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TALE3:ルヴィア達ブチギレる!!

 夕暮れ。

 リッドとミレイアはベリーズ・ビリッジヘ帰った。


 いつも元気なリッドの面影はなく、その表情は暗い。ルヴィアとレーシアがキャッスルを出てしまった事が相当ショックらしい。

 どうして自分に黙って行ってしまったのか。しかもルヴィアが何故ランディと一緒に行ってしまったのかが解らない。


 自宅のドアにキーを差したミレイアは異変に気づく。

「?」

 ドアノブを回す。

「やだ!」

 ミレイアの声にリッドはハッと顔を上げる。

「どーしたの母さん」

「……ドアが開いているのよ」

「エーッ!! まさかドロボーがッ!!?」

 冷や汗をかいたリッドは緊張感を漂わせ恐る恐る家の中に入ってみる。特に変わった様子は見受けられない。

「あれっ!? フツーだ。母さん、オレ向こー見てくるよ」

「気をつけるのよ」



 リビングルーム。

「母さんっ! 特に変わったとこなかったよっ」

 部屋を一通り見て回ったリッドがミレイアに声をかけた。だがミレイアは何やら1枚の紙に見入っている。

「母さん?」

「……これがテーブルの上に置いてあったのよ」

 紙を渡されリッドは目を通す。


『母さんへ


 僕達は夜中にキャッスルを出たので家に勝手に泊まらせてもらいました。

 キーがないのでドアを壊して開けてしまいました。ごめんなさい。

 あと家にあった食料も使ってしまいました。

 ドアの修理代と食料代を置いていきます。本当にごめんなさい。

 母さん。急にこんなことになって驚いたと思うけど、

 どうか心配しないでください。

 来月の結婚式の日までには帰ります。               ランディ


 リッドくん ミレイアおばさま 家にカッテに上がりこんでゴメンナサイ

 ふたりともおゲンキで                         ルヴィア


 こんなことをするなんて、私達は非常識きわまりないと思います。

 ミレイアおばさま、リッドさん。本当にごめんなさい。       レーシア』


 それは置き手紙だった。

 テーブルには札束が置いてある。


「エエーッ!!? ってことは、今朝までルヴィア姉ちゃん達ここにいたのッ!!?」

 リッドが愕然とした。

「そうらしいわね……」

「くゥ〜ッ!! なんかくやしーッ!! オレもいっしょに行きたかったよォーッ!!」

 激しく悔しがるリッドだった。



 次の日。

「んー、いい天気ねー」

 部屋の開いた窓からまぶしい朝日を浴びるのはレーシアだ。

 気持ちの良い朝、のはずだが背後からンガーっともの凄い轟音が響き冷や汗を垂らす。

 振り返るとベッドでルヴィアが大口を開け、お約束の強烈なイビキをかきながら眠りこけていた。

 レーシアの額に青筋が立つ。

「お姉さま――!!! いい加減に起きなさいよ――!!!」

 アイルーン・ロッドでルヴィアの体をバシバシと叩いた。

「キャ――――ッッ!!!」

 ルヴィアが叫びながら目を覚ました。

「ナニすんのよイタイじゃないッ!」

 顔だけ起こしてレーシアを見る。

「もう朝よ!! 早く起きて!!」

 レーシアが目くじらを立てる。ルヴィアに対してはどうも厳しい。

「まだいーじゃないのよォ。ココはキャッスルじゃないのよ? もーはや起きなんてしなくていーんだから」

「だからってだらしがないわよ」

 するとドアをノックする音が聞こえた。

「あ、ランディさんよ。ほら早く仕度して!」

「う〜〜、もーわかったわよォ。アイツ入れないでよッ!」



 レーシアがドアを開けると、そこに身仕度を済ませたランディが居た。

「おはようレーシアちゃん」

「おはようございますランディさん。あの、まだお姉さまの仕度が済んでいなくて」

「ん、そうか。じゃあ中で待たせてもらうよ」

 部屋に入ろうとしたランディをレーシアは慌てて止める。

「あ、あの、ちょっとそれは……」

「どうしたの?」

「お姉さま、まだ服を着ている途中かも……」

 恥ずかしそうに言うレーシアだがランディは動じない。

「なんだそんなこと。大丈夫だよ別に」

「え、あの」

 構わず部屋に入り奧へ向かうランディ。

「おはようルヴィア」

「!!」

 爽やかな笑顔で現れたランディにルヴィアがビックリする。ルヴィアはブラを着けているところだった。

「へぇ、今日はレッドか」

 ランディがデレデレした顔で見つめるとルヴィアは体をワナワナと震わせ始める。

「それもいいけど、僕のプレゼントしたのもつけてほしいなぁ」

「どーしてアンタいんのよォォ――ッッ!!!」

 額に青筋を立てたルヴィアがランディにすさまじい速さで往復ビンタを開始した。

「ぶべべッッ!!!」

 ランディの顔が左右に激しく動く。

「くォのッ!!」

 拳をギュオッと引き勢いをつけるルヴィア。

「どヘンタイ――ッッ!!!」

 ルヴィア・パンチをランディの顔面に繰り出しブッ飛ばした。

 ランディは吹っ飛びドアを破って廊下の壁に激突した。

 その様子をレーシアは冷や汗を垂らして見ていた。

「レーシア、どーゆーコトよ」

 恐ろしい目つきで睨むルヴィアにレーシアはビクッとすくむ。

「ご、ごめんなさい。止めたんだけど、ランディさんが……」



 ホテルのレストラン。

 額に怒りの青筋を立てたルヴィアはもの凄い勢いで料理をたいらげる。

 ランディは頬をパンパンに膨らませ、ゆっくり食事をしている。決して料理を頬に含んでいる訳ではない。ルヴィアの往復ビンタで真っ赤に腫れ上がっているのだ。

 レーシアはというと冷や汗をかき2人を気まずそうに見つめていた。

 どうしてこうなってしまうのだろう。

 険悪なムードに深いため息をついた。

「ね、ねぇお姉さま。今日はこれからどうするの?」

 恐る恐る尋ねるがルヴィアは聞いちゃいない。

「お姉さま!」

「えっ?」

 ルヴィアが手を止めてレーシアを見る。

「今日はこれからどうするの?」

「そーねぇ。とりあえず海で泳いでサッパリしたいわねー。ダレかのせいでちょーキブンワルイからッ!!」

 ランディに当て付けるように強調して言い放った。

 それを聞いたランディはピクッと反応する。

「誰かって僕のことかァー?」

「アンタ以外のドコのドイツがいんのかしらァー」

 ルヴィアが顔をツンッと背けるとランディの額に青筋が立つ。

 体をワナワナと震わせてブチッとキレた。

 立ち上がり啖呵タンカを切る。

「なんだよッッ!!! たかが僕にランジェリーを見られたくらいでこんなに殴ることないだろッ!!? 僕はルヴィアのフィアンセなのにッ!!」

 ランディの攻撃にルヴィアも立ち上がり反撃を開始する。

「ダレがフィアンセよッ!! それにたかがってどーゆーコトッ!!? このあたしのうつくしーカラダ見たツミは重いわよッ!! わかってんでしょーねェー」

 ランディを睨みつけた。

「ちょっとお姉さま! ランディさん! ケンカしないで」

 止めるのはレーシアの役目になりつつある。

 ランディは座ると急に落ち着いた態度で口を開く。

「なんだよ今さら。僕に裸だって見られてるくせに」

「なッ!! ナニ言ってんのよッ!!」

 ルヴィアの顔がカァッと赤くなった。

「ヘンなコト言わないでバカッ!!」

「本当のことじゃないか」

 ランディがジッとルヴィアの赤い顔を見つめた。

 ……悔しいが確かに本当の事だ。でももう忘れたかったのに。

 思い出させたランディを激しく恨む。

 だが、それより自分が嫌だ。

 どうして自分はランディに体を許してしまったのだろう。今となっては解らない。

 ショックで座り、うなだれた。

「なぁルヴィア、早く来月の結婚式になってほしいよな」

 ランディが笑顔で言うとルヴィアは顔を上げる。

「はあッ!?」

「その日までにはちゃんとキャッスルに帰らないとな」

 浮かれているランディにルヴィアは呆れる。

「アンタね、このジョーキョーでまだそんなコト言ってんのッ!? アンタなんかと結婚するワケないでしょッ!!」

 ルヴィアの発言にランディは耳を疑り唖然とする。

「えっ?……ルヴィア、何言ってるんだよ。冗談だろ?」

「ホンキよ」

「だッ、だってルヴィア、17歳になったら僕と結婚するって言ったじゃないかッ!」

「あんなのウソに決まってんでしょ」

「そんなッ」

 ランディが大ショックを受けた。だが信じたくないランディは平静を装う。心臓はドキドキしているが。

「またそんなこと言って僕を困らせようとして。仕方ないなルヴィアは」

「はッ!? バカじゃないの。ホンキだって言ってんでしょ」

 冷たい視線で言われてランディは心臓が苦しくなった。どうやら本気なのは間違いないらしい。

「……酷いよ。酷すぎるよルヴィア。僕をずっと騙してたのかッ!?」

「フンッ、トーゼンじゃない。アンタのコト大ッキライなんだから」

 ルヴィアの容赦ない言葉がドスになりランディの心臓にドスッと突き刺さった。一気に涙が込み上げる。

「うっ……。なんだよそれ……。僕は今までルヴィアとの結婚だけを楽しみに過ごしてきたのに……。あんまりだよォ」

 涙を流すランディにルヴィアは更に呆れる。

「アンタって男のクセにホントすぐ泣くわよね。情けないったらありゃしないわ。あたしこーゆー情けない男って大ッキライ」

 それを聞いたランディはピクッと反応し片手で涙を拭うと懸命に堪えた。

「お姉さまが悪いんでしょう!!」

 腹を立てたレーシアが口を出した。

「でもまーいーじゃない。アンタのコト大ッキライだけど、こーやっていっしょにいてあげてんだから。それだけでもカンシャしてほしーわね」

「もう! お姉さま!」

「あーあ……。早く結婚して夫婦になって、子供が欲しいな……」

 ランディがポツリと呟いた。独り言のつもりだがルヴィアに伝えたくもある。勿論ルヴィアが聞き逃すはずないが彼女にしちゃ聞きたくもない独り言だ。

「……アンタなんて言った? 今……」

「え?」

 顔をポッと赤らめるランディ。反応してくれて嬉しい。

「ルヴィアと早く結婚して……子供が欲しい」

 聞き間違いじゃなかった。子供という言葉にルヴィアは頭をテーブルにガンッと打ち付けた。

「コドモ……」

 テーブルに突っ伏したまま呟く。

「子供、欲しいよな? なっ? 結婚して子供を作ろうっ!!」

 目をハートにしてランディが言った。

「ジョーダンじゃないわよォォ――ッッッ!!!!!」

 ルヴィアが絶叫しながら立ち上がった。あまりの大声にレストランの客やウェイトレスは一斉にビビる。

 そしてランディをビシッと指差す。

「ナニ考えてんのよアンタッッ!!! 言ったでしょーがッッ!!! あたしアンタのコト大ッ大ッ大ッキライなのよッッ!!! アンタと結婚なんて天地ひっくり返ったってありえないわッッ!!!」

「ひ、酷い……」

 ショックを受けたランディの頭にゴーンと3tが降ってきた。

「そんなに結婚したいならテキトーに相手見つけてすりゃいーじゃないのよッ!!」

「何言ってるんだよルヴィアッ! 僕は誰でもいいってわけじゃないんだぞ。ルヴィアのことを心から愛してるから結婚したいんだ」

「やめてキモイッ!」

 青ざめた顔で身震いするルヴィア。

 そんなルヴィアに更にショックを受けるランディ。

「……そんなに、そんなに僕のことが嫌いか? 僕は愛しいルヴィアのためなら、なんでもできるほど愛してるのに」

「あら、だったらキャッスル帰ってよ」

 ルヴィアがあっさり言うとランディはガビーンとショックを受けた。

「お姉さま!!」

「どーしたの? あたしのゆーコト聞けないの?」

「そ、それはいくらなんでも……」

 冷や汗をかいたランディが言った。

「ナニよウソツキッ!! だいたいねェ、この旅はあたしとレーシアのたのしーふたり旅になるハズだったのよッ!! アンタはジャマなのッ!!」

「ちょっとお姉さま!!」

「……そんなに邪魔かよ……」

 顔を伏せたランディの声が低くなった。

「ジャマよッ!! ちょージャマッ!! マジでジャマ以外のナニモノでもないわッ!!」

「もうお姉さま!! なんてことを言うのよ!!」

「……そうか、わかった」

 そう言いランディは静かに立ち上がる。

「僕は帰るよ、じゃあな」

 2人に見向きもせずドアに向かって歩きだした。

「エッ! ちょっとランディさん!!」

「ほっときなさいよレーシア」

 慌てるレーシアにルヴィアが言った。

「アイツいなくなんならセーセーするわ」

 それを聞いたレーシアはルヴィアに向き直る。

「どうして!!? 酷すぎるわ、お姉さま。どうしてそこまでランディさんのことを嫌うのよ!!」

「どーしてって……」

 うつむきルヴィアは口をつぐんだ。レーシアだから言えない事もある。

 だが答えないルヴィアにレーシアはイラ立ち、ついにブチッとキレた。

「お姉さまのバカ――!!!」

 そう言い捨てレストランを出ていった。


 レストランの客はこの騒ぎになんだなんだとざわめいていた。


 1人ポツンと残されたルヴィアは不愉快そうに座る。

「ナニよ、レーシアってばいつでもランディのミカタすんだから。そりゃランディいなくなったら、あたしと旅続けるイミなんてないでしょーけど……」



 ……ああ、辛い。

 街道をトボトボと歩きながらランディは深いため息をついた。

 アイルーン・キングダムは代々、血族結婚。だから子供の頃からルヴィアとは当然結婚するつもりでいた。それでちょうど1年前、ルヴィアの16歳のバースデーにエンゲージリングをプレゼントしたが、ルヴィアの返事はノーだった。だがマックスの説得もあり、なんとかルヴィアは首を縦に振って婚約できて嬉しかった。なのにそれは嘘でずっと騙されていたなんて……。まあ思えば婚約してもずっと冷たい態度だったし、結婚したら変わるのかなって期待していたけど。

 再び深いため息をつく。

「ラ、ランディさぁーん! 待ってー」

「……ん?」

 名前を呼ぶかすかな声が聞こえ肩越しに振り返った。

 そこへレーシアが苦しそうに息を切らしてトロトロと走ってきた。

「レーシアちゃんっ」

「お、追いついたぁ……」

 息をゼーゼーと切らしたレーシアが赤い顔でヘナヘナと座り込む。


 彼女は走るのがとことん苦手で体を動かす事は大の苦手だ。運動が大得意なルヴィアが体力派なら彼女は頭を使うのが得意な頭脳派なのだ。


「レーシアちゃん、大丈夫?」

 ランディがしゃがみ込み心配そうに尋ねた。

「……すいません……」

「でも、どうして僕を追いかけてきたの?」

「……ランディさん、本当に帰ってしまうんですか?」

 レーシアが鼓動を沈めながら尋ねるとランディは表情を少しこわばらせて立ち上がる。

「し、仕方ないよ……。ルヴィアは僕のことをすごく嫌ってるし、まったく必要としてないし。僕はいないほうがいいんだよ。だけど僕はキャッスルには帰らない。ルヴィアがいないのに帰っても意味がないからな。ベリーズ・ビリッジで母さんとリッドと3人で暮らすことにするよ。それでいつかルヴィアがキャッスルに帰ってくるのをずっと待ってる。レーシアちゃん、僕の代わりにルヴィアを頼むよ。じゃあ……」

 軽く手を挙げて振り返り再び歩きだすランディ。

 そんなランディの後ろ姿をレーシアは見つめる。

「本当にそれでいいんですか!!? お姉さまにずっと逢えなくても!! そんなの、そんなの私だったら耐えられない」

 あなたと、ずっと離ればなれになるなんて――。

 両手で顔を覆いレーシアが泣きだした。

 気づいたランディは振り返りレーシアに駆け寄る。

「レーシアちゃんっ!」


 その様子を行き交う町人は見ていた。


「レーシアちゃん、ごめん……」

「えっ?」

 レーシアが涙の溢れた目で見上げるとランディはしゃがみ込む。

「本当は、帰る気なんて全然ないんだ。だけど僕がいてルヴィアが迷惑してるなんて辛くて……」

「そんなめげないでください!!」

 弱気になったランディを励ました。

「お願いです、元気を出してください。私でできることならなんでも協力します! がんばってください! 私、応援してますから!」

「レーシアちゃん」

 嬉しい。自分の為にそこまで言ってくれるなんて。

 レーシアの励ましに感激したランディは涙ぐみジーンとした。

「ありがとう……。やっぱり僕はルヴィアを諦めるなんてできない。ルヴィアじゃないとダメなんだ」



 レストラン。

 結局これからは1人旅。別に淋しくなんかない。すぐに素敵な彼氏を作るんだから!

 どこかにいい男はいないかとルヴィアは辺りをチラっと見ると周囲に人だかりができておりビックリする。

「なッ! ナニよあんた達ッ!」

 慌てて立ち上がった。

「あ、あの、アイルーン・キングダムのプリンセスですよね?」

「昨日の出来事の一部始終見てました! さすがは魔法王国のプリンセス! 魔法を使うお姿とても格好よかったです!」

「あら、そぉ?」

 ルヴィアが得意顔になる。

「いやー、まさかこんなタウンでプリンセスにお目にかかれるとは」

「さすがは絶世の美女とうたわれるだけあってお美しいなぁ」

 男共がルヴィアに見惚れた。

「ホーホホホッ! トーゼンよ」

「握手してください!!」

 男の1人がそう言うと周囲からも声が上がりルヴィアは冷や汗を垂らす。

「あのねェ、あたし今そーゆーキブンじゃないの。さー散って散ってッ!! うっとーしーのよッ!!」

 片手を大きく振ると連中は悲鳴を上げながら散っていった。

「ったくゥ」

「失礼」

 背後から聞こえた声にルヴィアは振り返る。そこにスーツを着た紳士を気取る男が居た。

「ナニよアンタ」

「先程、フィアンセとケンカをしたからでしょう?」

「はッ!?」

 何を言いだすのかとルヴィアが顔をしかめた。

「私にはあなた様がフィアンセとケンカをしたことで淋しそうに見えます。よろしければこれからは私をお供にしていただけませんか?」

 男がルヴィアにひざまずいた。

「はあッ!!? ナニ言ってんのよッ!!」

「あなた様のために誠心誠意を尽くし、ご奉仕いたします。片時も離れず、そう、ベッドでも……」

 顔を赤らめルヴィアの片手を握り甲にキスをした。

「イヤ――ッッ!!!」

ルヴィアの顔が青ざめルヴィア・パンチで男をブッ飛ばした。

「ナニすんのキモイわねッ!!」

 倒れている男は震え始める。

「ああ! 素敵だ!」

「キャアッ!!」

 目をハートにしてルヴィアの片足にガバッとしがみついた。

「それでこそ私のマスターとなるお方! どうか私のことは犬とお呼びください!」

 なんとこの男は極度のドMだった(汗)。

「チョット離れなさいよッ!!」

 額に青筋を立てたルヴィアがヒールで男の頭を踏み付ける。

「ああ! マスターもっと踏んでください!」

 目をハートにしたまま喜ぶ男。

 なんだコイツと思ったルヴィアはゾッとする。

「マスター! もう私は一生あなた様から離れません!」

 そんな男にルヴィアの怒りが頂点に達しブチッとキレた。

「アッタマ来たッッ!!!」

 もの凄い形相で男の胸ぐらを掴む。

「いーカゲンにしなさいよ。あたしのストレスにはアンタみたいなバカがいんのもゲンインなのよォ。オシオキしてあげるわッ!!」

「はい!! 思う存分お仕置きを!!」

相変わらず目をハートにしたまま喜ぶ男。返って逆効果だ。

「おいッ!! 何してるんだッ!!?」

 突然、聞き憶えのある声が聞こえた。

 ルヴィアが声のほうに振り向くと、そこにランディとレーシアが居た。戻ってきたのだ。

「ランディ、レーシア」

「あなたは、マスターのフィアンセ」

 正気に戻った男がランディを見て言う。

「ちがうわよッ!!」

「違う? そうですか。あなた様は私のマスターだ。もう関係のない方ですよね」

「何訳のわからないことを言ってるんだッ!!」

「マスターには私がいます!! あなたは必要ないのですよ!!」

「何ィッ!!?」

 ランディが男を睨みつけた。

「アンタもヒツヨーないわッ!!」

 ルヴィアが言い放つと男はガビーンとショックを受けた。

「そ、そんな。マスター! 私を捨てる気ですか!?」

「捨てるもなにも、サイショから拾ってないわよッ!」

「さっさと失せろッ!!」

「…………」

 しょぼくれた男は悲しそうに立ち去った。

「ナニよ、帰ったんじゃなかったの?」

 ルヴィアが相変わらず冷たい態度でランディに尋ねた。

 ランディとレーシアはテーブルに戻り先程と同じ席に座った。

「やめた」

「あらどーして?」

「ルヴィアとレーシアちゃんを置いてったら、さっきの奴みたいなのがわんさか寄ってくるだろうからなぁ。やっぱり僕がいないと」

「べつにアンタなんかいなくたって」

「か弱いレディーに何ができるんでしょうねー」

 ランディがルヴィアの以前(TALE1)言った台詞セリフを逆手に取り、嫌みタップリに返した。

 それを聞いたルヴィアは一瞬呆気に取られたが、おかしくなり思わずクスクスと笑いだす。

 あ、笑った。

 ランディが久々に見るルヴィアの純粋な笑顔だった。

 その笑顔に嬉しくなりランディもつられて笑いだす。

 2人が仲直りをしてくれた事にレーシアは喜び微笑んだ。


 その様子をレストランの客は呆れて見ていたのだった。チャンチャン♪



【TALE3:END】

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