長い一日
おい、なんだよこの威力・・・。
フレアキャノンって・・・確か、ミカから教わった火球という魔法は、ファイヤーボールとかいう、もうちょっと控え目な名前だった筈だ。
自然と口を突いてしまった。
「えーっと、トータ・・・。」
ミカですら言葉がないらしい。
なんか言ってくれよ、これはどういう事だ?
「そのまほーならもっと遠くからでも当たったのに。」
いや、それを使えた事を突っ込んでくれよ。
「なんか、火球を使おうとしたら、勝手に別の魔法を使ってたんだが・・・理由がわかるなら聞きたい。」
「トータの気持ちが強すぎていきなりレベルアップしちゃったんだね。」
気持ちの問題なのかよ!
させない!・・・の部分か?そんなに強く思った覚えはないぞ。
「多分だけどー、トータの火球のイメージがあんな感じで、それに合わせてオリジナルまほーが出来ちゃったんじゃないかな?トータってばてんさーい!」
オリジナルかよ、初めて自力で使った魔法がオリジナルって・・・。
魔法ってそういうもんなの?気持ちだイメージだで、オリジナルがポンポン出来てたらきりが無いだろう。
それとも、ミカの言う通り俺が魔法の天才なのか?
天才とか言われるのって恥ずかしいぞ。
それより、これって調整効くのか?幾ら何でも高威力過ぎる。
小さい獲物なら全身消し炭だろ。
「これじゃ使い勝手が悪いんだが・・・。」
「えー、いいじゃん!オリジナルまほーとかかっこいいよ!」
格好は分からんが、便利な方がいいに決まってる。
今回は角目的だったし、食材としても多少は残ってるからまだ良かったとしても、偶々後脚を狙ったからで、結果論だ。
俺は目的通りに遂行できる手段がほしいのだ。
過ぎたるは及ばざるが如しだろ。
「攻撃力が高い方が、戦うときもゆーりだしさ。」
そう言えば、そんな事もしなくちゃいけないんだっけか?
気が乗らない。
狩りは自分が食べる為だが、敵・・・ってどんなだか知らないが、見ず知らずのこの世界を守る為に、見ず知らずの奴を倒す・・・殺すのか?・・・そんな事は気が進まない。
約束だから、努力はしてみるが。
所詮ミカもおれにそうさせる為に色々してくれてるんだよな。
当初の予定よりも強い敵になりそうだし、命掛けの戦いになるんだろう。
もし、負けたらどうなるんだ?その瞬間この世界が滅ぶのか?
幾ら、見ず知らずの世界といえど、それはそれで良い気分がしない。
この世界の人たちがどんなかは知らないが、自分達の世界は自分達で守るべきだろうとも思うが、わざわざ女神様が俺を呼び寄せるくらいだから、何か特殊な事情があるのかもしれない。
だからと言って、やる気に満ち溢れてくるわけでもないけども、感情的にはやはり嫌だ。
はあ、・・・。
「分かった、そうだな、その方がいいな。」
なんか急に引いてきたな。
知らないうちにこの状況に酔っていたようだ。
さっきも少し思ったが、俺がこんな事を平然と受け入れられるわけは無いのだ、その割に自分でも驚くほど落ち着いている。
好むが好まざるが、事態は変わらないという諦観が、そうさせたに違いない。
どうあれ自分を強く持とう。
などと思いながら、ブッシュバックの角を回収し、肉を解体している自分が悲しい。
「今日はこのくらいにして、さっき言ってた洞穴に移動しよう。」
「そうだね、少し暗くなってきたもんね。」
その洞穴はこの川辺から泉側に少し戻って、獣道を脇に逸れた切り立った断崖の、といっても数メートルほどの高さなので、急に現れた壁みたいな感じだが、麓を斜め下方向に穿たれていた。
雨が降ってる時に寝てたら溺れそうだが、今は雲も出ていないし恐らくその心配はいらないだろう。
今は幸いな事に先客はいなかった。
明らかに、何らかの生物の住処に見えるが、許してもらいたい。
俺は女神結界を唱え、自宅を確保した。
うむ、実に普通に魔法を使ってしまったな、早くも慣れてきてしまったか。
時計を見ると六時半を指していた。
それほど変な時間帯ではないな、また明日確認しよう。
「この結界の持続時間はどのくらいなんだ。」
「今回のはトータが自分で意識してやったから、丸一日は持つんじゃないかな?」
マジか、高性能だな。
なら安心できるな、性能は実証済みだしな。
地面は土で若干冷たい、草でも集めて寝床を作りたいところだが、そのまま倒れ込む。
妙に疲れた。
当たり前だよな、今朝は普通に新聞配達をして、早めに学校行ってポスター貼って、涼子が・・・事故にあって。
涼子の命と引き換えに異世界に来て、狩りをして魔物倒して、死の恐怖を味わって、魔法使って・・・・・。
そのまま微睡みに引き込まれていった。
これでチュートリアル編は終わりです。
次回からやっと物語が動き始める予定です。
次話、明後日更新。




