表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

シュールナンセンス掌編集

カンガルーのしっぽ

作者: 藍上央理

「カンガルーのしっぽ」



 ある実験で魂にカンガルーのしっぽをつけてはどうかという案がでた。

 その日のうちに上司に呼び出されて、てっきりリストラだと勘違いして、私はハルシオンを十錠飲んでいなくなることにした。

 リスとトラを一度に四畳半の狭いアパートで飼えるわけがないじゃないの。

 ちょっとした抗議のつもりだったのだ。

 気がついてみると、長々とカンガルーの立派なしっぽが垂れ下がっていて、なんたることか、それが鼻にくっついているのだった。

 上司いわく。

 「君ね、魂にだって独自のしっぽがある。それなら反対側につけないとバランスが悪いじゃないか」

 私は開発課へ行って、カンガルーのしっぽの由来をたずねた。

 「そりゃ、あんたあたしだって最初は謙虚にハツカネズミだのガラパゴスイグアナだののしっぽを勧めたさ。クロコダイルじゃ比重があり過ぎて。1.5だぜ? バランスが取れないんだよ。ブタのしっぽも考えたけどさ、ラセンだね、メビウスとかアルキメデスの、とかいうんじゃないの。ラセンで栄養がよくて比重がないと、吸収されちまって、本当におてあげなんだよ。それに哺乳類には哺乳類のしっぽがいいだろう? その点、カンガルーは1.0だし、哲学的意味もないし、第一見た目がいいじゃない」

 話の半分は上の空で、もう半分は下の地面で聞いていた。

 「そうそうカンガルーのしっぽね、一色じゃ芸がないから、今度千鳥柄やら格子縞やら絞り染めやらで、日本的イメージを出そうと思うんだ」

 「それじゃ、私の鼻についてるこれは?」

 「ありゃ。鼻につけちゃったの? だめだなぁ、よく取り扱い書を読まないとさぁ。それって、プロトタイプのサンプルでしょ? 今度はちゃんと説明書、読んでよね。困っちゃうなぁ、直すのこっちだからね、勝手にそんな扱いかたされちゃあさぁ」

 会社をでると、一陣の風に私はバランスを失ってフワフワと浮き上がった。

 それを見たひとが言った。

 「うわっついている証拠だね」

 私は自問自答する。

 「ところで千鳥模様はつけるつもり?」

 「世の中不慣れでも要領よくならなくちゃね」

 かくして、魂のカンガルー計画は成功したのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ