない。





 あたしを聖女とあがめてくれる人もいるけれど・・・

 

 婚約者は認めてくれない。


 愛する人に認めてもらえないのはつらい。


 多くの人に認められるよりも・・・


 たった一人の人に認めてもらいたい。




 それなら・・・・


 煌びやかな舞踏会で、貴族令嬢に虐げられても耐えられるのに。


 あたしに必要なのは・・・たった一人の愛してくれる男性。


 


 どうして・・・


 どうしてなの・・・


 あぁー神様。


 どうしてあたしはこんなことになってしまったの・・・






 ~~~~~~~~~~~~~~~







 王城で催される第一王子様主催の舞踏会。

 煌びやかな会場で、優雅な衣装に身を包んだ男女。

 あたし、マリア・マーマレード伯爵令嬢も参加していた。


 でも、あたしの周りには誰もいない。

 毎回同じ光景だ。

 遠巻きに貴族女性があたしのことを見てクスクスと笑っている。


 今にも逃げ出したい気分だけど。

 あたしは壁の花に徹する。


 気にしちゃいけない。

 それに数時間の辛抱だもの。

 ここでこうしていれば、直ぐに舞踏会は終わるんだから。

 あたし、頑張らないと。

 


 すると一人の男の方が話しかけてくる。


「聖女様。この場で会えて嬉しく思います」


 見慣れぬ顔。

 多分、初めて舞踏会に参加した方だと思う。

 そうでなければ、あたしに話しかけるなんてマネはしないはず。



 久しぶりに舞踏会で男性と話していると。


 パシャンッ!


「あらっ、ごめんなさい」


 パシャンという音ともに、あたしに何かがかかった。

 冷たい液体はワイン。

 あたしの白いドレスは、真っ赤に汚れてしまった。


 声の先には第三王女アイリス様。

 事あるごとにあたしに嫌がらせをしてくる王女様。


 彼女がきたからか・・・

 あたしと話していた男の人は去っていった。

 

 舞踏会ではいつもこう。

 あたしと殿方が話をすると、決まって誰かが妨害しに来る。

 今日話しかけてきた男の方は、初めて舞踏会に参加したんだと思う。

 そうでなきゃ、あたしに話しかけるなんて無謀なことはしない。

 

 遠くでは、さっきあたしと話していた男の人が、周りの人々から耳打ちされている。

 彼の表情がかわり、あたしから目線をそらす。

 これで彼も、もうあたしに話しかけてくることはないだろう。

 きっと、ありもしないあたしの悪評を聞かされたんだと思う。


「随分殿方の受けはいいのですね。ですがここは娼館ではありませんのよ。

 そのような、いやらしくも透けた服を着ているのは場違いです」


 なっ。

 それは今さっき。

 第三王女様があたしにワインをかけたからなのに。

 

 あたしは反対しようと思ったけど・・・口をつぐむ。

 伯爵令嬢であるあたしは、皇女である彼女に逆らうことはできない。

 何をいってもあたしの負け。

 それにきっと面倒なことになる。


「何か言いたいことでもあるのですか?マリアさん。何でもおっしゃっていいのですよ。

 聖女様は、さぞ素晴らしい言葉をお持ちでしょうからね」


 アイリス様は、嫌味ったらしくあたしを眺める。

 何を言っても許す気なんてないだろうに。


「お顔が優れないようですね・・・殿方がいなくなると直ぐにその表情ですね。

 本当に良い性格をしていますこと」


 チクチクとあたしを責めてくる第三王女様。

 っと、そのとき。

 

「おいっ、マリア!何してる。王女様にまた迷惑をかけたのか」

 

 走り寄ってくるあたしの婚約者。

 ミハエル・ハインツ公爵。

 高身長に、煌く金色の髪。

 特徴的なブルーの瞳。

 女性を惑わす耽美な姿。



 第三王女様の顔が、ぽっと赤くなったのをあたしは見逃さなかった。

 彼女の表情が色っぽくなり、女の顔になる。


「第三王女様。マリアが何か失礼をしたのでしたら私の方から謝ります。

 本当に申し訳ありません。マリアは本当に不出来な女でして」


 あたしのことなど見向きもせず。

 すぐさま第三王女に謝るミハエル。

 悪いのは王女様で・・・あたしじゃないのに・・・


「ミハエル公爵、いいんですのよ。あなた何も悪くありません。

 マリアさんが殿方との話しに夢中になっていたところ、あたしにぶつかってきただけですの。

 後で回復魔法使いに、腕を見てもらう必要はあるかもしれませんが」


「なんだってっ!マリア、君って人は。どれだけ私に恥をかかせれば済むんだ!」

「違うのです、ミハエル・・・あたしは『黙りなさい!』


 あたしの声は、ミハエルに撃ち消されられる。

 彼は直ぐに怒鳴る。

 声が大きい。耳がキンキンする。 


「ほらマリア。君も王女様に謝るんだ」


 あたしはミハエルに促されて、しぶしぶ頭を下げる。

 この場の雰囲気ではこうするしかない。

 いつだって悪いのはあたし。

 何をしても怒られるのはあたしと決まっているのだから。


「すみませんでしたわ、王女様。あたしの不注意です」


 満足そうに微笑む第三王女様。

 ニタニタと上品に笑っている。


「いいのですよ。マリアさんは殿方の人気者ですものね。

 婚約者がいる身にも関わらず、ついついお話しに夢中になって気分が乗ったのでしょう。

 妙な事をしたくなるのも分かりますけど。この場では控えて頂きませんとね。

 最低限の気品が求められるのです」


 意味深なことを告げる第三王女様。

 あたしはただ話をしていただけなのに。

 それじゃーまるで、あたしが男の人をいかがわしいことに誘ったかのよう。

 

「くっ、マリアッ!・・・すみません。王女様」


「ミハエル公爵。おつらいのはお察しします。

 マリアさんは皆の聖女様ですから。皆を癒すために、誰にでも心も体も開くのでしょう。

 とても私にはマネできませんわ」


「なっ・・・・」


 あたしは公然と第三王女様に侮辱された。

 なんで・・・

 殿方とお話しをしていただけのあたしが・・・

 

 なんでここまで言われなくちゃいけないの。

 いつもいつも。

 第三王女様はあたしをチクチクといじめてくる。 

 一体なんの恨みがあるっていうの?


 ミハエルもミハエル。

 あたしの話を全く聞こうとはせず・・・

 必ず王女様の味方をする。


 婚約者はあたしだよ。

 あたしなんだよ。

 なんで他の女の味方をするの。

 そりゃー相手は王女様だけど・・・

 そんなのおかしいよ。

 うん。

 絶対におかしい。


「ではっ、ごきげんよう。マリアさん、早く服をどうにかした方がよろしくてよ。

 匂いますからね。雌犬の匂いが」


 捨てセリフを吐いた第三王女様は、さっそうと去っていった。

 

 残るのは、憤怒の表情のミハエルとあたし。 

 彼はかなり怒っているみたい。

 プルプル震えている。


「ミハエル・・・聞いて頂戴」

「いや、すぐにこっちにこいっ!」


「い、痛っ。離して下さいまし」

「いいから、くるんだっ!」


 ぎゅっと強く手首を握られた。

 でもミハエルは力を緩めることなく、あたしを個室に連行した。


今夜、もう一話投稿します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ