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TALE45:絆

 夕暮れ近く。

 フィール・ビリッジに到着したティナは久々に目にする風景に感激して眺める。


 のどかな村だ。遠くには山が見える。果樹や畑が多く、村人は自給自足で生活をしている事が解る。


「ベリーズ・ビリッジを思い出すな」

 懐かしむように言ったランディをルヴィアはからかう。

「あらランディ、ホームシック?」

「違うよッ!」



 ティナに連れられて向かった先には大きくはないが立派な病院がある。タウンとビリッジの住人から信望が厚く腕の良いドクターが居るという。


 鼻をつく薬品のにおいがする病院の廊下を歩いていると白衣姿に眼鏡をかけた男性が角から現れた。

「あっ!」

 声を上げたティナを男性は驚きの表情で見る。

「ティナちゃんじゃないか! 久しぶりだね!」

「ドクター、ご無沙汰しておりました」

 ティナがお辞儀する。

「君のお兄さんが傷だらけでここへ来たんだよ。今入院している」

「はい知ってます。兄の具合はどうですか?」

「傷はだいぶ癒えてきているが、あと2、3週間ってところだな」

「そうですか。あの、どちらにいるんですか?」

「病室だが? 案内しよう」

 ドクターが振り返って歩きだしルヴィア達は続いた。

「盗賊が出没するようになってからタウンに行くことができなくなってしまって、私がている患者さん方が心配でね。よく無事に来れたねぇ」

「こちらのプリンセスが盗賊をやっつけてくれたんです。すごかったんですよ」

 ティナがルヴィアに片手を差し伸べた。

「えッ!? このお嬢さんが盗賊を!? それはすごい!」

 驚いて見たドクターにルヴィアは得意顔になる。

「ホホホ、まーね」



 ドアを開けてドクターが入った病室のベッドにドミニオは居た。腕には包帯が巻かれている。

「ドミニオ君、面会の方がたくさん来ているよ」

「えッ!? 面会ッ!?」

 唐突なドクターの発言にドミニオがビックリして目を丸くした。

「誰ですかっ!?」

「驚くよ。待っていてくれたまえ」

 ドクターはドアに向かい開けるとティナが入ってきた。

「お兄ちゃん!」

「ティナッ!」

「ケガの具合はどう?」

「オマエどーしてここまで来れたんだッ!? 盗賊がいただろッ」

「ウフフ。つよーい味方がいるんだもん」

 笑顔で言うティナ。

「味方っ!?」

「しかもお兄ちゃんの大好きな方よ」

 それを聞いたドミニオは目をパチクリさせる。

「えっ!? オレの大好きな人っ!?」

「そうよ、今呼ぶわね」

 ティナが振り向くとドクターはドアを開ける。

「ハ〜イ、ドム」

 ルヴィア達が入ってきた。入れ替わりにドクターは病室を出ていく。

「エエッ!!? プリンセスッ!!」

 現れたルヴィアにドミニオの顔が真っ赤になった。

 大好きな人と聞いて一瞬、脳裏をよぎったがまさかと思っていた。

「お兄ちゃん顔真っ赤よ」

 ニヤニヤしながらティナがからかう。

「う、ウルセーなッ」

「ひさしぶりね。よかったわゲンキそーで」

「どーしてここにッ!?」

「キャッスル帰るとちゅうでタウンにいたらティナと会ったの。そしたらトーゾクがシュツボツして困ってるってゆーもんだから、あたしがやっつけたってワケ」

 盗賊をやっつけた!?

 あまりにも驚いてドミニオが目を見開く。

「ティナから聞いたわ。その腕、トーゾクにやられたそーね」

「あ、ああ。情けねーな、たかが盗賊にやられるなんてよ。こんなザマ、よりによってプリンセスに見られちまうなんて」

 悔しそうに言うドミニオ。

 ルヴィアはレーシアを見る。

「レーシアおねがい」

「ええ」

 レーシアはドミニオに歩み寄りアイルーン・ロッドをかざした。

『天の聖なる光よ…我に力を授けたまえ』

 アイルーン・ロッドが淡く輝きクリスタルの球が光り輝いた。

「『リカバリィ・ライト』!」

 球から優しい光が溢れドミニオの全身を包み光はスッと消えた。

 ドミニオが腕の包帯を取ると傷は消えていた。

「お兄ちゃん、足は!?」

 ティナに言われドミニオは布団をめくり足の包帯も取ってみた。

「スゲーっ! 治ってるぜっ!」

 歓喜の声を上げるとティナも感激してレーシアを見る。

「すごいですぅ!」

「ありがとーございますっ! レーシア王女様っ!」

 ドミニオがお礼を言った。

「いいえ」

「お兄ちゃんの服、持ってきておいてよかったわ」

 ティナが持っていた紙袋をベッドに置く。

「おっ! 気ィきくじゃねーかティナ。そんじゃ着替えちまうなっ!」



 診療室に居たドクターは賑やかな話し声と足音に振り向く。

 やってきたルヴィア達に立ち上がるが、その中に平然と混じっているドミニオに驚く。

「ドミニオ君!? 傷は!?」

「あ、治りました」

「治ったって!?」

「見てください。傷がないでしょう?」

 ドミニオが腕を出すとドクターはマジマジと見る。

「……本当だ。傷のあとさえない。何故だ?」

「レーシアが法術でなおしたの」

 不思議そうに見ているドクターにルヴィアが言った。

「ホウジュツ……?」

「天の聖なる術よ」

「そ、そんなものが使えるのか!? 今度ぜひ拝見させていただきたい!」

「チャンスあったらね」



 ドクターから薬を受け取ったティナは満足そうに微笑む。

「よかった。祖父のお薬も無事に受け取ることができました。これもすべてプリンセスのおかげです!」

「プリンセス、オレからも礼を言うぜ。サンキューな」

 ティナとドミニオがルヴィアにお礼を言った。

「いーのよべつに」

 2人にルヴィアが微笑んだ。

 ルヴィアの笑顔を見た瞬間、ドミニオは天から光が降ってくるような感覚にみまわれた。

 鼓動がトクンと高鳴り顔が赤くなるのを感じる。

 ドミニオにとってルヴィアは光だ。

 牢屋に居た間、殺してしまった親友の事を思わない日はなかった。でも心の片隅にはルヴィアがいて、ルヴィアがいなければあまりの辛さに耐えられず、この世から去っていたかもしれない。それ程ルヴィアが自分の中で大きな存在になり、生きる希望になっていた。

 入院中もルヴィアは今どこで何をしているのだろうと考えていた。ルヴィアの事を想っていれば白い殺風景さっぷうけいな病室でも気が紛れた。ただルヴィアの事を考えるたびに逢いたい想いが込み上がるのを抑えるのは大変だった。

 想いが届いた。こうしてまた再会できるなんて。ドミニオの胸が熱くなる。

 見つめ合っているルヴィアとドミニオにランディはムッとしてドミニオの前に立ちはだかる。

「おまえ、何赤くなってるんだよ」

「お姉さま、急いでタウンに戻らないと夜になってしまうわよ」

 レーシアがルヴィアに声をかけた。

「あっ、そーね。いそぎましょ」

「君達、今からタウンに戻る気なのかね?」

「あ、はい」

 ドクターに尋ねられティナが答えた。

「今からじゃタウンに着く前に夜になってしまうだろう。1泊していったらどうだね?」

「あっ……。せっかくのお言葉ですが、母が心配しますのでタウンに帰ることにします」

「そうか……。それじゃ気をつけて帰りたまえよ」



 すっかり紅い空の下、ドクターに見送ってもらいルヴィア達は馬車に乗り込んだ。

「ルヴィア、一緒に座ろうよ」

 声をかけたランディをルヴィアはキッと睨みつける。

「ヤダッ!!」

「ランディ様! ティナが一緒に座りますぅ!」

 ティナが笑顔でランディの腕を抱きしめた。それを見たドミニオはビックリする。

「なにしてんだティナッ!!」

「ティナちゃん。悪いけど僕はルヴィアと座りたいんだ」

 ランディが困り顔で言うとティナの目に再び涙が溢れる。

「そんな……。酷いですぅ……」

 泣きだしたティナを見てドミニオは声を上げる。

「あッ!! ティナ泣かしたなッ!!」

「ランディ〜〜。さっき女のコ泣かすなって言ったでしょ」

 牙を剥き出したルヴィアが恐ろしい形相でランディを睨みつけた。


☆★ 殴 ★☆


 頭に大きなタンコブのできたランディの腕をティナは抱きしめて幸せそうに寄り添う。

 ランディが恨めしそうな目で見つめる先にはルヴィア、ドミニオ、レーシアが座っている。

「プリンセス。オレ、また逢えてうれしーぜ」

「ドム、あたしも」

 ルヴィアとドミニオが見つめ合う。

「あれからどんなとこ行ったんだ? 旅のこと話してくれよ」

「いーわよ」


 ランディは生き地獄のような気分を味わった。

 それは笑顔で楽しそうに話しているルヴィアとドミニオを目前で見るはめになったからだ。

 ルヴィアがあんなふうに楽しそうに自分と話してくれる事はない。昔はあったかもしれないが、そんなのは遠い過去の事。最近あったとすればルヴィアが記憶喪失だったからだし。

 その笑顔を向けられているのが自分ではなくドミニオで、ランディはねたんだ。ルヴィアに近づく男はどいつもこいつも気に入らない。

 今すぐ立ち上がって2人の間に入ってやりたいが自分の腕をティナがガッチリ押さえ込んでいてままならない。

 当分こんな2人を見ていなければならないのだな、とランディはうなだれた。



 夕日が沈みかけ辺りを闇が覆い始めた。


 馬車は行きより急ぎながらタウンへ向かう。


 森に挟まれた道は暗くて先が見えない程になったが、比較的真っ直ぐなのでなんとかなる。幸いにも今夜は月が輝いているし、月明かりも頼れる。とはいえ、やはり夜にこの道を通るのは気味が悪いもの。馬車を走らせている主人には尚更だ。


 馬車の中ではルヴィアがレーシアの膝枕でシートに横たわり、お約束の激しいイビキをかきながら眠りこけていた。

「ランディ様、お疲れじゃないですか? ティナが膝枕してさしあげますぅー」

 ティナが瞳をキラキラと輝かせランディはビックリする。

「エッ! 僕はいいよッ!」

「そんな遠慮なさらずに」

「疲れてないから大丈夫だよ」

「……そうですかぁ」

 残念そうなティナ。

「あー、早く家に帰ってお母さんを安心させたいわ。盗賊がやっつけられたなんて知ったら絶対に喜んでくれるわ。あと町長にも伝えなくっちゃ。盛大に祝宴をしましょうね!」

「そーだな」

 笑顔で言うティナにドミニオがうなずいた。



「なんだ? あれは……」

 主人が呟いた。

 道の脇の暗い森に炎らしき明かりが幾つも灯っている。その明かりは次々と移動し、森を抜けて馬車の周囲に集まった。

「なんだ一体……」

 恐ろしくなった主人は馬車を止めてしまった。

「ん……。止まった?」

「どうしたんでしょう?」

 ランディとティナが疑問を持った。

「テメーらなんだッ!!」

 馬車の後方に向かってドミニオが叫んだ。

 ランディ、レーシア、ティナも後方に目を向けると恐ろしい光景にゾッとする。

 そこに松明たいまつを手にした気味の悪い男共が馬車を覗き込んでいた。

「キャアア――!!!」

 レーシアとティナが悲鳴を上げた。

「ククク……。テメエら燃やしてやる」

 1人が静かに言った。

「何ッ!!?」

「熱いッ!!」

 慌てて4人が立ち上がると周囲を覆う布が燃えていた。

 だが気づいていないルヴィアは1人眠りこけている。

「大変!!」

 レーシアが右手を頭上にかざした。

『清らかなる水の精霊よ…我が意の全てを押し流したまえ!』

 体が淡く輝き瞳は淡く輝きながらサファイアブルーに染まる。

 手の平に水粒が現れた。

「『タイダルウェーブ』!!」

 水粒は渦になり溢れんばかりの水流が勢い良くザアッと溢れ出した。

 ドミニオが素早くティナをかばって伏せランディも伏せる。

 水流は布の炎を消し去り男共も押し流した。

 ランディ達は起き上がる。

「うう……。こわかったですぅ……」

 涙目で言うティナ。

 ドミニオは立ち上がり馬車から降りた。

「お姉さま!! いつまで寝ているの起きて!!」

 のんきに眠りこけたままのルヴィアをレーシアが叩き起こす。

「……んー、なーにー?」

 やっとルヴィアが片手で目をこすりながら起き上がった。

「ルヴィア、盗賊が襲ってきたみたいだ」

 ランディがそう言うとルヴィアは目を見開く。

「エッ!!? トーゾクならあたしやっつけたわよッ!!」

「だけどきっとそうだ。これに火をつけたんだよ」

 所々に穴の開いた布をランディが指差した。

「なッ! ナニコレッ!!」

「私が精霊術で火を消したの」

「そーだったの。ドムはっ!?」

「きっと盗賊を退治しに」

「あたしも行くわッ!」

 ルヴィアも馬車から飛び降りた。

「ドムーッ!!」

「プリンセスッ!」

 暗闇からドミニオの声が聞こえルヴィアは向かう。

「!」

 そこに盗賊が迫っていた。



 馬車から降りたランディ、レーシア、ティナにも盗賊が迫る。

 ランディは緊張気味な表情でアイルーン・ソードを引き抜く。

「レーシアちゃん、ティナちゃん。下がって」

「ランディ様……」

 ティナが怯えた表情で声をかけた。



 ルヴィアとドミニオは盗賊に周囲を囲まれていた。

『吹き荒ぶ風の精霊よ…我が意の全てを封じたまえ』

 ルヴィアの体が淡く輝き瞳は淡く輝きながらエメラルドグリーンに染まる。

 髪はうねり体の周囲にまばゆい稲妻がバチバチッとほとばしった。

 精霊術に盗賊はなんだと一瞬(ひる)むが、闇の中で稲妻をまとい浮かび上がるルヴィアの美貌に目を奪われる。

 だが見惚れている場合ではないのでハッと我に返る。

「テメエらよくもやってくれやがったなァ。やられたあいつらの分も含めてブッ殺してやる!!」

 盗賊がそれぞれ武器を手にした。

「かかれ!!」

 かけ声と共に盗賊が一斉に飛びかかる。

「『ライトニング・サンダー』ッ!!」

 ルヴィアが周囲に稲妻を放った。

「グワァァ――!!!」

 稲妻に巻き込まれた盗賊が倒れ込む。体が濡れていた為に相当効いたようで感電死した。

「す、スゲー……」

 目を見張っていたドミニオはハッとする。

「ティナ達はッ!!?」



「今の声は!!?」

「あいつらのやられた声か!!」

「くっそォー!! やっちまえ!!」

 盗賊が武器を手にする。

 ランディはアイルーン・ソードを身構えるが冷や汗をかき焦っていた。

 こんな大人数を相手にした事がないのだ。目が慣れてきたとはいえ周囲は暗闇で盗賊の人数を把握できないうえに、どこから襲ってくるかも解らない。しかもレーシアとティナを護らなければ。圧倒的に不利な状況だ。だが今はなんとしてもこの場は自分が護らなければならない。

 アイルーン・ソードを握る両手に力がこもる。

 その時

「アンタ達の相手はこのあたしよッ!!」

 美しく精悍せいかんな声が響いた。

「ルヴィアッ!!」

 ランディが声を上げた。

 レーシアとティナの横を通りルヴィアはランディの前に出る。手には色を変化させながら点滅するまばゆい光球。

「あたし今ちょーゴキゲンナナメよ。アンタ達にあたしのココチイイ眠りをさまたげられてねッ!!」

「くッ! ブッ殺せェ――!!!」

 盗賊がルヴィア目がけて走りだした。

「とくと味わうがいーわッ!! 『エクスプロード』ッ!!」

 光球がカッと発光した。


 爆発が起こった。

 暗闇で突如、目前がまぶしく開けランディ、レーシア、ティナは目がくらむ。

 爆風が木々を揺らし吹っ飛んだ盗賊が木や地面に叩きつけられる。爆風はルヴィア達をあおり馬車が少し移動した。馬車の主人をかつごうとしていたドミニオは慌てる。

 

 そして辺りは再び闇に包まれた。

「ザマーみろってのよ」

 ティナとレーシアは目を開ける。

 徐々に暗闇に目が慣れてくるとルヴィアが居るのが解った。

「プリンセス!」

「あんた達、ブジでよかったわ」

「はい! ありがとうございます!」

 お礼を言うとティナは瞳をキラキラと輝かせてルヴィアを見つめる。

「プリンセス、すごいですぅかっこいいですぅ! ティナ、プリンセスのことが好きになっちゃいました!!」

「あらそぉ」

「素敵ですぅ。ティナ、これからはルヴィアお姉様とお呼びしますね!?」

「えッ……」

 なんだか嫌な予感がしたルヴィアがゾクッとした。

「……ティナ、オマエまさかプリンセスに惚れちまったんじゃねーだろな」

 馬車の主人をかついだドミニオが冷や汗を垂らして尋ねるとティナは笑顔でうなずく。

「うん!」

「はあッ!?」

 それを聞いたルヴィアとランディが目を丸くした。

「惚れたって、それどういう意味だッ!?」

 ランディが青ざめた顔で尋ねるとティナはニッコリと微笑む。

「ですからぁ、ルヴィアお姉様のことが好きなんです!」

「何言ってるんだッ!? 女同士でッ!」

「そんなこと関係ありません!! ティナ、ルヴィアお姉様のこと本気です!!」

 真剣な眼差しでランディに言うティナ。

「エエーッ!!?」

 ルヴィアとランディが同時に声を上げた。

「ティナ、だってあんたランディのコト好きだったんじゃないのっ!?」

 冷や汗をかいたルヴィアがティナに尋ねた。

「好きでしたけど、もういいんです。今はルヴィアお姉様一筋です!」

「ナニ言ってんのよッ!! あんたヘンよッ!!」

 ルヴィアがティナの肩を掴み揺すった。だがティナはポカンとしている。

「変ですかぁー?」

「まいったぜ。ティナはホンット惚れっぽいんだ。男女問わず」

 ため息をつきながらドミニオが言った。

「なんだそりゃァーッッ!!!」

 激しくツッコミを入れるランディ。

「し、知ってたけどまさか女のあたしのコト好きになるなんて……」

 相変わらず冷や汗をかいたままルヴィアが呟いた。

「ルヴィアお姉様ぁー」

 突然ティナが抱き付きルヴィアはビックリする。

「キャーッ!! チョット抱きつかないでッ!!」

「ああッ!! 何してるんだティナちゃんッ!!」

 それを見たランディが慌ててティナを離れさせた。

「やめろよッ!!」

「嫌ですぅー! 離してください!」

「もー、とにかくはやくココからシュッパツしましょっ!?」



 馬車の主人が気絶してしまった為ランディが代わりに馬を走らせる事になった。

 盗賊に火傷やけどを負わされ弱っていた馬はレーシアの法術で無事に回復した。

 そしてルヴィア達は馬車に乗り込んだ。



「ルヴィアお姉様の隣はティナよ! お兄ちゃんはレーシア王女様と座って!」

「ティナ……」

 冷や汗を垂らすドミニオ。

「ルヴィアお姉様! ティナと一緒に座りましょう!」

「ヒィッ!!」

 ティナに抱き付かれたルヴィアがゾッとして鳥肌が立ってしまった。

「やめてティナッ!! あたしそんなシュミないのッ!!」

 慌てて突き放すとティナは悲しそうな表情をする。

「ルヴィアお姉様ぁ……」

「あたりめーだろティナ。プリンセスはノーマルなんだから」

「でもティナは好きだもん!!」

「そろそろ出発させていいか?」

 馬の手綱を握り座っているランディが馬車内を覗きながら言った。



 夜。

 ルヴィア達はエスタ・タウンに到着した。

 町長の屋敷でティナは町長を説得し、ドミニオの釈放が決定した。



 エスタ・タウンとフィール・ビリッジを繋ぐ道。

 ルヴィアの精霊術で倒された盗賊に、松明たいまつを手にして近づく2つの影。

「おい! なんだこのザマは! 生きている奴はいるか!?」

 無惨に散らばって倒れている光景を見て1人が叫んだが応答がない。

「……みんな死んじまってるようだゼ」

 もう1人が死体の様子を調べて言った。

「こいつらを皆殺しにするとは……」

「しかもヨォ、死に方が普通じゃねェゼ」

「どういうことだ?」

 しゃがみ込んで尋ねると、もう1人は松明たいまつを死体にかざす。

「見てみろヨ」

 死体を見て息を呑む。

 服が焼け、皮膚がただれており確かに異常な死に方だ。

「本当だ。どうなっているんだ」

「匂いが残ってやがる。こいつらをったのはタウンに向かったようだゼ。おいダンッ!! このままじゃ腹の虫がおさまんねェヨッ!! 奇襲してやろうゼッ!!」

「落ち着け。こいつらをった奴に興味がある。タウンに向かうのは夜が明けてからにしよう」

 2人は暗闇で決意したのだった。



【TALE45:END】

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