食事
ジュウウウウウウウウ、といい音を立てて、今俺の前には肉が焼かれている。
「ね!ミカの言った通りでしょー。」
ミカが、やってみれば分かると頻りにいうので、このまま何も食べない訳にもいかないというのもあり、食料調達に繰り出すことにした。
まずは、手っ取り早く釣りでもしようかと思ったが、考えてみたら釣竿が無い。
野草取りでもいいのだが、葉っぱだけでは物足りなさすぎる。
それは木の実などでも同じ事だ。
やはり肉だ、肉を食べないと始まらない。
これからここで生きて行くことになるのだから、怯えていてもしょうがない。
ということで狩りに行く事にした。
ミカから獲物のいそうな場所聞き、そこまで行ってみると、一羽の兎のような動物がいた。
動物を殺したことなどないので、尻込みしそうになるが、これも生きるためと覚悟を決める。
俺の手には鋭利な石器が握られている。
これは、最初の場所から少し移動したところに岩場があったので、そこで手頃な石同士をぶつけて割って作ったものだ。
一発で上手いこといい感じのものができたので、ラッキーだった。
その石器を握り締めて獲物の後ろから忍び足で近づく。
獲物はちっともこちらに気付かない。
そのまま首筋に石器を一突き。
実に簡単に狩猟することが出来た。
なんだこの暗殺者みたいな技術は?俺こんなこと出来ないよな?
これはあれか?魂の記憶の統合とやらのせいかもしれない。
ろくな前世じゃないな。
その兎?の後脚を持って逆さまにぶら下げながら海岸の岩場まで移動する。
血抜きになると思うが、そこら中血だらけになってしまったので、余計な獣が寄って来なければいいが。
果たしてこれを捌く事ができるのだろうか?やってみることにした。
石器を使って皮を剥ぐ。
肉を刻んでいって、骨を取り除く。
刻んだ肉を海水で洗い、さらに一口サイズに切り分ける。
内臓などは、穴を掘って埋める。
・・・手順が合っているかどうかは分からないが、何となく食べれそうに出来た。
皮も使えるかもしれないので、こびりついた肉をこそげ落として乾かしておこう。
骨も良く洗って、加工して何かに使おう。
火を起こせるか、というのも心配だったが、森から手頃な木を幾つか拾ってきて、太い方の木の一部を石器で平らに削る。
そして、まっすぐ目の枝を平らな部分に立ててコリコリ擦り付ける。
まあ、こんなもんでそう簡単には火は着かないだろうが、試してみなければどうしようもないだろう。
と思っていたら、割とすぐに煙が出てきた。
おお?ほんとかよ!
急いでその火種を、一緒に拾ってきたゼンマイ綿のようなもの・・・良くこんなの都合良く落ちてたな・・・に移して炎にする。
さらに、枯れ枝や、枯れ葉を投入して火を安定させる。
そこに平らっぽい石を乗せ、兎肉?を乗せて焼いたのだ。
結構あっという間に出来た、出来てしまった。
まあこうすれば良いのかな?と思ってやっただけなのだが、案外上手くいくものなんだな・・・そんな馬鹿な。
「普通はこんなに簡単に出来ないと思うんだがな。」
「ああー、それはね、・・・・。」
ミカの説明を要約すると、この世界は俺の世界に比べて次元が低い。
それは物理法則などがしっかり固定されないという事に繋がるようだ。
つまり、そんなにキッチリとしてなくても、例えばさっきのように摩擦で簡単に火が起こせたりするらしい。
高次元存在だった俺は、思った事を行動に移せば、大抵の事は出来るそうだ。
何だかふわっとした説明だった。
物理法則が緩くて、この世界は大丈夫なのか?と疑問に思うが、そういうものなのだと理解しておこう。
おまけに、この世界には魔法とかがあるという話だった、お伽話の世界かよ。
異世界だけど。
とにかく、そういう力が必要な世界と言う事なんだろう。
学べば俺にも使えるらしい。
魔法才能という面だけで言えば、存在的に究極レベルの立ち位置らしいが、そうそう簡単に出来るものでもなさそうだ。
さらに、やはり魂統合が俺の能力を底上げしているようだ。
この世界、ハードモードかと思ってたが、以外と生活はイージーなのかな。
ただ、戦闘と云うのがやはり引っ掛かる。
高次元存在であった俺に死角はなかった。
と行けばいいのだが、過去形なのが気になるところだな。